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ネイルニュース
2021.9.10

「エルメス」の新聞広告が教えてくれた「素の爪」という意志と色気。【松本千登世「へーっ、美容って自由なんだ!」vol.1】

年齢とともに常識という枠にとらわれがち。美容も例に漏れず。そんな私の凝り固まった価値観や美意識をがらりと変えてくれた「ひと」「もの」「こと」をひとつひとつ丁寧に綴りたいと思います。第一回は、ある日の新聞広告について。【松本千登世「へーっ、美容って自由なんだ!」vol.1】

ネイルを塗るも塗らないも自由でいい、意志的でいい。

ある朝。何気なく新聞を広げたところ、全面広告に目が釘付けになりました。それは、エルメス初のビューティアイテム「ルージュ・エルメス」の誕生を告げるものでした。静寂の中に息吹や鼓動を感じるアライブな肌、しなやかな力強さが透ける直線的な眉。主役は、血色を唇に集中させたかのように濃密なのに、軽やかさも宿した赤のルージュ。でも、でも……?最もはっとさせられたのは、短く切り揃えられ、何も塗られていない素の爪。なんてゴージャスなの!なんて格好いいの!この人は揺るぎない価値観や美意識を持ち、自分の「物差し」ですべてを選び取っているに違いない。爪を見てなおのこと、唇に纏ったルージュ エルメスに強く惹きつけられました。文字的には多くを語らない新聞広告に大きく心を揺さぶられたのです。

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じつは私、手にずっとコンプレックスを抱えていました。「装っても、どうせ」という諦めの気持ちが強く、サロンに通うことにもネイルを塗ることにも指輪やブレスレットをつけることにも、積極的になれない自分がいたのです。それに料理から入浴まで、生活の中で美しい爪をキープするのは面倒だし、難しい。いっそ塗らないほうがまし、と、素の爪で過ごす時間が長かったのです。もちろん、後ろめたさもありました。職業柄、まわりは爪を美しく整えている人ばかり。それを目の当たりにするたび、爪を隠したい、手を隠したいと思っていたし、「爪は誰より自分が見ているんだから、素の爪だと気分が上がらないんじゃない?」と指摘されて落ち込んだことも。すべてが複雑に絡み合った「もやもや」から、抜け出せないでいました。
ところが、エルメスの世界観が一瞬で教えてくれたのは、常識に囚われない、誰の真似でもない、堂々と自分でいるという潔い美しさ。ネイルを塗るも塗らないももっと自由で意志的でいいということでした。あっ、こうも思いました。堂々と素の爪のままでいるためには、文字通り爪の先まで健康でいなくちゃ。バランスのいい食事も質の高い睡眠も、何よりこまめなネイルケアも大事、と。そして素の爪を好きになれたら、ネイルカラーが塗りたくなりました。指輪もブレスレットも、眠らせていた腕時計も楽しみたくなりました。あの爪が、凝り固まった私を解き放ってくれたのです。

ちなみに、10月中旬にエルメスからネイルカラーからハンドクリームまで、「手」にまつわる充実のコレクション『les Mains Hermès(レ・マン・エルメス)』が発売になるそう。冒頭の広告のもうひとつの真実が解き明かされる気がして、今からわくわくさせられています。

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美容エディター
松本千登世
航空会社、広告代理店、出版社勤務を経てフリーランスに。雑誌や単行本など、美容やインタビューを中心に活動。『「ファンデーション」より「口紅」を先に塗ると誰でも美人になれる 「いい加減」美容のすすめ』(講談社刊)『いつも綺麗、じゃなくていい。50歳からの美人の「空気」のまといかた』(PHP研究所刊)ほか著書多数。

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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