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スキンケアニュース
2024.7.24

「男なら泣くな」は令和もまだ残っている?【中年男性、トキメキ美容沼へ vol.11】

こんにちは、ライターの伊藤聡と申します。私は男性のためのスキンケア本『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社)を出しました。みなさんは、スキンケアに興味がありますか。スキンケアという言葉から、どんなことをイメージしますか? こちらの連載では、スキンケアに親しんでいく上で役に立つかもしれないあれこれをテーマに書いていきます。トライしてみれば楽しくて奥が深い、スキンケアの世界を一緒に探求していきましょう。

「男たるもの、感情を抑えるべきである」の風潮

昭和40年代男である私は、小さな頃から「男なら泣くな」という風潮のなかで育ってきました。令和6年の現在、こうした考え方が若い世代にどのくらい残っているのか、実はあまりよくわかっていません。いまの小学生の男の子は「男だから泣いてはいけない」などと考えるのでしょうか。私自身をふりかえってみると、かなり気が弱い子どもだったので、すぐに泣くクセがありました。わけても苦い思い出は、私は鼻血が出やすい体質で、教室だろうがプールだろうが、ところかまわず鼻血を出してしまう生徒だったのですが、出血のたびクラスの男子にからかわれることでした。周囲にはやしたてられ、恥ずかしくなって泣いてしまうので、目から涙、鼻から血がいっせいに噴き出してしまい、故障したマーライオンみたいな状態になるのです。この傾向は大人になってからも続き、阿佐ヶ谷ロフトAのトークイベントに登壇して話している途中で鼻血を出して、会場の雰囲気をへんな風にしてしまったこともありました。

いくぶん話が逸れました。「男たるもの、感情を抑えるべきである」というステレオタイプは、いまだに残っているような気がします。私は美容を経験することで、そうした固定観念のマイナス面を学ぶことができました。今回の記事は「美容は、人の感情にどう影響するか」というテーマです。美容と感情には、かなり関係があると私はにらんでいます。私を含む男性は、美容を通じて豊かな感情を取り戻せるのでしょうか。なにしろ泣くのが禁止だったわけですから、さまざまな感情が失われているはずです。すぐに泣いたり、動揺したりしない立派な大人になるために、男性は子どもの頃から訓練をさせられているのですが、その結果として失われたものも多そうな気がします。私は、感情を表に出すことがうまくできなかったと、過去をふりかえってみて感じます。

なぜか「怒」のみが許されている

たしかに「男なら泣くな」に代表される感情の制御はあるのですが、喜怒哀楽のうち、なぜか「怒」だけが男性に許されているという状況もあります。泣いてはいけないが、怒るのはよい。この奇妙な「男らしさルール」のおかげで、男性の多くは怒りばかりが得意になってしまいました。他の3種類の感情(喜、哀、楽)は「男らしくない」とされているのですが、怒ることだけは、小さな頃から求められている男らしさの基準に違反しないので、表に出しやすいのです。結果として多くの男性は、よろこびをわかちあったり、相手の境遇に同情して一緒に悲しんだり、場の雰囲気を楽しく盛り上げたりするのが苦手で、怒るのは得意という厄介な性格を身につけてしまった側面があるのではないでしょうか。いやですね〜。喜怒哀楽のバランスが極端に偏っているのです。怒ることしか許されていないって、なんだか虚しいですよね。

美容に出会い、固まった感情をほぐしてくれるツールとしてのセルフケアを見つけることができて、私はずいぶん救われました。嬉しい、気持ちいい、この楽しさを誰かに共有したい……。そこから生まれてくる感情が豊かだと感じたのです。美容を知るまでの私は、感情の起伏も乏しかったように思います。怒りや不平不満も、多かったかもしれない。美容を通じた内面の変化のひとつとして、たとえば、気に入ったスキンケア製品を使っていると、人に教えたくなる、会話が広がるという点があります。そうしてセルフケアが人とつながるきっかけとして機能するのも実にいいと思いました。スキンケアをきっかけにコミュニケーションが生まれるのです。自分の中の「怒」が弱まり、これまで抑圧されていた感情「喜、哀、楽」が自分のなかでいきいきと動き始めたといえばいいのでしょうか。そうして解き放たれた感情の豊かさを知ってほしくて、スキンケアについての文章を書き始めたような気がします。

感情をときほぐすスキンケア製品といえば?

美容と感情というテーマでスキンケア製品を選んでみました。これからの夏の季節、オススメなのは、なんといってもビタミンC。寝る前に肌にしみこませるように使うと、強い日差しで傷んだ肌をいたわっているような、落ち着いた気持ちになれます。ドクターシーラボの「VC100エッセンスローションEX」は、ビタミンをたっぷり含んだ化粧水。しっとりして肌をやわらかくする感触が特徴で、肌にハリが出るような使い心地です。またVTコスメティクスの「シカバイタル マスク」はフェイスシートで、ビタミンや水分を補給できるのがポイント。人気のCICA成分も含まれているので、肌荒れに効くのも魅力です。どちらのアイテムも季節感があって、夏用のスペシャルケア製品という使い方をしているのですが、使っていると「自分をいたわりたい」という気持ちが率直にふくらんでくるように感じるのでした。

「たかがスキンケアで、感情が解き放たれるなんて大げさな……」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、日々のルーティンというのは意外にばかになりません。継続していると、思わぬ部分に影響が生じるものです。毎日なにかしらのケアをしていると、そのうち凝り固まった感情が変化するかもしれませんし、もっと自分のエモーションを自由に感じ取れるようになることだって、あるかもしれません。

 

伊藤 聡(いとう・そう)
会社員兼ライター。50代にして美容の楽しさに目覚める。著書に『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社刊)

イラスト/green K

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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