スキンケアニュース
2024.4.24

男性はなぜ筋トレとサウナを愛好するのか【中年男性、トキメキ美容沼へ vol.8】

こんにちは、ライターの伊藤聡と申します。私は男性のためのスキンケア本『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社)を出しました。みなさんは、スキンケアに興味がありますか。スキンケアという言葉から、どんなことをイメージしますか? こちらの連載では、スキンケアに親しんでいく上で役に立つかもしれないあれこれをテーマに書いていきます。トライしてみれば楽しくて奥が深い、スキンケアの世界を一緒に探求していきましょう。

男性は負荷をかけたがる

男性が身体をケアしようとするとき、まず浮かぶのがスポーツジムでのトレーニングであり、サウナだと思います。私自身、どちらも経験があるのですが(両方とも楽しくて好きです)、なぜトレーニングやサウナを選んだかといえば、「もっと健康になりたい」「やせたい」「しゅっとした感じになりたい」などと思い立った際、それ以外の選択肢が浮かんでこなかったためでした。単に、他の方法を知らなかったのです。しかしこれは、女性からするとややハードすぎる印象かもしれません。女性の場合、候補としてまず挙がる身体のケアは、整体やマッサージ、ピラティスやヨガ、エステ、入浴などかと思います。どれも、基本的には身体に優しいケアです。もちろん女性でもトレーニングやサウナを愛好する方はいますが、あくまで「多数ある選択肢のひとつ」として行っているのではないでしょうか。男性である私は、トレーニングとサウナ以外の方法を思いつきませんでした。私は、身体のケアをする際に男性がなぜかハードな選択をしがちなのか、やたらと身体に負荷をかける方向へいきがちなのか、不思議に思っていました。

理由を考えていて最初に気がついたのは、男性の体調にあまり波がないことです。ジムのトレーニングにしても、サウナにしても、体調が整っていなければ行うことができません。身体の調子が悪いときにトレーニングはできないでしょうし、生理中にサウナへは行けません。つまり、トレーニングやサウナを習慣として継続的に行うためには、普段から身体のコンディションにあまり好不調がないことが条件になります。男性である私は、さいわいにも体調にほとんど波がない状態が当たり前で、特に具合が悪いという日があるわけでもないし、ジムやサウナへ行けない日はあまりありません。一方、つねにコンディションの波がある女性にとって、トレーニングやサウナを続けるのはややハードルが高くなります。私はこうした差異に気づいていませんでした。定期的に生理があり、体調の波がある女性が、コンディションを保つために優しいケアを選ぶのは納得がいきます。性別によるこうした身体のケアに関する差異を、私はあまり考えずに来てしまっていました。試しに、いま「整体」でSNS検索してみたのですが、整体を利用した感想を投稿している男女の比率は、およそ男性2、女性8といったところでした。 

まるで修行のような身体のケア

思うに、男性には「身体とは負荷をかけて鍛え上げなくてはならず、忍耐の末に完成させるものだ」という認識があります。男性にとって、身体のケアはどこか修行のようです。いつこうした考え方が植えつけられるのかはわかりません。子どもの頃に読んだバトル漫画の描写でしょうか。あるいはアクション映画に出てくる筋骨隆々のスターの姿かもしれません。またアメリカの人気ラッパー、50セントは、ミュージックビデオで気合いの宙吊り腹筋を披露していましたが、私はそうしたカルチャーから「男性の身体の扱い方」を学んでしまった可能性があります。重そうなダンベルを持ち上げて「ウァーッ!」と声を上げたりしないと、身体はケアできない。こうなると、ケアというより鍛え上げるという方がニュアンス的には正しいかもしれません。もちろん、こうした努力がよい結果をもたらす状況もありますが、身体を優しくいたわるケアの方法に対して、どこか「軟弱だ」とさげすむ傾向もあります。身体のケアに勝ちも負けもないのですが、気がつくとよりハードな方向を選んでしまう、男性の「競争好き」という悪癖がここに現れてしまっているのかもしれません。 

そういえば私は洗顔をする際も、ごしごしとこすりつけるように洗ってしまっていて、摩擦を避けるように顔を洗うようになるまで時間がかかりました。頭ではわかっているのですが、「泡立てネットで作った柔らかい泡で、そっと洗顔する」のがどうしてもできず、気がつくと強くこすってしまっているのです。強くこすらないとやった気にならない、というのもありますが、おそらく自分の身体に対する気遣いがあまりないのでしょう。ジャッキー・チェンの映画に出てきた、すごく強い敵とたたかう前の地獄の特訓(ジャッキーが腹筋していると、師匠がお腹の上に座ってきたりします)が、男性にとっての身体との向かい方であると思い込んでしまっていました。何㎞も走ったり、腕立て伏せをしたりと、さまざまな艱難辛苦を乗り越えて身体をいじめ抜いてこそ、一人前のボディができあがるという考え方。それとはまた違った「身体をそっとていねいに扱う」という発想そのものが欠如していたことを、スキンケアを通して学んだ気がします。

自分にとってもっとも快適なケアへ

また私は肩がこりやすく、首のまわりが硬くごわつくような状態になるのですが、意識的にストレッチをするようになったのは、わりと最近のことでした。首のまわりや肩甲骨をストレッチでていねいにほぐすといったケアを知らず、こんないい方法があるなら教えてよ、と思ったのを覚えています。私は肩こりがひどくなると頭痛が起こるのですが、頭痛薬を飲んで強引におさめる、といった方法しか知りませんでした。肩甲骨をストレッチでほぐすのは本当に効果があって、いまでは完全に習慣になっていますが、思い出してみても、シュワルツェネッガーの映画にストレッチのシーンはなかった気がします。もしあれば、私ももっと早くストレッチをしていたかもしれません。

いまの私は、サウナやランニングなどのハード系と、ストレッチや入浴などの優しいケアをうまく織り交ぜて身体のお手入れをしています。サウナ室で肩甲骨をゆっくり伸ばすストレッチをすると、本当に気持ちいいんですよね。写真のKANEBOの化粧水「スキンハーモナイザー」は、サウナ後の肌につけるのにぴったりな、しっとりとしたつけ心地。今年出た製品なのですが、香りもよく、とても気に入っています。また、入浴後にボディーローションを使ったりするのもオススメです。松山油脂の「いよかんボディーローション」や「MARKS & WEB ハーバルボディー&ハンドローション」といったクリームは、気軽にすてきな香りを楽しめるアイテムです。香りというと香水以外を知らない男性は多いですが、ボディーローションは肌のうるおいを保ちつつ、就寝前に香りを楽しめます。比較的低価格なのも嬉しいところ。SHIGETAの「ボディー・マインド・スピリット」は、みぞおちに数滴つけて香りを楽しむエッセンシャル・オイル。身体のケアってこんな風にかんたんなことから始められるんだと感じられます。ランニングの際にお気に入りなのは、ナイキのランニングシューズ「ズームフライ5」。反発する靴底で、自分が速く走れるような錯覚がする、楽しい靴です。こうして考えてみると、身体のケアはいろいろな方法で可能だし、どれが正解というわけでもなく、自分の心地よいやり方を見つけるのがいちばんだという気がしてきました。50セントは、宙吊り腹筋のあいまに、ちょっとぜいたくな化粧水をつけたりするといいかもしれませんね。

伊藤 聡(いとう・そう)
会社員兼ライター。50代にして美容の楽しさに目覚める。著書に『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社刊)

イラスト/green K

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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