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2017.5.23

【齋藤 薫さん連載 vol.62】誰をも魅了する〝妖精白肌美〞とは――

欧米の若手人気女優に共通するのは、透けるような白い肌=妖精白肌の持ち主であるということ。まるでおとぎ話の中に出てくるような非現実的であるお姫様系な彼女らは、男性だけでなく私達女性も憧れてしまいます。そんな妖精白肌が持つマジックを薫さんが分析します。

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ただの白肌じゃない
妖精白肌の時代がやってきた!

70年代は「太陽に愛されよう」のCMコピーのもと、資生堂が日焼けを推奨するなど、日本でも日焼け肌が1つの揺るがぬトレンドとなっていた。〝サーファー〞を遊ぶファッションが一世を風靡し、生足でピンヒールを履く洗練されたゴージャスマダムはみな肌が褐色で、流れは完全に日焼け肌にあり、だから〝白肌〞は反対に、野暮のレッテルを貼られてしまっていたほど。

そもそもこれは欧米から来た価値観で、肌が美しい褐色であることは、飽きるほど長いバカンスを南の島で過ごすような贅沢な暮らしの証であり、言うならば豊かさと享楽的な幸せを謳おう歌か できる立場であることを誇るためのアクセサリーでもあったのだ。
 
少なくとも、白人たちにとって白い肌は憧れでも何でもなく、ある意味、退屈な暮らしの証拠だったりしたから、ファッション的には何の魅力もなかった。逆に日焼け肌はクールでゴージャス。そういう意識が日本にも上陸して、日焼け肌の流行とともに、白い肌に憧れることそのものが、何だか野暮なイメージを持ち始めたのである。例えば、ファンデーションを選ぶとき、自分の肌色よりも白い色を買おうとすること自体がダサい、みたいな。ともかく、「焼けた肌こそ、ステイタス」と言う価値観が結構長い間生き続けていたのである。

でも近年、欧米でもさすがにそうした美意識は完全に消えつつある。むしろ、白人だから持てる〝抜けるように白い肌〞こそ美しいと言う発想に変わってきているのだ。気づいていただろうか。今、欧米の若い人気女優たちはみんなとんでもなく白い肌を誇っている。クロエ・モレッツ、エル・ファニング、クリスティン・スチュワート、リリー・コリンズ。そして今最も話題の、シャネルの新しいミューズ、リリー=ローズ・デップも、今目を引く人はみんな抜けるように肌が白い。だからこれ今、〝妖精白肌の時代〞と定義付けたいのだ。

そう、彼女たちは皆、妖精のようだ。実際にエル・ファニングやクリスティン・スチュワート、リリー・コリンズは、白雪姫にシンデレラ、オーロラ姫を映画で演じていて、そういうおとぎ話の中の非現実的な美女こそが、今美しさの頂点にいることを決定づけている。

つまり単純な白肌ではなく、おとぎ話のお姫様がお手本という、とてもファンタジックな白肌トレンドが来ていると考えてもいいと思うのだ。思えば、マリー・アントワネットの時代も、貴族たちにとって白肌は絶対の憧れで、だから白いパウダーをふんだんに肌にたたき込み、金髪をうずたかく積んだカツラにまで白い粉をふりかけていた。ひとえに、〝自分が白くある事自体がステータス〞だったことを物語るが、言うまでもなくこれはクラスの証明。肌が、体が、白くあるほど、生まれも育ちも良く、家柄もより良いと言う意味合いを持っていたからに他ならないのだ。

だから、おとぎ話の中のお姫様が、信じられないほど白い肌を持っているのは当然のこと。今や、家柄の良さ以上に、1つ次元が上の女を、その妖精白肌が意味しているのだ。ともかく昔のゴージャスな褐色肌が、豊かさを示したのと同じように、今、ファンタジックな白肌が、美しく愛らしく、そして高そうな女のイメージを宿している。これから美白をするならば、その辺を念頭に置いて、ただならぬ白肌、抜けるように白い、妖精ファンタジーなお姫様肌を作って欲しい。不穏な世の中だからこそ、女達は夢のような美しさを求め始めたのだ。

