健康・ボディケア・リフレッシュニュース
2016.3.15

大高博幸の美的.com通信(332) 『木靴の樹』『最高の花婿』『 Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』『あまくない砂糖の話』 試写室便り Vol.111

© 2013 LES FILMS DU 24 – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION
© 2013 LES FILMS DU 24 – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION

4人の娘たちの結婚相手は、みんな外国人!?
毎日が異文化バトルの家族に、
愛と平和は訪れるのか?

「黒人だって 言った?」「言い忘れた」
「君が家族に加われば 虹色になる」

最高の花婿(ハナムコ)
フランス/97分
3.19 公開。配給:セテラ・インターナショナル
www.cetera.co.jp/hanamuko

【STORY】 フランスのロワール地方に暮らすヴェルヌイユ夫妻には、他人には相談できない悩みがあった。3人の娘たちが 次々と アラブ人、ユダヤ人、中国人と結婚、様々な宗教儀式から食事のルールまで、異文化への驚きと気遣いに疲れ果てていたのだ。そんな時、最後の希望だった末娘が、カトリック教徒の男性と婚約! 大喜びの夫妻の前に現れたのは しかし、コートジボワール出身の黒人青年だった。しかも フランス人嫌いの彼の父親が大反対、妻に説得されて渋々承諾した結婚式を、スキあらばブチ壊そうと乗り込んでくる。果たして、色とりどりの家族に 愛と平和は訪れるのか――? (プレスブックより)

異人種間の結婚が世界で一番多い国、フランスならではの とても愉快なコメディドラマ。
まず 脚本の練りが素晴らしく、捉えかたによっては難しくなる問題を 戯画的に描いていて、構成も台詞もテンポの良さも 観客を楽しませるに十分です。

開巻 間もなく映し出される〝ヴェルヌイユ一族のランチパーティ〟が〝人種差別反対集会〟のようになった後、全員が各自 しきりに大反省……。しかし 一族が再び揃うと「また同じ結果に相なるのでは?」と 観る側のほうが ヒヤヒヤしてしまうという展開も、本作独自の面白さ。この辺りにも、本国で大ヒットを記録したという勝因が隠されている感じです。
また、ヴェルヌイユ氏( クリスチャン・クラヴィエ)の釣りの場面で、携帯ラジオから流れてくるシャンソンの名曲「優しいフランス人」(“DOUCE FRANCE”)が 氏の心理状態を 皮肉る or からかっているように聞こえてくる演出や、ちょっとした場面の設定によって「登場人物のAとBは 今、心を深く通わせた」と観客に難なく納得させてしまう一種の省略法の使用も、職人芸の域に達しています。
さらに ケッサクだったのは、ラスト近く、パリ行きの特急列車の中での〝ひと芝居〟の場面。詳しくは 観てのお楽しみとさせていたゞきますが、そこには 弾けるようなユーモアとウィットのセンスがあって、僕は思わず大笑いしました。

登場人物では、時々口論をするにしても、仲睦まじいヴェルヌイユ夫妻が非常に魅力的。四人の娘たちは 何となく『若草物語』と『細雪』を想い出させ、そのパートナーたちも全員が個性豊か。
印象に残った台詞は( ヴェルヌイユ夫妻の会話が味わい深かったのですが、憶えられたのは短い台詞ばかりで恐縮)……、
1) 「私のチョコレート」「僕のヨーグルト」( ラヴラヴ状態の末娘( エロディー・フォンタン)と 彼氏( ヌーム・ディアワラ)が、見つめ合って言う台詞)。
2) 「娘たちの幸せが、そのまゝ私たちの幸せなの」( クリスマスパーティの場面で、シャルタン・ロビー演ずるヴェルヌイユ夫人が 一同に言う台詞。月並みな言葉でありながら、心が こもっていてホロッとさせる)。
3) 「変わった家族だな。コミュニストか?」( 末娘の彼氏の父親( パスカル・ンゾンジ)が ヴェルヌイユ夫妻らとTV電話会見した後、妻( サリマタ・カマテ)にツブやく台詞)。
4) 「やめて。今は そんな気分に なれないの」「結婚前からセックスレス?」「笑えない…。おやすみ」「おやすみ」( 結婚が暗礁に乗り上げた直後の、末娘と彼氏の台詞)。

