少女漫画誌「ベツコミ」創刊55周年記念展「BEYOND THE PAGE 好き、のつづき。」没入体験をレポート&最富キョウスケ先生インタビュー【10月13日(月)まで!】

10月3日(金)、少女漫画ファン待望のイベント「ベツコミ55th ANNIV. BEYOND THE PAGE 好き、のつづき。」が新宿・LUMINE 0でついに開幕しました!1970年創刊の月刊少女漫画誌「ベツコミ」の55周年を記念した本展は、初日から多くのファンが詰めかけ、会場は熱気に包まれています。今回はライター・ミクニシオリが初日に体験してきた感動の展示内容を早速お届けします♪
圧巻!巨大スクリーンで名作の世界に”没入”
会場に入ってまず目に飛び込んでくるのが、高さ4m、幅20mを超える巨大なワイドスクリーンシアター。ここで上映されるイマーシブ映像は、まさに圧巻のひと言!
その中身はというと、『ポーの一族』『BANANA FISH』『BASARA』『風光る』『僕等がいた』など、20世紀を代表する名作から、『柚木さんちの四兄弟。』『主人恋日記』といった令和のベツコミを彩る作品まで、厳選16作品の名シーンが約30分の映像に。三面モニターいっぱいに漫画のコマが動き出し、効果音と音楽が響き渡る演出は、まるで作品の中に入り込んだかのよう。
かつて夢中になって読んだあの名シーン、心に残るあのセリフが、新しい形で蘇る瞬間は、ファンならずとも、誰もが胸を熱くするはず。
作家の”魂”を感じる原画展示
イマーシブゾーンを抜けると、待ち受けるのは制作過程を紹介するコーナー。プロットからネーム、下書き、ペン入れまでの工程を追える資料展示や、実際の作画風景をタイムラプスで撮影したドローイング映像も公開されています。アナログ作画時代の原画からデジタル制作の最新技法まで、時代とともに移り変わる制作現場の裏側をのぞける、ファン垂涎の内容です!
さらにここでしか見られない、50作品以上の貴重な原画展示。「絆」「気高さ」「きゅん」というテーマごとに構成された空間には、生原画と複製原画がずらり。間近で見ると、一本一本の線に込められた作家の想いが伝わってきます。ホワイトの入り方、ペンの筆圧、細やかな描き込み…印刷された誌面では分からない、手仕事ならではの温度が感じられる貴重な機会です。
限定グッズ&嬉しい特典も
会場では『ベツコミ55周年 公式図録』をはじめ、名作たちをデザインしたポーチやアクリルグッズ、デジタルサイン入りの複製原画など、ここでしか手に入らないオリジナルグッズが勢揃い。公式図録には会場限定カバーが付いてくるので要チェックです!
さらに嬉しいのが、税込3,000円分購入ごとにもらえる「チケット風クリアカード」全14種のプレゼント。ランダムで1枚プレゼントされるので、推し作品のカードが当たるかも♡ グッズはイベントチケットなしでも購入できるので、お土産探しにもぴったりです。
作家さんも55周年展示に大興奮!『電撃デイジー』『クイクオ』の最富キョウスケ先生インタビュー
今回の記念展はかつて少女漫画に夢中になった大人の女性たちにとっても、懐かしさと新たな発見に満ちた展示となっています。初日に会場を訪れた漫画家・最富キョウスケ先生に、展示の見どころと、時代が変わっても変わらない少女漫画の魅力について伺いました!
憧れの雑誌で紡いだ23年のキャリア
2002年に「ベツコミまんが学園ブロンズ賞」を受賞し、『デラックスBetsucomi』でデビューした最富先生。『電撃デイジー』『クイーンズ・クオリティ』など、時代を象徴する作品を数多く生み出してきました。
「『BASARA』や『BANANA FISH』など、私にとってバイブルともいえる作品が多く掲載されていて、ベツコミは私にとって特別な少女漫画誌でした。自身のデビューが決まった時には、感無量としかいいようがなかったです。そんなベツコミが今年で55周年というのですから、本当に感慨深いです」(最富先生)
涙が止まらなかった、イマーシブ映像の感動
開催初日に展示を体験した最富先生は、イマーシブ映像について、「涙なしには見られなかった!」と振り返りました。
「イマーシブ映像は、今思い出しただけでも涙が出そうになるほど感動しました。『ポーの一族』や『風光る』、『青楼オペラ』など、自分が読者として長年愛してきた作品のキャラクターたちが動いて、当時の名シーンが再現されています。自分の代表作である『電撃デイジー』も選抜いただき、今も私の中に生きるキャラクターたちがいきいきと動いている姿が本当に印象的でした。『電撃デイジー』もそうですが、どの作品の映像も、作家さんと編集さんが愛を込めてチョイスした名シーンを体験することができて、いますぐ家に帰ってもう一度漫画のページをめくりたいという衝動を感じました。30分ほどの映像ですが、わたしが愛してきたベツコミはこんなにすごいんだ……と、涙が止まらなくなりました」
プロも唸る原画展示「一本一本の線に意味がある」
50作品以上の原画展示や制作過程の資料も、現役漫画家の目から見ても貴重とのこと。
「また原画や制作過程のドローイング映像は、現役の漫画家のわたしが見ても、思わず関心してしまうほど貴重なものばかり。線やホワイトの入り方、色入れの順番など、それぞれの作家さんならではルールを垣間見ることができて、非常に参考になりました」
「展示されている原画からは、一本一本の”線の意味”を感じることができると思います。特に生原稿では、細かな線やホワイト使いもわかると思うので、それぞれの先生たちの情熱や意図を感じ取ってくれたら嬉しいです」