妖精白肌に、男たちが人生を捧げたいと
思うほど強く惹かれるのは、もう〝地球の摂理〞

妖精系の美しさ、妖精白肌が今最大の憧れとなっているのは、日本も一緒。例えば今、あのユニクロのブラのCM、とても気になるはず。まさしくそこに、典型的な妖精美が見られるからなのだ。

そもそも篠原涼子のブラのCM同様、有名女優やタレントが谷間を見せるのは、それ自体が強烈なインパクトを放ち、私たちの目を釘付けにするが、これに加えて、ユニクロに見る佐々木希の背中やデコルテは、まさにその妖精のような肌色からも目を離せないと言う現象を生んでいる。白い、でも白いだけじゃない、ロウのようななめらかな高貴さとゴムまりのようなフレッシュな柔らかさ、上からパウダーをかけたような、ふんわりしたキメ細かさを併せ持つ肌が……。

まさしく最近のファンタジー映画における、お姫様のちょっと非現実的な白肌。これぞ妖精美を具体的に伝える肌と言っていい。肌だけで人をうっとりさせる、そういう力を持った肌と言ってもいい。

そう、美しい肌には不思議な力がある。本当に計り知れないほどの。とりわけ白肌は、その力が強いことも知っているはず。「色の白いは七難隠す」という諺を改めて繙くと、その根拠が見えてくるのだ。

この言葉のルーツには様々な説があるが、七難は、やはり世界共通の〝7種類の災難〞から来ているのだろう。だから単純に、シミ、シワ、たるみ、ニキビ跡など、肌自体の欠点をカバーしてくれると言う意味では無い。むしろ人間が生きていく上での七大難問を指すと考えても良い。一説に、顔立ち、性格の問題、暮らし方の乱れ、老い、運の悪さ、色気のなさ、貧弱な印象という、生きていく上であまり望ましくない7つの負の要素を、人の白さが何割か緩和してくれると言われるのだ。白という色の絶対性で覆い隠したり、白の純粋無垢な表情や、強烈な清潔感で浄化したり、白だけが持つ強力なパワーで跳ね返したり。

でも妖精系の白肌にはさらなる霊的な力が働く。より神秘的で、けがれがない、なのに官能的で扇情的、だからとても近寄りがたい……そこまでのパワーを宿すのが妖精白肌なのだ。男たちがそこに本能で強烈に惹かれてしまうのは、もう地球の摂理。清らかなのに、なまめかしい……男にとってこれ以上の魅力はないのからなのだ。作為的ではなく、ありのままで人を惑わす、それが妖精なのだから。そして私たち女性も、そうした男たちの心の内を本能で感じ取るから、妖精美にはひれ伏すしかない。嫉妬する隙などないほど、圧倒的な憧れを持ってしまうのだ。だからこそ、妖精美は最強の美!

ちなみに、すったもんだの末に若い妻と破局したジョニー・デップは、本当に若い頃から妖精系美女ばかりを遍歴してきた。ウィノナ・ライダーに、ケイト・モス、ヴァネッサ・パラディに、アンバー・ハード……全員が妖精系と言っていいが、いつも同じタイプだけを求める軽薄さとは裏腹に、いずれの妖精とも結婚を考え、そのうち2人とは婚約して婚約破棄、1人は事実婚、1人は結婚して離婚と、常に相手を本気で愛し、一生を共にしようと考えた。

つまり男にとって妖精は行きずりの遊び相手じゃなく、ちゃんと運命を感じ、人生を捧げられる相手なのだ。この妖精と一緒なら、清らかな人生を生きられそうと思うから。かくして、いきなり一目惚れされ、結婚までしたいと思わせる、それが今、妖精系なのである。今年は残念ながら美白が例年ほど盛り上がってはいないが、そういう意味ではむしろ今こそ美白に本気を出すべきと思うのは、こうした妖精白肌こそ作り上げるべき時代だから。少なくとも今、これほど女を美しく、幸せにする肌は無い。だから何が何でも目指さなければ。

美容ジャーナリスト/エッセイスト
齋藤薫
女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)、『The コンプレッ クス 幸せもキレイも欲しい21人の女』(中公文庫)など多数。

美的6月号掲載
文/齋藤 薫 イラスト/緒方 環 デザイン/最上真千子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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