風吹ジュンさん「68歳の今がいちばん輝く生き方」|スペシャルインタビュー【美的GRAND】
包み込むような柔らかな笑顔、素敵な年齢の重ね方に、多くの女性が憧れる。飾らず、気取らず、年齢に抗わず、年齢を理由にしない。今の自分を知り、肌も髪も心も、無理をせず手をかける。風吹さんが教えてくれる、グラン世代が“その先”を自分らしく、美しく生きるヒント。
風吹ジュンさん
しばられず、軽やかに、機嫌良く。――68歳の今がいちばん輝く生き方。
そのロングヘアに見とれた。68歳という年齢を感じさせない地毛の豊かさと美しさ。
「髪も細くなったし、抜け毛も多いのよ」と穏やかに話す優しい笑顔は、シワがちゃんとありながらも肌艶が良く、どうしたらそんな風にいられるのかと、思わず聞いてしまった。
40代、消えない無気力感。ホルモンがゼロになっていた
「年相応に、シワもたるみも増えていきましたが、そういう当たり前の変化は気にしてこなかったんです。でも、下を向かないようには意識してきたかな。特に家事は下を向くことが多いでしょう? そのことに気づいてからは、口角を上げて笑顔で洗い物をしてみたり、意識して上を向くようにしていました(笑)」
そんな風吹さんの40代は、かなりのハードモードだった。仕事では、経験と実力を兼ね備えたベテラン俳優として、幅広い役で求められた。一方で、シングルマザーとなり、ふたりの子供を育てるために働いた。どんなに帰りが遅くても、翌朝はお弁当を作る。仕事、子育て、母親の介護で時間に追われ、毎日くたくただったが、苦ではなかった。
「守るものがあると強くなれるのは本当で、子供のために必死で働いていました。不安で孤独でもあったけれど、空が晴れれば気持ちも晴れる性格。今日つらくても、同じ日は来ないと考えて、目の前のことをクリアしていく感じでした。つらい思いを誰かと共有することもなかったです。どうするかを決めるのは、結局は自分だと思っていましたから」
自分時間を楽しむ余裕もない中で、唯一の“逃げ場”はアロマオイル。香りに包まれるとリフレッシュできた。でも、それも徐々に効かなくなっていく。
50代で子育てがひと段落した頃、疲れが抜けないことに気づいた。撮影中も仮眠をとらないと体がもたない。睡眠をしっかりとっても、朝、起きられない。やる気が出ず、「仕事を辞めよう」という考えがよぎったとき、「おかしい」と感じた。「それまで、思うように演じられず悩むことはあっても、辞めたいと思ったことはなかったんです。前向きな性格だったのに、この思考の変化は何が原因なのだろうと、自分なりに調べ始めました」
その矢先、当時まだ珍しかったアンチエイジングクリニックが銀座に開業予定であることを知り、予約。果たして、52歳の風吹さんの診断結果は「ホルモンがない状態」。やる気に関係するテストステロン(男性ホルモン)はゼロだった。
“50代で頑張れなくなったことで自分の体と向き合い、エイジングケア=予防だと知った。
今の自分を知ってケアすれば、年齢は怖くない”
足りないものは足してあげるサプリは明日への保険
その後処方された、男性・女性ホルモンを作るDHEAや、コエンザイムQ10などのサプリメントをとり、同時に受けた遅延型フードアレルギーの検査で疲労の原因だとわかった食べ物――パイナップルや砂糖などは控えるようにしたところ、3か月後には慢性的な疲労や無気力感が消え、朝の目覚めが良くなった。いつもの前向きな性格も戻ってきた。
「私は自分の耐用年数を初めて自覚しました。人間の耐用年数は50年だと聞きますが、それを越えれば足りないものも出てくる。だったら、足してあげればいいんですよね。それまで、サプリメントは面倒なもの、アンチエイジングという言葉にはいいイメージがなかったんです。私は年齢に抗わずに生きたかったから。でも、エイジングケアの本当の意味は“予防”なんですよね。日焼けしないよう日傘を差したり、日焼け止めを塗るのと同じ。今の私にとってサプリは、明日の健康への保険のようなものなんです」
体力と気力が戻ると、行動も変わった。中国茶にハマると、中国の山間部まで茶葉を求めて旅し、時には農家の納屋で雑魚寝。水彩や料理を習い、60代で登山も始めた。67歳のとき、屈指の難易度を誇る北アルプスの劒岳に登頂し、周りを驚かせた。
「自分に試練を課せば、これからの70代はより充実できるかもしれないと挑戦したのですが、脊柱管狭窄症など年相応のガタも来ている私でも登れたことがうれしかったですね。自分の体との付き合い方を知り、また前を向けるようになったことで、60代になってから、それまで演じたことのないような役のオファーもいただくようになって。仕事も今また、とても充実しています」
適度な睡眠と筋肉が軽やかな自分を導く
今、週1回は「ジャイロトニック(R)」でエクササイズをし、買い物も、3〜4駅の距離ならスニーカーを履いて歩く。
「自由でいるために必要なのは、最終的には筋肉だと思うんです。筋肉がついていれば、その人なりの美しさも維持できるし、動けることは自由にもつながるから、無理のない範囲で体は鍛え続けたいですね。後は、疲れをため込まないこと。疲労こそが老化の原因でもあるので、疲れを引きずらない方法や、リラックスできる時間をもてるといいですよね。私は今、目覚めと眠りを大事にしています。寝る前に高濃度のビタミンCを飲むと、就寝中にダメージを修復してくれるようで、目覚めが爽快になりました」
何かに挑戦したくても、年齢を理由に諦めてしまうことは少なくない。でも風吹さんには、「何歳だから」という思いはない。いつだって、何かに縛られることなく、軽やかに、日々を生きる。
「年齢と共に、気力や性格だけでは解決できない不調や問題も出てきますが、加齢から逃げていては何も解決できないので、私は毎年の血液検査などからも今の自分を知るようにしています。私の場合はサプリメントが本来の自分を取り戻してくれましたが、何がいいかは人それぞれ。大事なのは、今の自分を知ることなのかなと思います」
健やかでいれば、自分を好きでいられる。それが、その人の美しさを導く。
「今、1日24時間じゃ足りないくらい、やりたいことだらけ(笑)。舞台にもまた挑戦したいし、山にも登りたい。まだ行っていない国も旅したい。そんな自分を面白がっています。人生は、元気で楽しん方が得!いたわりながら、今の自分を一生懸命生きたいですね」
PROFILE
ふぶき・じゅん/1952年富山県生まれ。デイヴィッド・ハミルトン撮影の写真などで注目を集め、’75年にドラマ『寺内貫太郎一家2』で女優デビュー。映画『無能の人』『魂萌え!』をはじめ、ドラマ、舞台などに幅広く出演。近年の主な出演作に、映画『海街diary』『浅田家!』、ドラマ『やすらぎの刻〜道』など。出演映画『Arc アーク』が6月25日に公開予定。
『美的GRAND』2021春号掲載
撮影/竹内裕二(BALLPARK) ヘア&メイク/長井かおり スタイリスト/岡本純子 構成/松田亜子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。