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2015.11.17

大高博幸の美的.com通信(314) 『リトルプリンス 星の王子さまと私』『黄金のアデーレ 名画の帰還』『ハッピーエンドの選び方』 試写室便り Vol.104

 ©2015 LPPTV – LITTLE PRINCESS – ON ENT – ORANGE STUDIO - M6 FILMS – LUCKY RED
©2015 LPPTV – LITTLE PRINCESS – ON ENT – ORANGE STUDIO – M6 FILMS – LUCKY RED

引っ越し先の隣のおじいさんは
昔、飛行士だったそうです。
おじいさんは ある日、砂漠で出逢った
星の王子さまの話を聞かせてくれました…。

まだ誰も知らない『星の王子さま』に
会いに行こう。

リトルプリンス 星の王子さまと私
(フランス/107分)
11.21 公開。
www.littleprince.jp

【STORY】 よい学校に入るため、友だちも作らず 勉強漬けの毎日を送る 9歳の女の子。名門校の学区内に引っ越してきたが、隣には風変わりな おじいさんが住んでいた。ある日、隣から飛んできた紙飛行機が気になって中をあけると、そこに書かれていたのは、小さな王子の物語。話の続きが知りたくて たまらず、女の子は隣家を訪ねた。王子の話を聞き、一緒に時を過ごすうちに、二人は かけがえのない友だちになっていく。しかし、ある日、おじいさんが病に倒れてしまう。女の子は、もう一度 王子に会いたいと言っていた彼のために、プロペラ機に乗って、王子を探す旅に出た――! (チラシより)

第二次世界大戦中の1943年に出版されて以来、270以上の言語・方言に翻訳され、1億4500万部以上を売り上げてきた サン = テグジュペリの著書「星の王子さま」。砂漠に不時着した飛行士と、小惑星から やって来た 小さな王子との出会いと別れを綴った物語は、時代と文化の壁を乗り越えて 読む人々を感動させる不朽の名作です。
その人気の秘密は、愛らしい挿絵のイメージと、平易な言葉で語られる深く普遍的なメッセージ。今までに オーソン・ウェルズや ウォルト・ディズニーらが映画化を試みはしたものの、誰にも果たせなかった「星の王子さま」ですが、出版から72年めにして、アニメーション映画として映像化が実現。それも 原作を膨らませるのではなく、新たに〝その後の物語〟を付加し、原作は そのまゝ守る・原作を包み込むという コンセプトで企画されました。本作は、その提案を受け入れた サン = テグジュペリ エステート(権利管理者)に 初めて映画化を許可され、8年がかりで完成させたという力作です。

〝その後の物語〟の中心人物となるのは、9歳の女の子(年令の割には大人びた性格)、その お母さん(教育熱心なシングルマザー)、そして 今は 86歳の おじいさん という設定の あの飛行士。それが原作に対するトリビュートとなっている点は、原作のファンを喜ばせる ひとつの重要なポイントです。
しかし、僕が最も魅了されたのは、女の子のコインの中から オモチャの王子さまが出てくる ハイブリッド・アニメーションの場面が、ストップモーション・アニメーションによる 砂漠の場面へと転換する部分…、特に 長身でスリムでハンサムな飛行士(原作の挿絵には全く登場していませんでした)と 愛らしい円らな瞳の小さな王子さまとが出会い、行動を共にするシークエンス…。そこには 原作の美しい詩情が、あふれるように表現されていたからです。

以下、印象に残った台詞の数々。
1) 「人生は設計して、なりゆき任せにはしないこと!」(スパルタ教育ママが、9歳の娘に言う台詞。僕は 必ずしも 賛同はしませんが(笑)。)
2) 「ヒツジの絵を描いて」
(中略)
「この中に入っているよ」
「そうそう、こういうヒツジが ほしかったの」(砂漠で出会ったばかりの王子さまと飛行士とのやりとり。)
3) 「砂漠が きれいなのは、どこかに井戸を隠しているからだよ」(水筒の水が尽きた時、王子さまが飛行士に言う台詞。)
4) 「どこにでもいるバラじゃない。君のバラだ。君が時間をかけて尽くした分、大切なバラなんだ」(キツネが王子さまに言って聞かせる台詞。)
5) 「心で見ないと 正しいことは わからない。大切なものは、目に見えないんだ」(別れの時、キツネが王子さまに言って聞かせる台詞。)
6) 「問題は 大人になることじゃない。忘れてしまうことだよ」(86歳の飛行士が、友だちになった女の子に言う台詞。)
7) 「飛行士さんを助けて! あなたを見つけるわ!」(女の子が 空に向かって、星の王子さまに向かって言う台詞。)