監督は フィリップ・ドゥ・ショーヴロン。脚本は ギィ・ローラン & F・ショーヴロンとの共同執筆。出演者は 特急列車の車掌さんに至るまで、全員が適役好演。
『最高の花婿』は、当コラムの読者全員にオススメの一作です。ひとりで観ても、友だち or 彼氏と観ても花マルで、観終えた後、癒されたような気持になれるコト、請けあいます。
P.S. セックスシーンは、残念ながら 一度も出てきません(笑)。

 

シャーロック
(C)Agatha A Nitecka / SLIGHT TRICK PRODUCTIONS

解かねば死ねない未解決事件。
奇妙な素行調査と 新たな助手。

私には、やり残したことがある。

Mr.ホームズ 名探偵最後の事件
イギリス=アメリカ/104分
3.18 公開/配給:ギャガ
gaga.ne.jp/holmes/

【STORY】 海辺の家で ミツバチの世話をしながら、穏やかな余生を送っている シャーロック・ホームズ。だが ホームズには、死ぬ前に どうしても解かなければならない謎があった。約30年前、助手にして親友のワトソンが ホームズのもとを去った日、ある男から奇妙な調査依頼が舞い込んだ。彼の妻が 怪しげな音楽教室に通い、亡くなった子供たちとの〝交信〟に のめり込んでいるというのだ。ホームズの捜査が あぶり出したのは、妻による夫の殺害計画だった。しかし、事態は思わぬ方向へと転がり、取り返しのつかない失敗を犯したホームズは 引退に追い込まれる。今、推理のカギを握る日本への旅から帰国したホームズは、探偵の才能を秘めた家政婦の息子 ロジャーを助手に、最後の推理を始める!( プレスブックより。一部省略)

ホームズ映画ファンの僕は、試写初日に 万難排して観に行きました。
原作は、純文学系作家 ミッチ・カリンの小説( KADOKAWA刊。題名は 映画と同じですが、Mr.ミスターと表記)。舞台は ホームズが 30年以上も暮らしている サセックスのヘッドリーハウスという片田舎の屋敷、時は1947年。しかし、彼が引退を決意する原因となった約30年前の未解決事件が、回想形式で 繰り返し映し出されます( そこには、ベイカーストリートや ハドソン夫人の姿も!)。

冒頭、日本から帰国したばかりのホームズは、ステッキを手にというよりは 杖を頼りに歩く 93歳の気難し気な老紳士……。目からは輝きが失われ 動きもスロー、物忘れがひどく、カンも衰えている……。
この映画が興味深いのは、ホームズ物語ならではの謎解きの面白さを保ちつゝ、老境のホームズの心の内に迫っているコト。戦争で夫を亡くした家政婦と その息子であるロジャー少年との関係、さらに 山椒( ロイヤルゼリーに勝る“若返りの妙薬”と彼は信じている)を求めて日本を訪れた際に同行してくれた ウメザキとのエピソードを絡めながら、30年前の事件の謎を解こうとする展開が非常にユニーク。ホームズの心境と サセックスの しっとりとした趣にも 味わい深いモノがあります。

最も印象的だったホームズの台詞は……、
1) 「私は ずっと孤独だった。しかし、それは知識で埋め合わせられたから 不満ではない。幸運にも自分の居場所が見つかれば、孤独な心を抱えて生きていける」。
2) 「我が人生に悔いなし。だが、やり残しは いかん」。

