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2022.9.12

ゲスト・真矢ミキさん|作家LiLyの対談連載「生きるセンス」第1話「既成概念」

「年齢を重ねるということはどういうこと?」。楽しいことばかりではないし、かといってつらいことばかりでもない。人生の先輩に訊いてみました。「 私たちに生きるヒントを授けてください」と。40代からの人生が輝く"読むサプリ"。 3人目のゲストは、真矢ミキさんです。 【作家LiLy対談連載「生きるセンス」第3回ゲスト・真矢ミキさん 】

 

新たな環境へのチャレンジで不安だった私にくれた優しさ

自分の意見を言っても「反抗期」の一言で流されて、「大人」に対する苛立ちはピークに達しつつあった。私は高校生で、時代は’90年代後半。ちょうど世間では、少年犯罪や女子高生の援助交際が社会問題となり「キレる17歳」がトレンドワード入り。ワイドショーのコメンテーターたちが「最近の若者は」という常套句を使って好き勝手に若者をひと括りにして悪者化していた。17歳だった私はそれを観てキレた。テレビは消した。「大人」にまた失望した。

私、あんな大人にだけはなりたくない。

時は流れて、34歳。 朝の情報番組のコメンテーターの仕事が舞い込んできた。正直、迷った。自分が母親になってからというもの、虐待の報道などを見ると他のことが手につかなくなるほどに落ち込んでしまうようになったので、不意打ちのタイミングで情報が入ってきてしまうテレビはもう何年もずっと観ていなかったから。
ただ、そのような悲痛な事件に対して思うこと、世間に伝えたいと思うことは常にあって、それこそ(また別の)報道番組に意見を送ったりはしていた。……ただ自分が出演するとなるとやはり色々と不安で(執筆業に専念したい気持ちもあって)とても迷った。悩んだ結果、ありがたくお受けすることにして、だけどとても緊張しながらTBSに入ったその先に、周囲を照らす眩まばゆい光のように存在していたのが番組MCの真矢ミキさんだった。

「もし何か困ったことがあれば、どんな小さなことでもいいので、私におっしゃってくださいね!」
そう言って差し出された名刺には、個人用の携帯番号とメアドまでが青いペンで書き込まれていてーーー
あまりにもビックリして、それは今でも忘れられない出会いの瞬間。

真矢ミキさんといえば宝塚の男役トップスター出身の女優さんで、出会った場所はTBSのミーティングルーム内だったわけだけど、まるでひとりだけスポットライトに照らされているかのように見えた。抜群のスタイルはもちろん、空から見えない糸でピンッとつり上げられているかのような姿勢の良さと、その非凡な美貌……。おぉ!と唸うなった次の瞬間に出たのが、そのあまりにも気さくな対応だったのだ。
「凄すさまじいギャップに、吹き飛ばされそうになったんです」

その後も何度かお会いさせていただいているミキさんに今回初めて伝えると、「あはは。確かに女優さんは自分で名刺はもたないことが多いけど、あの名刺は、情報番組のお仕事をいただいたときに私も初めて作ったものなんです」

不安だった私を、その余裕のある優しさで丸ごと包み込んでくれたあのとき、救われたと同時に思ったのは――――

「こんなにもステキな大人に、私もなりたい」

今になって考えてみると、当時のミキさんが担っていた番組MCという大役は、それこそ彼女にとって本業ではない新しい仕事。「当時は50代に入りたて」真っさらな気持ちと覚悟をもって新しい仕事に挑んでいたという。
「コメンテーターの一人である私にまで丁寧に関わろうとしてくださって、いい番組を作っていきたいという真剣かつ積極的な姿勢にも胸を打たれたんです」

「郷には従えではないけれど、それはすごく思ったことです。だから大検もとったし、初めて自分の名刺も作って。女優としての顔ではなく番組と深く関わっていこう、学ばせていただこう、と。そぎ落としていくことも大事だけど、同時に詰め込むことも大事だと思っていた時期です。でも、最初からそう思えたわけではなくて。あそこに座ったときに、あまりにも(コメンテーターの)皆さんが自分の目線をもっていらして。同じ課題が来たときでもそれぞれの切り口が全く違うことが面白くて。専門をもっているとこんなにも違うんだ! 嗚呼、私も、自分の言葉を持てる人間にもっとなりたい!って。
特にね、リリィちゃんにはそれがすごくあった。私の心に、染み入りました。日本語にはないニュンアンスまでをもうまく日本語にしていく感じ。自分の感性で生きていらっしゃるから、それに感動したんだよねぇ。年齢関係なく、魅力とか才能というものを持っている方が私はすごく好きで」

まさか、そんな風に見ていてくださったとは知らなくて、恐れ多いお言葉にまた吹き飛ばされそうになりながら、私はミキさんにこの連載の趣旨を説明した。それこそ私が魅力と才能を感じる憧れの先輩に、年齢の重ね方のヒントをもらいにいく連載です、と。

「いいですねぇ。私は、八十歳が醍醐味だと思って生きているところがあります。魅力的だと感じる方が集中している年代なんです」
「わぁ! 最近読んだ本の中にも、五十、六十はまだ鼻垂れ小僧って文章があって(笑)」
「うふふ。鼻は、拭きますけどね(笑)。五十代はねぇ、楽しいよ! ただね、ビッグウエーブで“世の中の概念”というものが潰しにかかってくるので。年だ、年だ、もういい年だって!」

うわぁ、引き込まれる。
私は笑いながら、魅力って、具体的にはこういうことなのだと体感していた。
「なるほど、ビッグウエーブ!!(笑)。その言い方も大好きです!!」
「ごあいさつの頭で来る人もいるからね。今いくつ?って。別にいいですけど(笑)」
隙間なく美しく、でも全く飾らないミキさんから目も耳も離せない。
「もちろん、私もね」とミキさんが続けたその先が早くも気になって、私は思わず前のめりの姿勢になっていた。

>>>つづきは9月下旬公開予定です

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PROFILE
真矢ミキ:’64生まれ。元宝塚歌劇団花組男役トップスター。退団後は、ドラマ、映画、舞台、情報番組のMCなど幅広い分野で活躍 。’23年NHK大河ドラマ『どうする家康』に大河初出演で、愛娘・瀬名の母で今川家の品格を守る気高き女性、巴役を演じる。

LiLy:作家。’81年生まれ。神奈川県出身。N.Y.とフロリダでの海外生活を経て上智大学卒。25歳でデビューして以来、女性心理と時代を鋭く描き出す作風に定評がある。小説、エッセイなど著作多数。instagram @lilylilylilycom noteはこちら

文/LiLy 撮影/竹内裕二(BALLPARK) ヘア&メイク/平笑美子(真矢さん)、伊藤有香(LiLyさん) スタイリング/佐々木敦子 レイアウト/Jupe design 構成/三井三奈子(本誌)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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