がんばれば、男らしくなれるのか【中年男性、トキメキ美容沼へ vol.21】

こんにちは、ライターの伊藤聡と申します。私は男性のためのスキンケア本『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社)を出しました。みなさんは、スキンケアに興味がありますか。スキンケアという言葉から、どんなことをイメージしますか? こちらの連載では、スキンケアに親しんでいく上で役に立つかもしれないあれこれをテーマに書いていきます。トライしてみれば楽しくて奥が深い、スキンケアの世界を一緒に探求していきましょう。
努力でどうにかなるのだろうか
私は長らく、男らしくない自分を恥ずかしく思っていました。世代的にも、男らしさ、女らしさが大切だとされていた時代に育ったため、男らしいふるまいができない自分の性格が嫌でしかたなかったのです。どうすれば男らしくなれるのか。自分の性格を変えようと19歳で決意し、それからおよそ20年に渡って努力しましたが、どうしても男らしくなれず、ついに断念しました。あきらめるのにとても時間がかかってしまいました。20年。さすがに長すぎます。2年か3年試したあたりで、「これは自分に向いていないぞ」と気づくべきでした。ボーカリストとしての剛田武くらい素質がないんですから、やめればよかったんです。これが私の人生におけるいちばんの後悔です。もしタイムマシンで18歳の頃に戻れたら、過去の自分に「男らしくするのは無意味だからいますぐ止めた方がいい、あとNVIDIAの株を買っといて」とアドバイスすると思います。男らしくなろうとする努力は完全にムダでした。しかしなぜ私は、男らしさなどというものを追い求めてしまったのでしょうか。
さて、こうなるとまず「男らしさとはなにか」という定義が必要になるわけですが、男らしさの定義はそれだけで本が1冊書けてしまうような重いテーマです。しかし、あえてひとことで簡潔に言うならば「支配する側の性としてふるまう」ではないでしょうか。これが私にはどうしてもできなかった。そもそも支配なんてしたくないわけです。スカイダイビングや「箱の中身はなんだろな」より嫌です。そんなおっかないことは絶対したくない。一方で、男らしい男性は、その場を支配することに快を見い出していました。会社の上司は大きな声で部下を叱責していましたし、女性にモテる友人は恋人の意見を聞かずにすべてを自分で決めていました。上司はその攻撃的な態度が「仕事に対する真剣な姿勢」として評価され、モテる友人の強引さは「頼れるたくましさ」と受け取られていました。私は、そうした支配の態度のなにが楽しいのかまったく理解できず、同時に、そのような強い行動に出られる男性に対して言いようのない劣等感を抱いていました。
フェスに参加できない
私にとっての男らしさは、フジロックやサマーソニックのような音楽フェスに似ています。そのフェス会場に入れば、仕事での成功や金銭、すてきな恋人、共に盛り上がる仲間が待っているのですが、入場するには「男らしさ」というチケットが必須なのです。私はそのチケットを持っていないため、いつまで経っても会場に入れずにいます。私は会場のすぐ近くまで行き、フェスがどれだけ盛り上がっているかを眺めながら心底ねたましく思うのですが、なにしろ会場に入れませんので、永遠の音漏れ勢として、遠くから鳴り響くバンド演奏を聞きながら「きっと楽しいんだろうな」と想像するほかありませんでした。ああ、なんとしてもこの会場に入りたい! ことほどさように、男らしさが欠けていることで、会社では認められず、恋人もできないのだと私は誤解していました。生きていて得られるよろこび、達成感はいっさい手に入れられない、なぜなら私には会場に入るチケットがないからだ。そう考えると、私はひ弱な自分が嫌でたまらなくなるのでした。
結論からいえば、努力したところで男らしさは得られませんし、仮に精神的な鍛錬をして男らしいフリができるようになったとしても、幸福にはなれません。いますぐ、そんな努力はやめなくてはならないのです。ここで参照したいのが、映画『ムーンライト』(2016)の主人公である、黒人のゲイ男性シャロンです。彼は、小さな頃から男らしくふるまうことができませんでした。周囲からも「なよなよしている」「みっともない」とからかわれ、コミュニティからも浮いた存在になり、いつもいじめられていました。もともとの性格がフェミニンなのですから、それを曲げたところで幸福感は得られませんし、努力でどうにかなる問題でもなさそうです。こうした状況でシャロンが取れる選択肢はふたつあると思うのです。
1、それでもがんばって男らしいふりをする
2、男らしさは捨てて、自分が生きやすい別の道を選ぶ
正解はむろん2なのですが、シャロンは、私と同じように1を選択してしまいました。自分をいじめている相手に復讐をして退学になってしまい、その後、地獄の筋トレと精神修行を経てこわもてのギャングスタに変身、心も身体もゴリゴリのマッチョ人間として生きていたのです。私はこの主人公の気持ちがよくわかります。男らしくない自分が恥ずかしかったのでしょう。だからこそ、なんとしても変身して周囲を見返す必要があった。しかし、このように別人になったところで、彼は自分ほんらいのナイーブな心をおさえつけてしまっているのですから、心の安寧は得られないままです。「さすがにマッチョはムリだろ!」と、私はスクリーンにツッコんでいました。映画は、主人公がようやく2の生き方へ移行できたかもしれない、というほのかな予感と共にエンディングを迎えます。最初から2を選べればいいのですが、それが思いのほか難しいのは、同じ失敗をしてしまった私には痛いほどよくわかりました。男らしくなりたいよね。しかしこれは、努力でどうにかなる問題ではないのです。
男らしくなくても
結論として、男らしさをやめても特に問題はありません。友だちはできますし、楽しいことはたくさんあります。自分に向かないことはやめればいい、ただそれだけなのです。私は、フェス会場に入れないことを悩んでいましたが、一方で、この世の中には別のフェス会場、さまざまな楽しみ方があるのだという事実には気づいていませんでした。どこか違うフェス会場へ移動すればいいのです。そこには新しい仲間がいて、自分にあった楽しみ方ができる。そんな当たり前のことに気づけなかった自分が情けないのですが、少なくとも男らしさから離脱できた私は、若い世代に同じ失敗をしてほしくない、という願いがあります。男らしさは、がんばってもどうにかなりません。20年やってダメだった私が言うのですから、これだけは確実です。男らしさは無意味なだけではなく有害性もあるのですが、それはまた別の記事で書ければと思います。
さて、男らしさは努力でどうにもなりませんが、努力でかなりどうにかなるのはUVケアです。日焼けで肌が傷んでしまってはいけませんから、ぜひUVケアをしていきましょう。日焼け止めは面倒だと感じる方も多いかと思いますが、これが習慣になれば、心地よい肌で自分をより大切に扱うことができます。タカミの「タカミUVプロテクション」は、クリームタイプの日焼け止めです。肌のうるおいを保つ効果もあり、保湿も期待できるのが嬉しいところ。タカミといえば「スキンピール」が有名ですが、日焼け止めも実にいい製品でしたよ。これからの季節、紫外線もどんどん強くなっていきます。UVケアでお肌を保ち、お肌が自分の心地よい状態になるよう工夫してみてください。そして「日焼け止めは男らしくない」なんて言うのは止めてくださいね。

イラスト/green K
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