「楽しい時間をたくさん抱えて生きていきましょう」｜浅野ゆう子連載最終回

今年、デビュー50年を迎えた俳優・浅野ゆう子さん。「今がいちばん自分らしい」と語る浅野さんが、50年を振り返りながら、美しく輝くヒントを教えてくれます。

【連載#09】心の中だけは“有頂天”で！

ジャケット￥652,300、シャツ［参考商品］、パンツ￥207,900、シューズ￥236,500（ブルネロクチネリジャパン〈ブルネロクチネリ〉）　ピアス￥66,000、ブレスレット￥92,400、リング［右］￥56,100、リング［左］￥48,400（ジョージジェンセンジャパン〈ジョージジェンセン〉）

40〜50代は、不安を抱えることが多い時期でした。保証のない仕事、体力や精神面、見た目的な衰えを実感して怖くなったり。

でも、「女は50歳からよ」という故・野際陽子さんの言葉をはじめ、その都度、周りからの言葉に助けられました。その度に生まれる根拠なき自信（！）と、いいことだけを信じてきた性格のおかげで、つらく、理不尽な思いも乗り越えてこられたように思います。

でもね、自信に根拠なんてなくてもいいんです。その代わり、自分のことは信じてあげてほしい。そう思います。デビューから50年を迎えたとき、「私、大したもんだな」と感じました。それは皆さんがそう言ってくださったから。

自分では照れくさくて「50周年なんです」と言い出せなかったのですが、周りからの温かい言葉に、50年という数字はとても大切なものだったと気づかされました。…と、大人な感じで話していますが、正直、心の中では有頂天でした（笑）。

『美的』での連載も幸せでした。毎号、皆さんの美への前向きなパワーを感じ、いただくコメントから教えていただくことも多く、また成長することができたように感じます。

コスメは、最初はプチプラのような手の届くところから始めて、だんだんとハイブランドも取り入れていったりと試行錯誤する中で、心地いいお手入れや似合うメイクが見つかっていきますよね。それは仕事も人生も同じ。メイクを試すように、人生だってトライ＆エラーを繰り返しながら、階段を一段、頑張ってもう一段、と思いながら上がっていくと、見たことのない景色が見えてくる気がします。

信念を貫く生き方はとても素敵ですが、選択肢が多い時代にはそれが見えなくて、悩むことも多いと思います。進むべき道が見えなくて悩んでいるのなら、人生も可能性もひとつに決めすぎず、いろんなことにチャレンジしてみると、思ってもみなかったところで何かが広がっていくことがあると思います。すぐに結果につながらなくても、待っていればいつか、やって良かったと思う日が来たり、自信につながることも。

だけど一方で、我慢をしすぎなくてもいいと思うんです。飛躍するための助走としての我慢も大切ですが、我慢が当たり前になると、いつしかそれが諦めになってしまうことも。そうならないように、どんな状況でも自分の思いや言葉はしっかりともち、ここぞというときには意思表示をする勇気をもてる大人になりたい。私はそう思って生きてきました。

松任谷由実さんや大地真央さんなど、年齢を重ねるごとにますます輝いていらっしゃる先輩方みたいにカッコよく生きられるかはわからないけれど、これからも新しいことに挑戦していきたいものです。やっていることは今までの繰り返しのように見えても、私の中で新鮮に感じることは常に新しい経験。その先に、新たな自分に出会えるのでは…と楽しみです。これからも、楽しいと思える時間をたくさん抱えて生きていきましょう！

結論を急ぎすぎず、心の中では自分自身に有頂天で楽しくいられるように。それがキレイに、健康に、充実した人生に導いてくれると信じて。連載ありがとうございました。