夢中になれるものがないなら…漫画『ブルーピリオド』とスパセイロンの元気になる香り！連載・薬剤師津田マリエの“効く”漫画＆コスメの処方箋

美的世代の女子は、恋に仕事にプライベートに、悩みやストレスと常に隣り合わせ。そんな沈んだ心をものの20〜30分で、スッと軽くくれる漫画をご紹介。この連載は、年間300本以上の作品を読む、薬剤師の津田マリエさんが、悩みや症状に合わせて“心が元気になる漫画とコスメ”を毎回処方。読んで、試して、心も見た目も引き上げちゃいましょう！

(C)山口つばさ／講談社

何か始めたくなる！エネルギーをグイグイ押し出してくれる漫画

「時間を忘れるほど『何か夢中になれるもの』に出会ったことがない…という人は、割と多いのではないでしょうか。実際に、この漫画に出てくる主人公もそうでした。でも、ある日突然、恋に落ちるように出会って落ちてしまった時、あなたならどうしますか？そんな時にぜひ読んで、心を後押ししてくれるのがこの漫画。もう、読み出したら、何か始めたくてウズウズしちゃうこと間違いなし！ 1巻から心が上がりまくります。ちなみにブルーピリオドでは色んな絵が出てくるのですが、それがとてもリアルで作品の説得力をあげているのでそこもお見逃しなく。通常このような漫画では全て同じ作者さんが書くのですが、実際に美大に通っている学生さんや他の人が描いた絵をそのまま使っているそうなので、よりリアリティーが増しています」

処方箋No.9

・こんな症状におすすめ
なんでも器用にこなせるけれど「夢中になれるもの」がない。好きなことを仕事にしたいと考えている。

・処方マンガ
「ブルーピリオド」山口つばさ（講談社）

・薬効
何か新しいことを始めたくなる！好きなことで生きていく勇気をもらえる。

・副作用

「これ！」と、打ち込めるものが欲しくなる。好きなことを仕事にする辛さを垣間見てしまう。

・何巻まで処方
まずは2巻まで。通常、作品にハマるまで2〜3巻かかるものなのですが、1巻からものすごい吸収力を発揮！ 1巻のみでも魅力が伝わる稀な作品です。そんな中、2巻までおすすめしている理由は、2巻に登場する「主人公が親を説得するシーン」にあり。これは本当に感動するので必見です！！

・あらすじ
不良グループに属しながらも、成績優秀な高校生・谷口八虎（やぐちやとら）。遊びも勉強も手を抜かずやってきたのに、何一つ実感が得られない毎日を過ごす中、ある日一枚の絵に心を奪われる…。その衝撃は八虎を駆り立て、美術の授業課題で「友人たちと朝帰りした時に見た『渋谷の青い空』」を一心不乱で描きあげる。完成した絵を見た友人に「八虎にはこんなふーに見えていたんだ」と言われ、自分の見たものが人に伝わった時の感動を覚え、絵を描くことに目覚める。そんな八虎が目指すのは、合格倍率200倍！ある意味、東大よりも難しいと言われる日本一の美術大学に入学すること。美術のうんちく満載！話題のアート系スポ根漫画です。

心にささる！元気になるPOINT

世間的な価値ではなく、自分にとって価値のあるもの

「美大を目指す漫画は、大人しい感じの印象を受ける作品が多いのですが…。ブルーピリオドは、美術の説明部分が見やすいレイアウトになっていて、セリフにもスポ根系のアツさがあり、とにかく読みやすい！　自分の得意なことではなく『好きなことで挑戦すること』を決めた八虎ですが、それ故に苦悩や葛藤があります。夢中になれることがあるという幸せと、それを仕事や進路にするということの辛さは紙一重。それでも目標に向かって頑張っている姿は『自分が決めた道なのに、得意じゃない・好きじゃないからと、言い訳してないか？』と考えさせられます」

だったら、天才と見分けがつかなくなるまでやればいい

「八虎は美大受験のため予備校に通うことになりますが、そこにいたのは、同じ歳の天才達。周りの天才と比べたら、自分なんて…と思う八虎ですが、同級生の龍二から『悔しいと思えるならまだ戦えるね』と言われ我に返ります。さらに、ライバルをみて『多分コイツは天才だ。そして俺はやっぱりただの人だ。特別じゃない。天才にもなれない。やった分しか上手くならない。だったら天才と見分けがつかなくなるまでやればいい』と感じるシーンは、八虎の努力家で負けず嫌いが分かる名台詞。自分よりもすごい人が現れた時に、いいなーと思って終わるのではなく、『その人に近づける、追い越せるような努力をする』心意気が、何か成し得ることに繋がると深く感じさせてくれます」

好きなことをやるって、いつでも楽しいって意味じゃないよ

「絵の教室には通っていいから普通の大学に行って欲しいという母親に、『就職率がいい』や『教員免許がとれる』とか、聞こえの良い理由を並べ、説得を試みるも失敗してしまう八虎。そこで、母が台所に立つ後ろ姿を描いた一枚の絵を渡す。熱いお湯で食器を洗うから手がささくれてるとか、買い物の荷物は重いから意外と腕に筋肉がついてるとか…。絵を書いてるうちに気がつき、『絵を書いていなかったら、こんなことにも気づけなかった。ごめんね』というシーンは、本当に泣けるんですよ！相手を納得させるために、都合のいい言葉を並べるのは簡単だけど、それで人の心は動かせない。なぜそう思ったのか、なぜそうしたいのか、自分の意思で『心から伝えた言葉は、人の心を動かし、感動させる』と勉強になりました」