スキンケアするとどんないいことがあるのか【中年男性、トキメキ美容沼へ vol.28】
こんにちは、ライターの伊藤聡と申します。私は男性のためのスキンケア本『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社)を出しました。みなさんは、スキンケアに興味がありますか。スキンケアという言葉から、どんなことをイメージしますか? こちらの連載では、スキンケアに親しんでいく上で役に立つかもしれないあれこれをテーマに書いていきます。トライしてみれば楽しくて奥が深い、スキンケアの世界を一緒に探求していきましょう。
講師をしてみて感じたこと
今年も一年、この連載を読んでいただき、ありがとうございます。ふだんはスキンケアのしかたについて書いていますが、一年の締めくくりとして「スキンケアするとどんないいことがあるのか」について考えてみたいと思います。というのも最近よく、男女共同参画センターや、公共施設のカルチャー教室といった場所でお話する機会をいただくのですが、そこに来られる男性に対しては、まずはスキンケアをする理由について説明するところから始めるためです。わざわざ講座に参加されるくらいですから、通常の男性よりはずっと前向きな気持ちの方が多数なのですが、ケアに興味はありつつも踏み出せない、といった状態の方が多い印象があります。どこかで身体のケアや自分自身のケアにしっくりこない感覚が残ってしまっているようです。かつての私もまったく同じ状態でしたし、スキンケアを恥ずかしいと感じる気持ちがなくなるのに時間がかかりました。「これ、人には言えないなあ」と思いながら、こっそりやっていた記憶があります。そうした男性に、スキンケアや自分自身をいたわる気持ちを育ててもらうという講座を、たまにですがやっています。そういった場で多くの男性と実際にコミュニケーションを取ってみて、彼らが多少なりともスキンケアを始めてくれると、なんだか胸が熱くなってくるような、嬉しい気持ちになります。男性にも、ケアの意欲がある方は少なくないのだと、講師をするようになって気づきました。
「スキンケアをするのも、夜なるべく早めに寝るのも、休みの日に友だちと会って雑談をするのも、全部同じケアなんです」と話すと、来ている男性の表情が「おお、なるほど」と変化することがあります。スキンケアは、そうしたケアの階段の一段目で、その先にはいろいろな種類のケアがあります。ところがわれわれ中年男性は、そうしたケアからなぜか遠ざかってしまっていて、身体も心も、まともな手当をされないままの状態であることが多いのです。「ケアがないままだとしんどいので、もっと自分を大事にするための時間をつくったり、身体や精神を追い込みすぎないよう工夫してみましょう」というと、多くの男性はちょっと驚いたような、「銀行口座を確認したら、ボーナスが予想より多く入っていたとき」みたいな顔をします。自分の身体や心が配慮されるべきものだという発想があまりなくて、ただそのままにされてきたのではないでしょうか。講座で「洗顔をするときには、泡立てネットで洗顔料を柔らかくして、肌を摩擦しないようにしましょう」と伝えると、「肌ってそんなに大切なのか……」と意外に思う方も多く、まずは自分の身体や心が大切なものなんですよ、と説明するところから始めなくてはならないのだと感じました。たしかに私自身もかつては、自分の身体をどうでもいいと思っていたような気がします。
「友だちと話すこと」もケア
スキンケア講座では、「お友だちをつくって、できるだけ会話する機会を持ちましょう」という話もします。スキンケアの話を聞きにきたのに、急に「友だちはいますか」と言われて、これはなんの講座なんだと思う男性も多いのですが、友だちがいる、自分の考えに共感してもらえる、というのはケアだと私は思います。人に話を聞いてもらうと、気持ちが軽くなりますよね。悩みがあっても、客観的に考えられるようになったり、不安が弱まったりする。それが友だちのいいところです。かつてこの連載でも取り上げましたが、50代の男性の約4割は、悩みを相談できる友だちがひとりもいないという調査結果(*1)があります。これは本当によくないと私は思っていて、どうにか友だちとの時間を持てるようがんばりましょう、という話をしています。それでも、友だちを誘うのは勇気が要るらしく、友だちを誘って食事会や飲み会をやってみてはどうですか、というと、みなさんとても不安そうな表情になります。声をかけて人と会うのはハードルが高いようです。なかには「同窓会で人と会うのは友だちに入りますか」と、「バナナはおやつに入りますか」の訊き方で質問する方もいて、みなさん自分からアクションを起こすのは苦手なんだなと感じます。たしかに、自分から人に声をかけるってメンドくさいし、断られたら気まずいしで、たいへんですよね。でも、友だちとの関係性を築いていくのも、また自分に対するケアだと私は思います。だからこそ、照れくさくてもしなくてはならない。
長らく、ケアから目を逸らしてきた中年男性も、そろそろ自分の心身を大切にする機会を持った方がいいのではないか。そんな気がしている私です。もしこれを読んでいる男性のなかで「そういえば最近会ってないな」という誰かの顔が浮かんだ方がいたら、その友だちに思い切って連絡してみてください。それは毎晩のスキンケアとか、お風呂をシャワーで済まさずに湯船にお湯をはって身体を温めるとか、そういったことと同意義なのだと私は思っています。友だちはいいものです。そんなところで今月のアイテム紹介です。SUQQUの「ザ リクイド ファンデ―ション」は、お肌の質感をぐっと明るくきれいに持ち上げてくれる製品です。男性なら、これを塗ってから眉を整えるだけでじゅうぶん。いつもとはちょっと違うよそいきフェイスのできあがりです。友だちに会いにいく前に、この製品でおめかししていくのも楽しいですね。

*1 ISSP国際比較調査
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20180601_7.pdf

イラスト/green K
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
