内田有紀さん「ベストビューティウーマン」2024スペシャルインタビュー|美的GRAND
「ずっと変わらない」「20代よりも若い!」。バラエティ番組や始球式など、素顔で出演すると必ずそう称(たた)えられる。シワも肌艶も、飾らない表情も、いつもナチュラルで美しい。でもそれは、決して奇跡じゃない。グラン世代のベスト・ビューティ・ウーマン。心から笑って生きていこうと思わせてくれる人。
内田有紀 -積もる、清福。
内田さんはひと息つくと、みそ汁を作る。幼い頃、祖父母が作ってくれた具だくさんのみそ汁はソウルフードでもある。「今は赤だしみそ汁で、必ず入れるのが豆腐となめこ。疲れた体を芯から癒してくれます。祖父母の愛情を1杯のおみそ汁から受けとっていた実感があるからかもしれません」
骨の髄まで感じながら演じた。今の自分だからこその芝居を
食は人と人とをつなぐということを感じていたからこそ、ドラマ『孤独のグルメ』に「いつか出演したい」と思っていた。念願かない、劇場版では人生に傷つきながらも前を向いて生きる女性を好演。「生きていると感じさせてくれるのが食で、それはときに心のモヤモヤを払ったり、誰かと出会わせてくれることも。そのことを優しく伝えてくださる物語が印象的で、(主演の)松重豊さんにお会いしたとき、『出たいです!』と手を上げていました(笑)。私が演じる志穂は悲しみを抱えながらも、自分らしく生きる道を模索しています。明るさの中の寂しさに共感してもらえたらと思いながら演じました」
’24年も、演じた役は深く印象に残った。同じ役を12年間演じ続けた人気ドラマ『ドクターX』は劇場版が公開され、代理出産と女性の貧困を描いたドラマ『燕は戻ってこない』では長い不妊治療の末、夫と代理出産を選択した妻の苦悩をリアルに演じ、「東京ドラマアウォード 2024」で助演女優賞を受賞。
「命を扱う作品で、実際に悩まれている方も多いテーマなので責任も感じました。血肉を注ぎ、骨の髄まで役を投影させないと演じられなかった作品でした。撮影に入る前、不妊治療と向き合われている方のお話を聞いた中で、『子供ができないと夫が自分を嫌いになるのでは』と涙する女性のお話は心に深く響き、今も思い返すと涙があふれてきます。いつも以上に覚悟を必要とする役でしたが、今の私にしか演じられない役だと感じました。今より若くても、また年齢を重ねていても、より責任に押しつぶされてしまう気がして挑戦させていただきました。とても重く、繊細なテーマですが、世の中の理解が少しでも深まるきっかけになったらうれしいです。年々、役の重みは増していますが、いただいた役をしっかりと生きていく中で、演じながら学び、成長させていただけるありがたい仕事だなと、改めて感じています」
年齢から来る不調もオープンに。これが今の私だと笑い飛ばしていきたい
プルオーバーニット¥69,300、スカート¥162,800(イザ〈ヌメロ ヴェントゥーノ〉) ピアス[右耳]¥66,000、イヤーカフ[右耳]¥33,000、ピアス[左耳]¥84,700、イヤーカフ[左耳]¥50,600、リング[上]¥88,000、リング[下]¥189,200(ヒロタカ 表参道ヒルズ〈ヒロタカ〉)
若い頃に戻りたいと思ったことはない。常に今が最良でありたい
ジャケット¥152,900、パンツ¥97,900(コロネット〈フォルテ フォルテ〉) 二重巻きにしたネックレス¥149,600、チェーンネックレス¥891,000、ピアス[右耳]¥124,300、ピアス[左耳]¥96,800、イヤーカフ[左耳]¥71,500、リング[右手]¥75,900、リング[左手]¥78,100、バングル¥96,800(ヒロタカ 表参道ヒルズ〈ヒロタカ〉) インナー/スタイリスト私物
年齢と共に役幅はますます広がり、仕事で幅広い世代と関わる中で、「笑顔で伝える」ことを心掛けている。
悩みすぎると顔が疲れていく。人生は、笑うが勝ち!
