坂口健太郎さん「人との距離感の“材質”を考えています」│映画『 サイド バイ サイド 隣にいる人』スペシャルインタビュー
俳優・坂口健太郎さんに役を演じるなかで思ったこと、考えたことについてお話を伺いました。
香るように演じた役で、人との距離感の“材質”を考えています
不思議な映画だった。“誰かの想い”が見え、その力で周囲を癒す。今作で坂口さんが演じた青年・未山は、人であり、人でないような存在だった。
「未山は周囲の感情を具現化した人だと感じていました。監督に、『ちゃんと存在しているけれど、存在を消したい』と言われて戸惑いましたが(笑)、視覚より記憶に残る、香りのような感覚で演じていました」
濃い自然の緑、風や雨の音。五感を揺り起こすような美しい風景の中を歩く未山は、坂口さんの柔らかな雰囲気と相まって、不思議な世界観に引き込まれる。
「多くを語らず、余白を作ることで、見てくださる方に委ねる作品だと思います。未山へもいろんな解釈があると思いますが、きっと、どれも正解。それがこの映画の面白いところです。僕だったら…人の思いがわかるのは嫌です(笑)。僕は相手の思いを近い部分で察知することはできている気がしていて、潤滑油的な立場に回ることが多かったんです。人当たりの良さは八方美人と言われるかもしれませんが、悪いことではなくて、楽しく理解し合えるならその方がいいと思うんです。一方で、物事を背負いすぎず、不要なものは捨てる強さもあって。冷静さも優しくあるためには必要なのかなと、未山を演じて思いました」
淡々と紡がれる映画は、誰かのそばにどういるかについて考えさせられる。
「この映画は人との心の距離感の話で、その距離感は“材質”が大事な気がしています。学生時代の仲間は1年に1回しか会えなくても、会えばすぐ当時に戻れる、上質なゴムノキみたいな感じで。バラバラの砂鉄がすっと磁石に集まる感じとか、熱いとやけどするけれど、冷えるととことん冷たい鉄とか、自分は相手との距離感をどんな材質で作っていくのかを考えた作品でした」
これまで、あまり泣いたことがなかった。芝居以外で、人前で涙を流したことも。それが最近、「涙もろくなった」と言う。
「大切な友人が祝いの席で感謝の言葉を述べていたときや、大河ドラマでのクランクアップで先輩方が感極まっているのを見ると、ぐっと来て涙が出るんです。僕は人の感情が動くことに感動し、その瞬間を美しく感じるのだなと、改めて感じています」
It’s my it!
スキンケアを反省中!?
頭も顔もシャンプーで洗いそうな勢いで、かろうじて化粧水をつけている程度。お手入れしないとですよね…。
袋麺をスプーンで
スープなしで焼きそば風にして、小さなスプーンに巻いて食べる。ちょっとずつ食べられるのがよくて、ハマっています(笑)。
PROFILE
さかぐち・けんたろう/1991年東京都生まれ。2014年にデビュー。主な出演作に、映画『ヘルドッグス』、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、ドラマ『競争の番人』など。主演ドラマ『Dr.チョコレート』(日本テレビ系)が4月22日よりスタート。
【Movie】『 サイド バイ サイド 隣にいる人』
そこにいない“誰かの想い”が見える青年・未山は、その力で周囲を癒し、恋人とその娘と暮らしている。ある日、謎の男・草鹿の強い思いが見え始めたことから、
かつての恋人・莉子と再会を果たし、自らの過去と向き合う…。
監督・脚本:伊藤ちひろ 出演:坂口健太郎、齋藤飛鳥、市川実日子、浅香航大ほか 公開中
(C)2023『サイド バイ サイド』製作委員会
『美的』2023年6月号掲載
撮影/杉江拓哉(TRON) ヘア&メイク/廣瀬瑠美 スタイリスト/壽村太一 構成/松田亜子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。