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2011.3.31

大高博幸の美的.com通信(52)愛&人生を見つめた新作×2本〜試写室便りNo.9

どうしてだろう、娘との時間が美しいのは。
父にとって、それは忘れかけていた日常。
娘にとって、それは忘れられない時間─。
『SOMEWHERE』(原題=SOMEWHERE)
★詳しいストーリー&キャストetc.は、www.somewhere-movie.jp へ。
<4月2日(土)から、新宿ピカデリーほかにて全国ロードショー>

ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したこの作品は、ソフィア・コッポラ監督が『マリー・アントワネット』以来4年振りに手がけたハートフルなヒューマンドラマ。自堕落なセレブ生活を送る映画俳優ジョニー(女たらしで酒呑み)の許へ、別れた妻と暮らす11歳の娘クレオがやって来る。そして娘との親密な触れ合いをきっかけに、ジョニーが「ここではないどこか」へと新しい1歩を踏み出すまでの物語。

この映画を観て僕が1番強く感じたのは、たとえ目立つ欠点があったとしても、「ハートのある人間は救われるなぁ」というコトでした。この場合のハートとは、優しさ+純真さ+前向きな心。さらに価値が高そうに見えて、実は大したモノではない何かを潔く捨て去る勇気。
ラスト近く、ジョニーは別れた妻に電話して、「こっちへ戻れないか」と涙ながらに訴える。彼女の返事は「それはできないわ」(僕の想像だけど、彼女は既に新しい愛に生きている…)。それでもなお、ジョニーは表向きの華やかさとは裏腹に、実際は孤独で空虚な生活と訣別し、さわやかな顔で明日を見つめる…。その先がどうなるかは示されていないけれど、この父と娘は必ず幸せになると思えたし、少なくとも僕はそう願わずにはいられませんでした。

ジョニー役のスティーヴン・ドーフは、ハリウッド・スターとしては胴長短足に見えるのですが(失礼!)、少年風の瞳の輝きが魅力的で、役の持つ危うさを巧みに表現しています。クレオ役のエル・ファニングの起用も大成功で、ある時は9才ぐらいに、またある時は15才ぐらいにも見える微妙にアンバランスな年頃の心理を、自然に清々しく表現しています。特にジョニーのアンモラルな行動を探るorとがめるような目で、何度も父の顔を見つめる朝食テーブルでの演技が素晴らしい。
技術的には、ホテル“シャトー・マーモント”のプールでの水中撮影場面が今まで観たコトがないほど明るくクリアで、驚くほどキレイでした。また、連続するシーンのカットつなぎが非常に丁寧で、コッポラ監督は、この辺りにも独自のこだわりを持っているのかも。

以下は勝手な見解ですが、ポールダンサー2人組のセクシー(というよりは単なるパンチラ)な踊りを2度も観せたりするよりは、ジョニーがカメラの前で一応真面目に演技する場面とか、クレオが泣き出すシーンの伏線的場面などを用意していたなら、さらにバランスのよい作品になったのでは?という気もしました。
それはともかく、甘っちょろくないハートウォーミング・ピクチャーとして、女子はモチロン、男子の皆さんにも、ぜひ一見をオススメします。栄光の歓喜が虚ろな孤独感に変わっていく心理的プロセスなど、若い今のうちに観ておくと、後々プラスになるはずです。

天才作曲家マーラーと世紀末ウィーンの女神(ミューズ)アルマ、その愛と真実。
『マーラー 君に捧げるアダージョ』(原題=MAHLER AUF DER COUCH)
★詳しいストーリー&キャストetc.は、www.cetera.co.jp/mahler へ。
<4月30日(土)から、渋谷ユーロスペースにてロードショー。全国順次公開予定>

マーラー生誕150年&没後100年を飾るドイツ&オーストリアの合作映画。クラシック音楽ファンは言うまでもなく、結婚と夫婦のあり方について鋭意研究中のあなたには特にオススメ。「お互いに求めながらもすれ違う夫婦の葛藤と、天才にすべてを捧げたひとりの女性(妻)の決意」(パンフより引用)という内容ですが、精神科医のフロイトが3番めに重要な人物として登場するだけあって、マーラー夫妻の深層心理を追及していくという展開。
ヴィスコンティの名作『ベニスに死す』を想わせる趣があるのは、ダーク・ボガートが演じた作曲家アッシェンバッハのモデルが本作の主人公その人なのだから当然の話。切れのいいカット+フラッシュバック&証言シーンを多用した演出のスタイルが、ウツウツとしたストーリーにリズムとテンポを、一貫してハレーション効果を生かした撮影が、陶酔的な輝きを画面に添えています。
あえてひとりで観るか、本当の親友と観るか…。But、恋人or伴侶と一緒に観ると、何か気まずい思いをする可能性もアリ、です。

では、また!!

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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