【シャネル 次世代への挑戦】南仏の町・ゴジャック オープンスカイ ラボラトリーへ
深紅のカメリアが秘める偉大な力美を育て、未来の可能性へと昇華するシャネルの次世代への挑戦。
2000種から選ばれた特別な力をもつ深紅の大輪
シャネルを象徴する花・カメリア。フランス南西部・ゴジャックにあるカメリアの研究拠点「オープンスカイ ラボラトリー」には、2000種を超えるカメリアが育てられています。その中には、かつてガブリエル・シャネル本人が自らオーダーし愛でたという伝説的なルーツをもつ品種も。絶滅が危惧されるような世界各地の希少な品種も保護しています。清浄な水や空気に恵まれた広大な環境で、化学物質を一切使わない厳正なオーガニック農法で長年にわたり栽培を行っています。
花が咲けば、蜂や鳥なども集まってきます。そういった多様な生態系をそのままに、持続可能な形で未来へと繋いでいく――100年以上にわたってカメリアを愛し、植物の美しさや効用を美へと昇華させてきたシャネルだからこその、贅沢で意義ある取り組みです。
その試みは、植物に秘められた未知なる力を探る道筋でもあります。なぜならば、激しい寒暖差や照りつける夏の日差しなど、ときに厳しい自然環境におかれたとき、植物は自らに秘めていた潜在的な力を発揮することがあるからです。
例えば、深紅のレッド カメリアは、その堂々とした佇いにふさわしくツァー(=皇帝という意味)と呼ばれています。この花は、凍てつくような氷点下でも、強い生命力を感じさせるみずみずしく肉厚な大輪の花を咲かせるのです。そこで「オープンスカイ ラボラトリー」の植物研究チームは、この品種だけがもつ特徴について専門的な解析を行いました。
その結果、抗酸化作用のあるポリフェノールの一種「プロトカテク酸」が、花びらの中に突出したレベルで含まれていることが判明したのです。また別の研究では、レッド カメリアは老化細胞をもたない花であることが明らかになっています。厳しい冬を越すごとに、老化するどころかますます美しい花を咲かせていく。その事実は、長年にわたり人間の肌や体の細胞老化(セネッセンス)の研究を推進しているスキンケア開発チームにとって、大きな一歩となるヒントとなりました。
大地が生み出す植物のパワーに敬意を払い、環境をより良く整えながら、その恵みを最高の形で引き出して美をクリエイションしていく――シャネルのコスメには、そんな贅沢な背景と、未来へと続く新しい可能性とが秘められているのです。
自然から授かる恵みを唯一無二の美容成分へ
オープンスカイ ラボラトリーのもうひとつの強みは、農園と研究所が同じ場所にあること。おかげで、より精密で質の高い化粧品成分の開発が、スピーディに実現されています。
たとえば農園に育つカメリアには季節のサイクルがあり、1年を通じて変化していきます。また、同じ花でも蕾のときと開花したてのときとでは、花の性質が異なってくることがあります。農園とラボが近いからこそ、きめ細かにその違いを研究することが可能です。花の生態や特徴をより深く理解し、美容成分の濃度が最も高くなる瞬間を捉えることができるのです。
また、摘みたての花や葉などをフレッシュなうちに抽出・精製して化粧品原料へと加工できるのも、農園とラボが一体化しているからこそのメリット。シャネルが長年をかけて進化させている抽出技術により、高純度に精製されたエキスが完成します。また、種子に含まれるオイルや、酵母を加えて発酵させたエキスなど、カメリアが生み出した自然の恵みを、余すことなく美容成分として利用しています。
『美的』2024年8月号掲載
写真提供/CHANEL 撮影/宗高聡子(静物) デザイン/荒川裕子 構成/もりたじゅんこ
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。