ベツコミが教えてくれた「多様な愛のカタチ」
最富先生にとって、ベツコミは作家としての”ラブ像”を学んだ場所でもあったのだそう。
「『ベツコミ』は普通の少女漫画誌と比べて多様なストーリー、多様な恋愛が多く展開されてきたことが大きな特色ですよね。小畑友紀先生の『僕等がいた』、芦原妃名子先生の『砂時計』など、王道ともいえる名作から、大好きな田村由美先生の『BASARA』や『7SEEDS』、吉田秋生先生の『BANANA FISH』など、青春系の少女漫画とはひと味違う、壮大な世界観の作品も多く掲載されてきました。
わたし自身、連載中は何度もベツコミの作品を読み込み、読者の方にどんな恋愛や展開を届ければいいのか、試行錯誤してきました。ボーイ・ミーツ・ガールという少女漫画の基本は大切にしながらも、そのストーリーや、愛のカタチは多様であってもいいというのが、ベツコミならではの懐の太さでした。わたしの作品も王道の少女漫画とは言えないですが、ベツコミはわたしなりの”ラブ像”を学ばせてくれました。ベツコミがわたしの漫画に少女漫画魂を吹き込んでくれたといっても過言ではありません」
また、展示を通じて、憧れの作家たちとの関わりや、当時の想いが蘇ったといいます。
「原画展を見ていると、お世話になったたくさんの先生との関わりや、作品の入れ替わりを思い出さざるを得ませんでした。『電撃デイジー』の連載中、小畑友紀先生の『僕等がいた』や、芦原妃名子先生の作品を何度も読んで、愛とは何なのかを考えました。展示を見ていると、あのときの自分が先生たちと一緒にいたことを実感できましたし、あのころの気持ちも大切な瞬間も、いまもベツコミの中に息づいていることを感じることができました」
時代が変わっても変わらない少女漫画の存在価値
2015年の『クイーンズ・クオリティ』からデジタル作画に移行し、時代の変遷を体感してきた最富先生。
「漫画制作の現場も、ベツコミも少女漫画像そのものも、時代に合わせて変化していく部分はあると思うのですが、わたしとしてはやっぱり、女の子を応援するために、少女漫画を描き続けていきたいと思っています。ベツコミの多様な恋愛像のおかげで、男の人が読んでも面白いと思える作品もたくさんあるのですが、やっぱり自分の作品は、女の子を勇気づける存在になれたら嬉しいです」
これからも唯一無二な存在でありつづけたい
「若かったころ、漫画は最もインスタントに楽しめる唯一の娯楽でした。時代は移り変わって、無料で楽しめるコンテンツもたくさん生まれて、漫画もたくさんの選択肢の中のひとつになったんだなと感じるときもあります。それでもやっぱり、少女漫画には唯一無二の存在価値があると思っています。わたし自身、漫画をつくるときには、キャラクターやストーリーに”人生の送り方のサンプル”を散りばめているつもりです。ページをめくって、セリフを読んで、キャラクターの考えや生き様を擬似体験できる。これは、漫画ならではの存在価値だと思うんです。それに、私がベツコミから教えてもらったラブは、恋愛というカタチだけではありません。友情や親子関係、あらゆる人間関係を円滑にする方法や、自身を肯定して愛する力でもありました。漫画を手に取ってくれた人が、自分の人生に自信を持てたり、幸せな気持ちになれたりする限り、漫画の存在価値は失われません。わたし自身今回の展示を見て、自身の人生を振り返ったときに、漫画からもらったものの大きさを思い出しましたし、やっぱり少女漫画が大好きだなと思えました」
55年分の”好き”が詰まった感動体験を
かつてのベツコミファンも、今のベツコミファンも、そして少女漫画が大好きなすべての人に贈る、55年分の”好き”が詰まった特別な展示会。あの頃読んでいた漫画、青春を彩った作品たちとの再会が、きっとあなたを待っています。10月13日(月・祝)までの期間限定開催なので、お見逃しなく!
チケット情報
本展は全日程「日時指定制」となっています。チケット区分と料金は以下の通り。
区分 | 前売価格(税込) | 当日価格(税込) |
---|---|---|
限定グッズ付き | 3,900円 | ― |
一般 | 2,900円 | 3,200円 |
学生 | 2,000円 | 2,300円 |
高校生・中学生 | 1,300円 | 1,500円 |
小学生以下 | 無料 |
営業時間:
平日 11:00〜20:30/土日祝 11:00〜20:00
最終日(10/13)は15:00終了。
『ベツコミ55th ANNIV. BEYOND THE PAGE 好き、のつづき。』記念企画展概要
- 会期:2025年10月3日(金)〜10月13日(月・祝)
- 会場:LUMINE 0(ニュウマン新宿 5F)
- 主催:株式会社小学館
55年の“好き”が詰まった、少女漫画の祭典へ
55年という歴史を積み重ねてきたベツコミ。その中で育まれてきた“好き”の思い出が、この展示会にはたくさん詰まっています。昔読んでいたあの作品、今また見返したい名場面、作家の手の跡まで。漫画ファンならずとも、心に響く何かが見つかるはず。ぜひ足を運んでみてくださいね。
<ベツコミとは>
1970年創刊。毎月13日発売。『少女コミック』の増刊として『別冊少女コミック』の誌名で創刊され、2002年に『Betsucomi』、2006年から現在の『ベツコミ』にリニューアル。少女漫画の枠を超えた壮大なスケールと深い物語性を持つ作品を数多く発表しています。
文・ミクニシオリ
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。