スキンケアの歴史を知り尽くしたエディター2人が感じる、時代の変化とは?近い未来のエイジングケアにはもはや、夢しかない!|美的GRAND
美的GRAND本誌アラフィフエディター Cross talk
今、若い人の肌がキレイになっている
大塚 アラフィフの私たちが10代、20代だった頃と比べると、ニキビ肌やテカテカのオイリー肌の若い人がいなくなりましたよね。
もりた 化粧品の質が劇的に向上しているから、今の若い人は全体的に肌がキレイですよ。間違った美容法もだいぶ淘汰されたし。
大塚 角栓がびっしり取れる剥がす毛穴パックとか、肌がカサカサになるニキビ予防洗顔料とか。たまに使う分には悪くないんだけど、当時は信者のように愛用していましたね〜。最近、SNSが発達して個人がメディアになり、信憑性の薄い美容情報が流布していることを危惧しているのですが、むしろ昔の方が「ヨーグルトでパックしましょう」など、危うい美容情報が流布していたかも。
もりた 今、日焼け止めを365日塗るのは当たり前、こするのは良くない…など、基本的な美容知識は向上していると思います。
スキンケアコスメはこの40年で飛躍的に進化
大塚 この40年ぐらいで、携帯電話ができて、インターネットができてスマホができてAIができて…と世の中が激変したのと同じぐらい、スキンケアも進化しましたよね。
もりた グラン世代、つまり今の40から50代って、化粧品の進化の過程のいいところをいちばん享受できた世代だと思うんです。ちょうど美容を始める頃には海外コスメが豊富に日本で買えるようになっていたし、美容液の感動も最初から知っている。
大塚 日本で初めて誕生した美容液は1975年、コーセーの「R・C リキッド」だといわれています。そこからエスティ ローダーの「ナイト リペア」や資生堂の美白美容液が生まれて…。誰もが普通に美容液を使うようになるのは、1990年代以降でしょうね。
もりた もっと前のバブル世代だったら、成人して長らく、化粧水と乳液という選択肢しかなかった。スキンケアで保湿以上の効果を享受できる時代を迎えてから大人になったグラン世代は、恵まれています。
大塚 その後、1990〜2000年代に美白コスメの戦国時代や高濃度ビタミンC美容液の誕生などがあり、化粧品はより高い効果効能を競い合うようになりますが、2013年の白斑問題(注:ある美白成分によって一部の人に肌が白抜けする白斑が起こり、使用中止に)をきっかけに、鎮火します。
もりた 白斑よりも少し前から、スキンケアのあり方は変わりつつあった気がしますね。肌本来の機能を過度に抑えてまでも白さや若返りを求めた時代から、肌本来の機能を引き出し、日々育むことで、すこやかに自然に美しくなりましょうという考え方へ。
大塚 当時はなんとなく、物足りなさを覚えたものでした。
もりた 一見そうだけれど、実はその逆で、本質的には最も美肌への早道じゃないですか? 人がもつ機能が衰えていくことが老化で、細胞レベルでその機能を衰えさせないことは、最高のエイジングケアになります。
大塚 スキンケアの進化には医療分野の研究成果が落とし込まれているので、老化制御や再生医療の研究が進むに伴って、これからもっと、肌の力を生かすエイジングケアが進化していくのでしょうね。
“若返りたい”から“美しく年を重ねたい”へ
大塚 今、エイジングケアそのものへの考え方も転換期にあります。昔は、歳を重ねた女性は若返りや若見えを目指すことが正義のようにされていましたが、最近はグラン世代を中心に、変化しながら艶やかに年を重ねていくことが美しいと考える人も増えている。
もりた 〝奇跡の若返り〟に憧れたのがひとつ前の世代の美容で、今は自分らしく美しさを保ちたいというフェーズに入ってきていますね。若いよりも素敵が褒め言葉で、憧れは石田ゆり子さん。その中にもいろんな人がいて、化粧品だけでなく美容医療を組み合わせる人も。若い頃と変わらないビジュアルを追いかけ続けるグラン世代も、もちろん存在します。
大塚 美しさの価値観がひとつではなくなり、コスメや美顔器、医療と、選択肢も増えて。知性と知識が問われる時代。
もりた グラン世代はちょうどいいタイミングで老化と向き合うことができますね。
大塚 自分はどう年を重ねていきたいのか? 本心と向き合って目指す方向を決めれば、エイジングへの迷いや不安も消えると思います。いい時代になりました。
もりた&大塚の見解・スキンケアの歴史はこう変遷した!
1980年代
化粧水と乳液がお手入れの基本。右に倣えのバブル期
〝化粧水で水分を与え、乳液やクリームで蓋〟というオーソドックスなスキンケアを全員がしていた時代。美容格差はほぼなし。日本の黄金時代、バブル期に突入し、ワンレンボディコンがブーム。
1990年代
美容液が広まり、コスメが一気に 充実! コスメフリークが出現
アルブチンを配合した資生堂の「ホワイテス エッセンス」が1990年に誕生、その他さまざまな美容液が誕生。クリニークの「シティ ブロック」をきっかけに、日常紫外線の害が知られるようになる。
2000年代
スキンケア成熟期。美白の日常化にホリスティック美容と広がりを見せる
美白ケアは通年取り入れるものへと変化。アルビオン「ハーバル オイル」をきっかけとしたオイル美容、高濃度ビタミンC美容液「オバジC セラム」の誕生、THREEのホリスティック美容…と多様化。
2010年代
スキンケア転換期。肌本来の力を生かすことで、より美しくなる
肌本来の機能を応援するエイジングケアの象徴が、シワのできるメカニズムを追求して2017年に生まれたポーラ「リンクルショット メディカル セラム」。景気低迷期に入りプチプラコスメも人気に。
2020年代
美容医療が一般化。コスメは再生医療研究をベースに進化中
美容インフルエンサーが台頭し、肌に投資する人が増えて空前の美容ブームに。美容医療を当たり前に取り入れる人も激増。エイジングケアは再生医療の研究成果を取り入れたものが主流に。
『美的GRAND』2024秋号掲載
撮影/吉田健一 イラスト/リバー・リー 構成/大塚真里
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
出版社勤務後、2000年に独立。『美的』には創刊2年目から参加し、スキンケアの人気企画を数多く担当。書籍、Web記事、企業刊行物の編集執筆も行う。