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2023.3.25

作家LiLyの対談連載「生きるセンス」スペシャルエッセイ

その時々で訪れる人生の岐路。女性として、妻として、母として、社会の中のひとりとして、どうにもこうにも答えがでない時、先輩たちからの生きるヒントが役立ちます。今回は今まで4人の先輩たちとの対談を基に、作家・LiLyが感じたことを総括する書下ろし特別エッセイです【作家LiLy対談連載「生きるセンス」 】

欲張りな連載である。

そもそも、この連載をはじめた私の動機が、「40歳」という年齢の重みに人生で初めてビビったことをきっかけに、憧れの先輩たちに40代以降の「生きるヒント」を授けてもらいに行く!というもの。

嗚呼、ほんとうに贅沢な連載(感謝!)。
そして私は、ほんとうに欲張りだ(苦笑)。

ただでさえ「憧れ」要素で満ちている素敵な先輩方に向かって「過去にあれをやっておけばよかった、などと後悔していることはありますか?」だなんて、大先輩たちの後悔さえも己の今後の参考にしようとしているのだから……。我ながら、欲が深過ぎて呆れる……(ごめんなさい!)でも、これは今に始まったことではなく、私の子供の頃からの習性であり習慣なのである。

自分自身をひとりのキャラクター/プレイヤーのように客観視しながら、机の上に「自分の人生」という大きな地図を広げ、さ、どう攻略していこうかな? と未来の計画を立てること。ワクワクするのだ、どんなゲームより。だって、ただのゲームとは背負っているリスクが違うもの。

これは「リアル人生ゲーム」。
傷つくのは、自分。
破滅するかもしれないのは、この人生。
ドキドキする、スリルがたまらん!!!

「趣味」:机の上で人生計画を練りながらワクワクすること(好奇心)
ヒリヒリしながら実際に経験をしに出かけること(行動力)。

そう、だからこれは、誰に教わったわけでもなく自ら始めた10歳からの習慣で、私はもう30年もこのリアル人生ゲームをプレイしていることになる。そう考えると、この連載は、私のライフワークの一本線上にストレートに沿った「仕事」と言える。
始めたばかりの頃は、もちろんただの「趣味」だった(小5だったので当たり前だけど)。
例えば:私の中学受験の動機は「恋愛」である。
十代の青春を送る自分に用意したかったのは、その「舞台」。


好きな人がいる学校に行きたかった、ということではなく、好きな人と出会い甘酸っぱい恋愛を謳歌するための「舞台」選びとして、の受験。これから自分が過ごす青春時代の「世界観」を重視した結果、公立よりも私立を選んだというわけだ。

思い返すと、やはり当時から自分より年上の人たちの背中を見て、自分はどうしたいかを考えるところがあったみたい。地元の中学生(ジャージとヘルメット着用のチャリ通)の後ろ姿を見て、当時の愛読書『りぼん』をベースに妄想していた恋愛シーンとの強烈な不一致を覚え、制服を着て電車で通う道を熱望。

――――それなのに、私は受験の面接にて、真顔でこう言ってのけた。

「将来はジャーナリストになりたいと考えているので言葉と物語に興味があります。中学では古文を学び、源氏物語を原文で読みたいです」。
このセリフは「嘘」ではないけれど、あえて発音はしなかった言葉の続きならもちろんある。「(もし、恋愛で忙しくならなければ)読む」……。( )内のホンネを発音しなかったので、私は無事合格。

我ながら、したたかな女児である。

生活面の段取りは壊滅的に悪いくせに、こういうところの要領だけはいい。が、「リアル人生ゲーム」にはいつだって、未来という未知なる領域を想像しながら立てるプランなので「計算ミス」はつきものだ。「大恋愛」と「大青春」の幕開けに胸をいっぱいに膨らませて挑んだ中学の入学式で、私は唖然となった。
「ホットな出会い」を第一モチベーションとして受験を頑張ったというのに(この学校に入るためにわざわざニューヨークから帰国までしたのに!)新入生をどこまで見渡してみても、そこには育ちが良さそうなコドモしかいなかった……。
「大誤算」である。十代の青春というものは、今世でたったの一度しかないのに!! 当時の私が恋愛対象として思い描いていた男子――早熟なオトナっぽい不良が集うのは、私立ではなくて公立のほうだったのだ! しまった! 舞台選びをミスった!と、愕然としたその瞬間からピタリと5年後、(また人生計画の地図をおっ広げて作戦を練りに練り直して5年が経った頃)私はフロリダの公立高校に転校(笑)。

―――が、しかし、次の青春の舞台となったフロリダは、ドキドキする、スリルがたまらん!!! なんて笑えないほどシビアな環境であった。

「自分の好奇心が怖い。行動力はもっと怖い。
いつか自分の好奇心と行動力に身を滅ぼされるかもしれない……」
当時15歳だった私は、フロリダから日本の私立高校にいる親友にこう手紙を書いて送っていたという。

まぁ、そんな恐怖すら感じるカルチャーショックから半年ほど経った頃には、フロリダのハードコアな公立スクールライフを完全に攻略し、最後のほうはカメレオンのような適応能力でアメリカ南部に骨の髄まで馴染み、そのまま次はL.Aの大学に行こうかと思っ
ていたのだが、またしても私は当時していた「恋愛」を理由に日本に帰国(笑)。

――――そこから作家になるまでの日々は、やはり目標からの「逆算」と光の速さでの「決断」と「行動」の連続で、詳しくは『TOKYO DREAM』という本にすべてを書いたので割愛するが、とにかく私は「運」さえも味方につけまくりながら、「仕事」「恋愛結婚」「子供」と人生の中で熱望していたものを次々と手に入れながら20代を猛ダッシュで駆け抜けた。が、30代に入って数年後に、「恋愛結婚」の中に入っていた「男女の永遠」という我が人生最大だったともいえる夢に大きく敗れることになる。

でもこれも、経験してみなければわからなかったこと。「恋愛結婚の継続」は「結婚生活の維持」以上に難しかった。離婚してから数年間は親としての罪悪感にのたうちまわりながらも、元夫と離婚後も結婚時と変わらず一緒に育児をする生活を成立させることに尽力。今は、夫婦(男女)としての縛りだけを解いた「家族」としての生活が安定している。ということで、「育児」を第一優先に「仕事」時々「恋愛」という多忙な日々を意外なくらい「謳歌」しはじめたら、アッ!!という間に30代が終わってしまった。

ヤバい、40代がクル!!

計画魔の私としたことが、「今を生きること」に初めて夢中になってしまっていて(つまりはとても幸せだったのだと思う)次のことを何も考えていなかったのだ…… !!

その時だ、<<ピピーッ!!>>
今まで聞いたことのない音が聞こえた。

ここまでの「成功体験」をベースに行動していたら、ここから先は「怪我」しそう。
生き方の「更新タイミング」のお知らせだ。

次回は第2話 「ピピーッ! 更新タイミングのお知らせです」

PROFILE
LiLy:作家。’81年生まれ。神奈川県出身。N.Y.、フロリダでの海外生活を経て上智大学卒。25歳でデビューして以来、女性心理と時代を鋭く描き出す作風に定評がある。著作多数。instagram @lilylilylilycom noteはこちら

文/LiLy イラスト/ito・megumi

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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