監督は マーク・オズボーン。
日本公開に際しては、オリジナルの英語発声版と日本語吹き替え版、3D版と 2D版とが用意されています(僕が観たのは 英語発声・2D版です)。

 

goldenadereクリムトの黄金の名画に秘められた、
美しくも哀しい記憶。
1人の女性が喪失から立ち上がり、
奇跡を起こす――。

黄金のアデーレ 名画の帰還
(アメリカ=イギリス合作/109分)
11.27 公開。
golden.gaga.ne.jp

【STORY】 20世紀が終る頃、ある裁判のニュースが世界を仰天させた。アメリカに暮らす一女性が、オーストリア〝政府〟を訴えたのだ。それも〝オーストリアのモナリザ〟と称えられ、何年も国の美術館に飾られている 黄金に輝くクリムトの名画 <アデーレ・ブロッホ = バウアーの肖像 I> を、「私に返してください」という驚きの要求だった。
駆け出しの弁護士と二人で、オーストリア政府に立ち向かったのは、マリア・アルトマン、当時82歳。伯母であるアデーレの肖像画は、第二次世界大戦中、ナチスに奪われたもので、正当な持ち主である自分のもとに返して欲しいというのが、彼女の主張だった。一方、オーストリア政府は、アデーレが遺言で国に寄贈したものだと真っ向から反論。マリアの正義とプライドを賭けた 戦いの幕が切って落とされた――。(プレスブックより。一部省略)

実話に基づくヒューマンドラマ。アデーレの姪で 82歳のマリアが、青年弁護士 ランドル・シェーンベルクに 肖像画の返還協力を依頼した1998年から、ウィーンの調停で 返還判定を勝ち取った2006年までの真実を描いています。

この映画、まずシナリオの出来が素晴らしい。複雑な経緯と要素を過不足なく整理し、観客に分かりやすく伝えようと、推敲に推敲を重ねたという印象…。そのシナリオに導かれたかのように、監督以下、スタッフ・キャスト全員が一丸となって取り組んだと感じさせる作品です。観賞後、共感と共に 清々しい気持ちを味わえたのは、そのためでもあると思います。

マリア役の ヘレン・ミレンは、その品性・ユーモアのセンス・内に秘めた戦争への怒り・不屈の精神の全てを巧みに表現し、本作を最近数年間(通信(148) (253))での ベストパフォーマンスとしています。
ランドル役の ライアン・レイノルズは、若さ・豊かな知性と感性の魅力に加え、徐々に訴訟に のめり込んでいく役どころがピッタリで、調停の場でのスピーチシーンが そのハイライト。彼の弁護・その表情と態度の真摯さには 目を見張らされます。
マリアとランドルに協力するドイツ人ジャーナリスト、フベルトゥス・チェルニン役の ダニエル・ブリュール(『コッホ先生と僕らの革命』(通信(114))で〝ドイツ・サッカーの父〟と呼ばれる実在の人物を好演)も、地味な役ながら 好ましい存在感を放っていました。

以下、忘れ難い場面の数々。
1) 1937年、マリアの結婚式の回想場面。特に 急激にスピードを増す〝メジンケ〟(ユダヤの伝統的なダンス)を列席者全員で踊る部分。
2) 1938年、マリアが夫と共にアメリカへ亡命する一連のシークエンス。迎えの車に乗り込むまでのシーンは少々長すぎる気もしましたが、ドラマティックでスリリングな要素が見事に配置されています。両親との別れ、逃げ道を それとなく教える洗濯中の女性、「ユダヤ人よ!」とナチス隊員に叫ぶ満艦飾の中年女性、「あなたのお父様には御恩があるのです」と逃亡を助ける初老のドイツ人男性の台詞、飛行機に搭乗する直前の緊迫したシーン等を含めて。
3) 1999年、マリアとランドルが 慇懃無礼な態度のオーストリア審問会と交渉する場面。
4) 夫 ランドルの胸中を察し、心から支援する妻(ケイティ・ホームズ)とランドルの場面。
5) 2006年、調停委員会でスピーチするランドルの場面。その真摯な姿の美しさ。
6) 勝利を得た瞬間、ランドルの手に 頰ずりして マリアが涙を流す場面。その隣で 潤んだ瞳を輝かせるフベルトゥスの表情も含めて。