本作を観る上で、混乱を避けるために、頭に入れておくべきコトが ふたつ。
1) 相棒のワトソンは、30年前の場面が始まる前日に結婚して ホームズとは別れていて、その 3年後に死去している。
2) ホームズが 屋敷の庭で大切に飼育しているのは ミツバチ。ミツバチは 人を刺すと針を残すが、ミツバチの天敵であるスズメバチは 針を残さない。
その他、ホームズは 人の名前を取り違えて口にするようなコトもあるので、画面に気を取られて台詞字幕を流し読みしていると、混乱を招く結果になりがちです。

監督は『ドリームガールズ』等の ビル・コンドン。
出演者は、ホームズ役の イアン・マッケランを筆頭として、家政婦 マンロー夫人役の ローラ・リニー、ロジャー少年役の マイロ・パーカーが好演。30年前の事件の夫婦役、パトリック・ケネディと ハティ・モラハンは、ルックスからして 如何にも第一次世界大戦直後の紳士淑女の雰囲気。
収まりが あまり良くないと感じたのは、ウメザキ(真田広之)に関するエピソード。戦後の広島駅前や原爆ドーム付近の描写は それなりに興味をそゝりますが、脚本に もうひとつ工夫が施されていればと、少し残念な気はしました。

 

amakunai世界は砂糖中毒になっている!
これまでのカロリー判断は間違っていた?!

あまくない砂糖の話
オーストラリア/102分
3.19 公開。配給:アンプラグド
amakunai-suger.com/

【概要】 オーストラリアの俳優 デイモン・ガモーは、人間は平均で 1日に スプーン40杯もの砂糖を摂取していることを知る。世の中にはヘルシーをうたった食品も数多く売られているのに。疑問に思った彼は、医療チームの監視のもとで、自分が砂糖を食べ続けて実験をすることにした。その実験とは、あえて 低脂肪ヨーグルト、穀物バー、フルーツジュース、シリアル等の〝ヘルシー〟な食材を 3食 60日間 食べ続け、体や心が どのように変化していくのかを記録していくというもの。実験結果が教えてくれたのは、わたしたちの食生活に忍び寄る、砂糖の〝あまくない〟真実。観れば 必ず誰かに教えたくなる。あなたの食事は、きっと変わる。( プレスシートより)

砂糖が心身に与える影響や 身近な食生活に忍び寄る砂糖の危険性、さらには製糖業界の問題点など、隠された砂糖の真実を明らかにしたドキュメンタリー映画。昨年、本国オーストラリアで ドキュメンタリー映画史上 最高の動員を記録し、社会現象を巻き起こした作品です。
本作で 脚本 & 監督も担当した D・ガモーは、自らが実験台となって 60日後、体重は 8.5Kg、体脂肪は 7%、ウエストは 10cm増え、体調も心理状態も 彼史上最悪になったという結果を呈示してくれます。
その実験のルールは、以下の 5つ。
1) 1日に ティスプーン40杯分の砂糖(160g相当)を消費する。
2) ソフトドリンクやアイスクリーム、チョコレート等の菓子類は避ける。
3) 低脂肪ヨーグルトやシリアル等の「実は砂糖の多い食品」を摂る。
4) 必ず「低脂肪」の食品を選んで摂る。
5) ジョギングや筋トレ等の運動習慣は続ける。

学んだコトは とても多かったのですが、僕なりに短く まとめると、① 砂糖を大量に摂るコトができる現代の環境と 人類の肉体は、相性がいいとは言えない( ダニエル・リード博士の論)、② 砂糖を断つことで頭脳もクリアにできる( トーマス・キャンベル 元NASA物理学者の論)という ふたつに要約できます。また、カロリーの値 そのモノではなく、その〝カロリー源〟を見直すべきだというコト。腹が立った時に甘い物を食べて気を取り直したり、愛に飢えている時にはチョコレートで代用したりするというコトも、真面目に考え直さなければいけないと思いました( 個人的に認識不足を反省させられたのは、りんごを そのまゝ摂った場合と、ミキサーにかけて ジュースにして摂った場合の違い = 栄養の摂取内容に大きな差が生じるという事実を 解説している場面でした)。

