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2022.10.3

ゲスト・真矢ミキさん|作家LiLyの対談連載「生きるセンス」第2話「人生の本番、大人になるということ」

「年齢を重ねるということはどういうこと?」。楽しいことばかりではないし、かといってつらいことばかりでもない。人生の先輩に訊いてみました。「 私たちに生きるヒントを授けてください」と。40代からの人生が輝く"読むサプリ"。 3人目のゲストは、真矢ミキさんです。 【作家LiLy対談連載「生きるセンス」第3回ゲスト・真矢ミキさん 】

 

地に足がつくのが50代。だからこそ楽しい。

「もちろん、私もね」とミキさんが続けたその先が
早くも気になって、私は思わず前のめりの姿勢になっていた。

「人の年齢を知りたくなることはあるの。
ただ、それはあまりにも魅力的な方にお会いした時なんです」

魅力というものを全身で体現しているようなミキさんが、瞳をキラッキラさせてそう言った。

「自分より(年齢が)上の方でも下の方でも、そのとても素敵な(あなたの今の)年齢はどのくらいなのかしらって知りたくなるのです。
まさにリリィちゃんが松田美由紀さんとの対談で書いていたように、年齢というよりも“年号”として気になるのね。だから、もしよかったら教えていただけませんか?って年齢を私のほうから聞いてしまうこともあるんです」

自分の可能性を奪うような“年齢攻撃”がある一方で、
魅力的な相手だからこそ気になる“年号”としての年齢も。

「とてもよく分かります。この連載には、それこそ私が魅力で圧倒され続けている人生の先輩たちをお招きしているのですが、そこまで魅了されている方だと、今の年齢どころか、あの頃は何歳だったんだろうって、過去のその人の年号としての数字まで気になるんです。
たとえば、ミキさんがジュエリーの賞を40代、50代と連続で受賞された時のインタビューで、40代で受賞した時とはまた違う気持ちーーーより落ち着いた状態でとても光栄なことだと感じている、これからも磨いてまいりますーーーとおっしゃっていたことをずっと覚えていてーーー

ーーー40代と50代は、やっぱり違いますか? 」

「違うと思います。やっぱり、40代はまだまだ若くて調子にのっていた部分もあったなぁって、50代になって振り返ると思ったりもするんです。足がまだ少し浮いているようなところから、50代になってようやく地に足がついたような感覚があって」

「地に足がつく、50代」
ミキさんの言葉を、私は
思わず頭の中で繰り返した。

首も座らぬ赤ちゃんとしてこの世に生まれたところから、人間が初めて自力で立つことができるのは一歳前後だけれども、自分の人生の中にきちんと自分として立つまでにはそこから五十年かかるものなのかもしれない。言い換えれば、“地に足をつける”は、それくらい難しいこと。自分自身を、人生を、その輪郭だけであったとしてもきちんと捉えることができて初めて、立てるもの。

「この連載を始めた時、40代に入ることへの怖さを感じていた理由の一つには、人生の本番がついに幕をあける前の緊張感のようなものがありました。それこそ40代になって振り返る30代の私もずいぶんとまぁ調子にのっていて(笑)、このまま青春を引きずりまくってフワフワしていてはダメだ、人生の本番はここからだ、ちゃんとしなきゃ!って身が引き締まる気持ちだったというか……」
ミキさんは、「人生の本番って言い方、いいですなぁ〜」と笑ってから、「40歳という節目でいうと、私の場合は変わらざるを得ないタイミングでもあった」と続けた。
「というのも、私の40歳の誕生日に父が亡くなったんです。しかも、40代からの生き方という本を私への誕生日プレゼントとして用意してくれていて……」

40代からの生き方…。人生の本番…。大人になる、とはどういうことか…。
それこそ、成人年齢という設定こそあれど、コレをしたら大人、という具体的なものはこの世になく、いつまでが子供でいつからが大人であるという人生の境界線も、あるようでない。ただ、その中でも「両親にとっての子供」という立場で生きる世界線のひとつの終わりは、巨大な節目となるに違いない。

「本を用意してくれていたことからもわかるように、とても真面目な人でした。父もですし、母も。とても真面目。
勉強しろ、と言われたことはなかったけれど、教育にはとても熱心で。どうせ行くなら良い学校に、というタイプでもあって。
私は16歳で宝塚の道に行きましたけど、当時からずっと(自分は進まなかったほうの道が)気になってはいたんですよね。
と、いうのも最近、若い頃のボーイフレンドと再会するというテレビ番組があって。その企画を通して彼が十代の頃の私を振り返って話してくれていたんですけど、当時大学生だった彼に、大学ってどんなところ? というようなリサーチが凄かったみたいですから(笑)。あとは、本を貸してくれ、とか(笑)
今も私は学ぶことがとても好きで、真面目なところも両親譲りだとは思います。ただ、よく母は“普通が一番!”って言っていたんですね。そこだけは、ん?と思う自分がいて。(非凡な)才能や魅力に何よりも惹かれるようになったのは、もしかしたらその反動もあったかもしれません。
人の才能や魅力というものが、ほんとうに私は大好きなんです、何よりも」

両親や、自分が育った環境による影響を色濃く受け続けながら/受け継ぎながら、だけど時にはそこから脱皮もしながら、オリジナルな自分自身になっていく過程は、“50代でやっと地に足がつくようになる”ところにも繋がっていくのかもしれない。

「50代はねぇ、楽しいよ!! 」
竹がスコーンと割れるような爽快感を持って、ミキさんは言い切った。

>>>つづく

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PROFILE
真矢ミキ:’64生まれ。元宝塚歌劇団花組男役トップスター。退団後は、ドラマ、映画、舞台、情報番組のMCなど幅広い分野で活躍 。’23年NHK大河ドラマ『どうする家康』に大河初出演で、愛娘・瀬名の母で今川家の品格を守る気高き女性、巴役を演じる。

LiLy:作家。’81年生まれ。神奈川県出身。N.Y.とフロリダでの海外生活を経て上智大学卒。25歳でデビューして以来、女性心理と時代を鋭く描き出す作風に定評がある。小説、エッセイなど著作多数。instagram @lilylilylilycom noteはこちら

文/LiLy 撮影/竹内裕二(BALLPARK) ヘア&メイク/平笑美子(真矢さん)、伊藤有香(LiLyさん) スタイリング/佐々木敦子 レイアウト/Jupe design 構成/三井三奈子(本誌)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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