全ての映画ファンにオススメしますが、特に 正義感と信念を大切にしている皆さんにとっては、今秋一番の感動作となるでしょう。
監督は、『マリリン 7日間の恋』(通信(93))以来の サイモン・カーティス。シナリオは、これが 映画脚本第一作となる アレクシ・ケイ・キャンベル。

 

howtomakehappyend
(C) 2014 PIE FILMS/2-TEAM PRODUCTIONS/PALLAS FILM/TWENTY TWENTY VISION.

発明好きのヨヘスケル。
病に苦しむ友人から頼まれた秘密の発明が、
思わぬ評判を呼んでしまい―!?

大切な絆、人生の輝きが見えてくる、
笑いと涙に包まれた感動の物語。

ハッピーエンドの選び方
(イスラエル/93分)
11.28 公開。
http://happyend.asmik-ace.co.jp

【STORY】 エルサレムの老人ホームに暮らす 発明好きのヨヘスケル。ある日、彼は 望まぬ延命治療に苦しむ 親友 マックスから、発明で 安らかに死なせてほしいと頼まれる。妻 レバーナは 猛反対するが、お人よしの彼は 親友を助けたい一心で、自らスイッチを押して 苦しまずに最期を迎える装置を発明する。しかし、秘密だったはずの その発明の評判は イスラエル中に瞬く間に広がり、依頼が殺到してしまい!? そんな なか、愛するレバーナに認知症の兆候が あらわれ始めて…。残された時間と 向き合って見えてくる、人との つながり、人生の輝き。ヨヘスケルとレバーナの選択とは――? (試写招待状より)

コレは とても愛すべき小品です。簡潔に表現すると、キャッチコピーどうりの ヒューマン・コメディ・ドラマ、生と死、愛と友情の物語…。マスコミ試写の会場では、度々 笑声に包まれる一方で、涙を拭く人の気配が多々感じられ、ヴェネチア国際映画祭で観客賞を受賞したのも当然だと思いました。

まず 第一主役、ヨヘスケル(ゼーブ・リバシュ)の人間味。きちんと生きてきた立派な大人(75歳ぐらい)でありながら、稚気あふれるキャラクター。その稚気が 愛情の深さや寛容さと一体化しているところが素晴らしく魅力的です。
また、認知症が相当進行してきたレバーナ(レバーナ・フィンケルシュタイン)が、ある時、ちょっとした(?)出来事で 施設の お堅い管理者の怒りを買った時、「私を励ますために彼らがしてくれたコトです。咎められるような問題ではないはずです」とキッパリ言い放つ場面には、驚くと共に 感動 & 脱帽させられました。
さらに、ホームの仲間で 元獣医の ドクター・ダニエル(70代後半ぐらい。同性愛者)、及び 彼と愛し合っている 元警官のラフィ(60代後半ぐらい。妻帯者)との数場面(きわどいのに 非常にユーモラス かつユニークな場面が、少なくとも 2ヶ所にあります)では、好意を伴う大爆笑が起きました。画面にも試写室にも、その瞬間、とても温かい雰囲気が漂い、僕は それを とても心地よく感じたのでした。

シリアスな問題を、人間愛とユーモアと稚気で包み込んだ優れた小品。尊厳死と安楽死との違いも僕は勉強になりました。
パレスチナとの紛争や 宗教的な要素は 全く含まれていません。その点は 安心して観てください。
脚本・監督は、シャロン・マイモンと タル・グラニットのコンビです。

 

 

 

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info@biteki.com
(個別回答はできかねますのでご了承ください。)  

ビューティ エキスパート 大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 https://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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