Adoが語る“美しい瞬間”「自分を好きでいなくていい」迷いと葛藤の先に見えたもの【インタビュー】
『うっせぇわ』で鮮烈なメジャーデビューを果たし、瞬く間に社会現象を巻き起こしたAdoさん。そんな彼女が、自らの半生を綴った物語を発表しました。幼少期の出来事、不登校になった学生時代、部屋の中で歌と向き合っていた日々、そして「歌い手」として一歩を踏み出した瞬間。迷いや葛藤を抱えながらも、どのような思いで駆け上がってきたのか。その軌跡を語ってもらいました。
夢は叶えるものではなく、つかむもの

『ビバリウム』配信中
——自伝的小説『ビバリウム Adoと私』では、夢を自分のものにしていく姿が描かれています。夢を叶えるために、意識していたことはありますか?
小さな頃から、周りと比べてもずいぶん夢見がちな子だったと思います。いわゆる夢見る少女のような感じでした。 けれど成長するにつれて、ただ願っているだけでは何も動かないのだと気づいて。苦しくても進むしかない、と思うようになりました。
進めば必ず結果がついてくるのかと言われたら、現実はそんなに単純ではないかもしれないけれど、 自分を信じて進むことだけはやめないようにしていました。 行動することで、夢は少しずつ手繰り寄せられるものだと思っています。
叶えるというより、つかむのほうが近い感覚かもしれません。 夢を見ることに年齢制限はない。 私なんかが偉そうに言うことではないかもしれませんが、夢を持っている方には、ぜひ一歩でも進んでみてほしいなと思います。
——本作を作るなかで、気づいたことはありますか?
この本は、作家の小松成美さんと何度も何度も対話を重ねて作っていきました。濃密な時間を過ごすなかで、学生時代の記憶が次々とよみがえってきました。当時は自分を守るために無視していた感情にも、改めて触れることができたのは大きかったです。 大人になってから改めて振り返る人生というものは、その節々で「Ado」も私自身も形成する大事な時間だったのかなと思います。
もし自分を嫌いでも責めないで

2025ライブツアー”Hibana” Photo by Viola Kam (V’z Twinkle)
——自分のことを好きになれないまま、日々を過ごしている方も多いと思います。本作で過去と向き合った今のAdoさんだからこそ、伝えられることはありますか?
正直に言うと、 自己愛がなくてもいいのかなと思っています。 最近は自己肯定感を上げようという言葉をよく耳にしますし、励ます楽曲もたくさんあります。私自身、そうした言葉や音楽に救われてきました。
でも、 自分のことを好きになれないからといって、それが間違いだとは思いません。 好きになれないけれど、好きになりたいと感じている。その感情に気づけるだけでも、自分をちゃんと見つめている証拠なのかなと思っています。
「ここだけは好きかも」と思える部分がひとつあれば、それで十分ですし、もし全部嫌いだと思っていても、自分を責める必要はないです。それもあなたの気持ちなので、大切にしてほしいです。もしその気持ちを少しでも変えたいと思えたなら、そのときは、私の音楽や言葉がそっと支えになれたら嬉しいですね。 何度も言いますが、誰もが自分を好きでいることが正解だとは、私は思っていません。

2025ライブツアー”Hibana” Photo by Viola Kam (V’z Twinkle)
——以前のAdoさんがそうだったように、閉じこもっている方がいるとしたら、どんな声をかけますか?
自分を好きでいることだけが正解ではないのと同じように、 無理をして外に出ることだけが正しいとも思いません。 目を背けたくなるものに立ち向かえる勇気があるならば、それは本当に素晴らしいこと。でも、誰もがいつもそんな強さを持ち合わせているわけではないですよね。
ただ、 もし心のどこかに小さな光のようなものがあって、「変わりたい」とかという気持ちが少しでもあるのなら。その光だけは、どうか消さないでほしい。 自分の中で思い描いている景色があるなら、外の光と重ねてみてほしいです。重ねてみたとき、思っているよりもきっときれいに見える瞬間があるはずです。
感情が動くことが美しさにつながる

2025ライブツアー”Hibana” Photo by Viola Kam (V’z Twinkle)
——『美的』では、外見だけでなく心のあり方や向き合い方も含めて「美」と捉えています。Adoさんはどんなときに「美」を感じますか?
たとえば水族館に行って、魚を見て「かわいい」と素直に思えたり、その感動を誰かに共有したいと感じたりする瞬間。 そうやって何かに心が動くこと自体が、美しいことなのではないかと思います。 「面白い」「感動した」といったポジティブな感情だけでなく、「つらい」「悲しい」「苦しい」と感じられることも含めて。 感受性がきちんと働いているということ、その揺れのようなものに美しさを感じます。
私自身は、最近はできるだけ物事を冷静に受け止めようと心がけていますが、もともとはかなり感情重視で動くタイプでした。それは長所でもあり、時には難しさにもなる部分だと思っています。
——Adoという名前の由来は、脇役という意味を持つ狂言の用語に由来するそうですね。ワールドツアーを成功させ、世界的な存在となった今も「主役を支える脇役でありたい」という意識に変化はありませんか?
はい、その気持ちに大きな変化はありません。むしろワールドツアーを経験したことで、より強くそう思うようになりました。 誰かの人生の脇役として存在し続けたい。 その思いは、以前よりもはっきりしています。
私の歌を聴いてくださる皆さんはもちろん、日々支えてくださるスタッフの方々、そしてたとえ私の歌を知らない方であっても、その人生のどこかで、ほんの少しでも支えになれたら嬉しい。そう願っています。
ステージに立ちながら、日本だけでなく、世界中の方々に楽しんでもらいたいと心から思えた瞬間が何度もありました。あの景色を見られたことは、本当に大きな経験でしたし、ワールドツアーをやってよかったと、今も強く感じています。これからも、主役を照らす脇役としてのスタンスは変わらずに、大切にしていきたいです。
Profile

Ado/23歳の歌い手。2020年に『うっせぇわ』でメジャーデビューを果たし、社会現象に。22年1月に発売した1stアルバム『狂言』や映画『ONE PIECE FILM RED』の楽曲を収録したアルバム『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』はランキングを席巻しロングヒット。2025年4月からは全33都市を回る日本人最⼤級規模の世界ツアーを開催し成功を収めた。11月には自身初の東阪ドームツアーを完遂。2026年7月には日産スタジアム公演を開催する。Instagram:@ado1024sweetpotet
『ビバリウム Adoと私』

Adoさん自ら語った半生をもとに、ベストセラー作家である小松成美さんが書き下ろした小説。
Ado/原作 小松成美/著
1,870円(KADOKAWA)
2026年2月18日(水) 配信『ビバリウム』

作詞・作曲:Ado
https://ado.lnk.to/vivarium_
Capitol Records / ユニバーサル ミュージック
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。