「緊張感をもたれたり、なにげない一言でも強く感じさせてしまうことも多い年代に入ってきたと思います。でも自分では気づきにくいので、身近な人に私自身を注意してもらうようにお願いしているんです。お話をするときは笑顔を忘れないようにしたいもの。先日、『人には、愛する子供に話すように接する』という知人の話に納得しました。そうすれば、ありがとうもごめんなさいも素直に言えそうですよね。そのためにも普段からおおらかなマインドで生きようと心掛けています。急にいい人になろうとしてもとり繕えないですし(笑)、行動は習慣になるといいますから。別れが増える年代になり、共に過ごせる時間は思っているよりも少ないことを実感すると、人間関係でカッコつけたり、意地を張ったりする時間はもったいないので、素直に言葉を交わしたい。それが最近のテーマです」「もったいない」という考えは美容や健康面にも生かされている。内田さんは「悩みすぎること」をやめた。きっかけは、苦悩するシーンを演じた後の顔が疲弊していることに気づいたことだった。
「悩みすぎてプライベートまで疲れた顔になるのはもったいないですよね。考えることは大切ですが、必要以上に思い悩みがちなマインドを手放しました。そうして笑顔でいられれば、おのずと表情筋も鍛えられる気がして。私、気を抜いてスマホを見ているときは、『うわ!』と思うくらいすごい顔なんです(笑)。意識しないと緩むので下まぶたを上げるエクササイズをしたりと、普段から顔を上げるくせをつけようとしています」
3年前のインタビューで話してくれた朝のスムージー、頭皮マッサージ、隙間時間でのトレーニングも継続。撮影中、ノースリーブから見事な上腕二頭筋がのぞいたときは「やりすぎていますね」と照れた内田さん。若々しく見える一方で、49歳という年齢を実感してもいる。ホルモンバランスの変化から、頭痛や急な発汗に悩まされることも増えた。「予期せぬ不調が増え、このままずっと具合が悪い人になるのだろうかと焦りましたが、私は調子が悪いと過剰に思いすぎ、安心したいあまり、納得できる体調不良の理由を無意識に探しているような気がしたんです。それをいったんやめ、慌てず、日々の体の声を聞くようにして、更年期の症状もオープンにしています」
例えば番組収録前、スタイリストには「汗をかきやすいです」と伝え、スタジオ入りするときは「ハンカチをもっていてもいいですか」と相談しているそう。「その一言を伝えられると安心するのか、汗も出なかったりするんです。迷惑をかけてはいけないと我慢する程、良くない方向にいくのなら、恥を忍んで伝えていこうと。年齢と共に変化する体調やメンタルも、これが今の私だと笑い飛ばしていきたいですね。人生、笑うが勝ちだと思うから。ひとりで抱えず、オープンにすることもグラン世代には大事かもしれませんし、そういう人の方が、見ていて素敵だなと思うんです」
アイラインが楽しい。過去ではなく、今を生きる
この日、ほぼ素肌に近い状態でカメラの前に立った。昨年表紙に登場してくれたときよりもすっぴんに近い肌は、シワがありながらも艶やかな光を放つ。プライベートのメイクでは、最近、アイラインを入れるようになった。「目元も重力に逆らえなくなってきたようで、『眠たい?』と聞かれることが増えまして(笑)。ぼやけてきた目元をカバーするため、アイラインをポイントで太めに入れています。目尻ははね上げず、目に沿って自然に短めに入れるだけでも目元が光を受けて華やかに見えるんです。その分、リップは抑えめに。インタビューなどでお話をするときは邪魔にならないように控えめな色を選びます」
「10年後もこんな感じでいられたらいいんじゃない?」。知人にそう言われたことがある。当時35歳だった内田さんは美容に無頓着だったが、その一言に「このままだと老けるよ」と言われているようで「ガツンと来た」そう。「そのとき初めて、素敵に年齢を重ねていくにはどうすればいいのだろうと考え、肌やメンタルのケアを始めました。今回、ベスト・ビューティ・ウーマンという素敵な賞をいただけたことは、あのときから積み重ねてきたことへのご褒美のようで、これからの人生への励みになります。美容は気づいたときが始めどきだと思います」
「奇跡の49歳」といわれるけれど、内田さんの美しさは決して奇跡ではない。「仕事も肌も、努力を怠るとそのまま結果として現れるから、コツコツを長く続けたいと思っています。見た目や体調の変化に不安を覚えることもありますが、若い頃の自分に戻りたいと思ったことはありません。私は過去ではなく今を生きていますし、常に今が最良でありたいと思って生きたい。現実は違っても、そう思う自分は輝くはずだと信じているんです。年齢を重ねることは自分を知り、豊かに、幸せになること。至らない自分を受け入れながら、ゆっくりと歩んでいきたいですね」
INFORMATION
映画『劇場版ドクターX』
フリーの天才外科医・大門未知子のルーツが明かされる中、彼女は史上最大の危機に直面し、“悪魔のオペ”に挑む――。
誕生から12年、人気ドラマシリーズの完結編。監督:田村直己 出演:米倉涼子、田中 圭、内田有紀、遠藤憲一、岸部一徳、西田敏行ほか
公開中
映画『劇映画 孤独のグルメ』
商談で訪れた先での食を楽しみにしている貿易商の井之頭五郎が、かつての恋人の娘からの依頼で、とあるスープのレシピを探し、世界を奔走――。
人気ドラマの映画版。監督・主演:松重 豊 出演:内田有紀、磯村勇斗、杏、オダギリジョーほか
’25年1月10日公開
ワンピース¥101,200(エスケーシー〈メイメイジェイ〉) ピアス各¥68,200(片耳価格)、イヤーカフ[右耳]¥84,700、イヤーカフ[左耳]¥69,300、リング¥180,400、バングル¥96,800(ヒロタカ 表参道ヒルズ〈ヒロタカ〉) シューズ¥82,500(アマン〈ペリーコ〉
PROFILE
うちだ・ゆき/1975年東京都生まれ。1992年に俳優デビュー。映画『花より男子』などに主演し注目を集める。主な出演作にドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』シリーズ、NHK連続テレビ小説『まんぷく』、ドラマ『最後から二番目の恋』、連続ドラマW『フィクサー』シリーズなど。『新美の巨人たち』(テレビ東京系、毎週土曜22時〜)に不定期で出演。’24年のドラマ『燕は戻ってこない』で「東京ドラマアウォード 2024」の助演女優賞を受賞。
『美的GRAND』2025冬号掲載
撮影/生田昌士(hannah) ヘア&メイク/板倉タクマ(nude.)スタイリスト/藤井享子 構成/松田亜子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。