読者の皆さんは、たとえ肥満の悩みを今は抱えていなくても、健康体で長生きするために、自分 及び大切な誰かの健康を守るために、この映画は ぜひ観てください。できれば 大切なポイントをしっかりと把握するために、劇場で売られているパンフレットを入手して、映画を観た後、復習していたゞければと思っています。

 

(c)1978 RAI-ITALNOLEGGIO CINEMATOGRAFICO – ISTITUTO LUCE Roma Italy
(c)1978 RAI-ITALNOLEGGIO CINEMATOGRAFICO – ISTITUTO LUCE Roma Italy

世界の巨匠 エルマンノ・オルミ監督の
長き映画人生における金字塔。
名もなき人々に向ける優しく深い眼差し。
社会の不条理への静かな告発。

映画史に清冽な光を放つ伝説の名作が、
四半世紀の歳月を経て 再公開!

木靴の樹
イタリア/187分
3.26 公開/配給:ザジフィルムズ
www.zaziefilms.com/kigutsu

【STORY】 19世紀末の北イタリア、ベルガモ。厳しい大地主のもとで 肩を寄せ合うようにして暮らす四軒の農家。貧しい彼らは 農具や生活の品の多くを地主から借りていた。ある日、バティスティー家のミネク少年の木靴が割れてしまう。父は 村から遠く離れた学校に通う息子のために、川辺のポプラの樹を伐り、新しい靴を作った。しかし、その樹木も また 地主のものだった…。(チラシより)

『木靴の樹』は 惹句どうりの、映画史に燦然と輝く名作です。カンヌ国際映画祭で 初めて公式上映された時(1978年)、2,000名を超える観客がスタンディングオベーションを贈り、審査員が全員一致でパルムドール賞に選出……。その後も各国の映画賞を総なめにし、日本でも大きな反響を呼びました。
今回の再上映は、E・オルミ監督の最新作『緑は よみがえる』の 4月下旬公開を記念しての企画で、またとない鑑賞の機会です。
本作については、チラシに掲載されている 映画評論家・蓮實重彦氏のコメントが 簡潔かつ完璧で 愛情に満ちているので、興味を感じた方は 是非ともチラシを読んでください( そのコメントの引用も考えはしたのですが、冒瀆行為になるようにも思えたので 遠慮するコトにしました)。

187分という長篇は バティスティー家と木靴の話に終始しているワケではなく、四つの家族の営みが併行して、あるいは交錯して描かれています。木靴に関する話と同じくらい印象的なのは、ブレナー家の清らかな娘 マッダレーナと 工場で働く青年 ステファノとの 純な交際から 結婚に至るプロセス。さらに ミラノの修道院での初夜の翌朝には、愛らしい満1歳の孤児の里親になっているという話の流れ……。また、貧しいが愛に溢れたルンク未亡人一家( とりわけアンセルモじいさんの紳士的な生き方)と、フィナール家の狡猾な父親と 彼に反発する息子との関係等も、興味深く描かれています。村の立派な教会と 牧師の存在も忘れられません。勿論、大地主の情容赦のなさも……。
本作には、観ているのが生理的にツラい場面が ひとつあります。それは 大切に育てゝきた豚を屠殺する場面。豚の悲鳴と苦しむ姿が〝省略ナシ〟で映し出されているのです( そこは、目を閉じ、耳を塞いでいても いゝのでは?)

映像は、敷地内に積み上げられている薪(まき)から 擦り切れそうな衣服に至るまで、何故だろうと思える程の美を湛えています。経時によって オリジナルフィルム( ポジフィルムか ネガフィルムかは不明)のエマルジョン面に 僅かながら劣化が認められるものの、それが 作品の価値を損なっているようなコトは全く ありませんでした。

 

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
質問がある方は、ペンネーム、年齢、スキンタイプ、職業を記載のうえ、こちらのメールアドレスへお願いいたします。
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info@biteki.com
(個別回答はできかねますのでご了承ください。)  

ビューティ エキスパート 大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 https://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

 

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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