正門良規さん(Aぇ! group)の、「前のめり」に生きている日々。 恋愛観も語った舞台『十二夜』インタビュー

舞台『十二夜』は、主人公のヴァイオラが男装することから次々と起こる恋の勘違いや言葉遊びが時代を超えて人々を魅了し続ける、シェイクスピア喜劇の最高傑作。今回、性別にとらわれない自由なキャスティングでの舞台化で、正門良規さんが主演! 初シェイクスピア作品で、初の女性役への思いについて聞きました。
男の僕が女性を演じることで、おもしろさが増していく気がしています。声は地声で演じます(笑)
――舞台『十二夜』で、念願のシェイクスピア作品に初挑戦されます。オファーが来たときはどんなお気持ちでしたか?
演出家の森新太郎さんとは、主演した舞台『ヴィンセント・イン・ブリクストン』でご一緒したのですが、そのときに演劇愛や役者への愛情の深さを強く感じました。濃密な稽古時間も忘れられなくて、僕の中で舞台にもっと挑戦していきたいという思いに火がついた作品で、また森さんとご一緒したいと思っていました。
同時に、シェイクスピア作品についても、舞台を頑張るからには一度は挑戦してみたいと思っていました。みっちー(なにわ男子の道枝駿佑さん)の『Romeo and Juliet -ロミオとジュリエット-』も素敵でしたし、去年、『Touching the Void タッチング・ザ・ヴォイド〜虚空に触れて〜』という前衛的な作品に挑戦したことで、古典もちゃんとやってみたいという気持ちが大きくなっていて。
なので、もうやらない理由がなくて、ふたつ返事で「やります!」と(笑)。森さんにも「シェイクスピア作品と出会えるのはラッキーなことだよ」と言われたんですよ。そう言ってくださる方の元でシェイクスピア作品に挑戦できるなんて本当に贅沢だなと思うと、今からワクワクがとまりません。
――登場人物の片思いと男装から起こる勘違いもユニークな作品ですが、原作を読んでどんな印象を受けましたか?
出演が決まって初めて読んだのですが、とにかくてんやわんやだけれど、一見関係のない事件が全てつながっていくおもしろさはすごいです。思いっきり笑えるところも多いですし、貴族階級ならではのドラマティックな感じもあって。今の感覚でもめっちゃおもしろいんですよ。これが何百年も前に書かれた作品だなんて、本当にすごいなと思います。
それにシェイクスピア作品には子供から老人まで登場するし、それぞれがやっていることが本当におもしろくて、深いんですよね。どの年代が観ても楽しめるのもすごい。恋愛もので、喜劇で、シェイクスピア作品の入門編としても、もってこいの作品だと思いました。
――恋の三角関係を描く喜劇で、正門さんが演じる主人公のヴァイオラは女性でありながら、男装して意中の男性に近づきます。初シェイクスピア作品で、初の女性役ですね。
まさか女性を演じるとは思わなかったので驚きました(笑)。ヴァイオラは品も教養もあるデキるお嬢様ですが、若さゆえの天真爛漫さや、一度思いついたら突き進む勢いのある人物なので、演じるのがとても楽しいです。
今回は女性役ですが、だからといって、女性らしい所作などは今の稽古では特別意識していないんです。ドレスは着ますが、声も地声のまんまですし。あえて女性らしくしなくても、台詞をちゃんと言えればヴァイオラになれる気がしています。女性が言うと切なくなったり、苦しくなるような思いも、男の僕が言うことで笑えたり、恋愛喜劇が進んでいく部分もありますし、それこそが僕がヴァイオラを演じる意味でもあると思っているので、今作では女性らしさを追求することはそこまで考えなくてもいい気がしています。
舞台は、生きていることを感じられる場所。恋愛では、やっぱり嘘をついてはいけないと改めて思いました(笑)
――台詞量も多そうですよね。
それが課題です……(笑)。でも、これでもかというくらい知的で、美しい言葉にあふれていて、ロマンティックなんですよ。高尚で、美しい言葉だからこそ、普通の台詞がジョークになったり、よりおもしろさが増すんですよね。何より、新解釈ではない、古典作品の王道の台詞をそのまま言えることにもワクワクしていいます。時代が変わっても共通するときめきとか共感できる部分はすごくあるので、構えずに見てほしいです。
――猛烈に片思いをしているヴァイオラを通して、正門さん自身、恋愛で気づかされたことってありますか?
片思い中のヴァイオラの気持ちの動き、乙女心みたいなものはとてもチャーミングでユニークなので、僕も演じていて楽しいです。こういうところにときめくんだよな、ワクワクするよな、って共感できますし。観に来てくださる方には、シンプルにときめいてもらえたらうれしいですね。今作は嘘から始まる物語で、それがおもしろいのですが、リアルな恋愛に関しては……やっぱり嘘はつかないほうがいいなと思いました(笑)。
――「本当の自分は何か」ということも今作のテーマのひとつですが、正門さんが自分らしく生きるために心がけていることはありますか?
僕自身は何かを選択するとき、好きか嫌いか、という部分での直感的なものをかなり大事にしていました。これまではその直感のとおりにして正解だったと思うことが多かったのですが、一方で、尻込みするようなことでも挑戦してみたら楽しかったということもあるんですよね。予想もしなかったおもしろさがあったり、想像もしなかった景色が見えてくることもありますし。その醍醐味を知ってから、好きか嫌いかということはそこまで考えないようになりましたし、最近は割と前のめりに挑戦するようになってきたような気がしています。
――舞台作品のおもしろさはどんなところに感じますか?
ある意味、最もライブな感じがします。来てくださった方々のリアクションも毎日変わりますし、リアクションが早いというのは、僕自身ほっとできることでもあるんです。ドラマや映画と違って、お客さんを感じながら演じられますし、その日の僕の100%のうち何%を渡せるかという共同作業感も楽しいです。何より、僕自身が毎日、生きているなと感じるし、感じさせてもらっています。だから、舞台が好きなんだと思います。舞台に立たせていただくようになってから、ひとつひとつのお仕事にもこれまで以上に大切に向き合えるようになった気がします。
元気の素は納豆ご飯! 苦手なことにも挑戦すると、思いもよらない景色が見えてくるんです。
――公演中の体調管理やルーティンはありますか?
毎日納豆ご飯を食べること! これは舞台に関わらず毎日続けています。納豆ごはんは僕の元気の素です。あとは、諦めないこと。公演中は体調も環境もいろいろと変わることがありますが、それでも最後まで僕自身が楽しもうと思って臨んでいます。
それ以外は、ルーティンもゲン担ぎもやらなくなりました。かつては、毎日同じことを忠実にできるようにルーティンをもとうとしていたこともありましたが、舞台『染、色』に主演したとき、演出の瀬戸山美咲さんに「車庫入れを見せられても面白くない」と言われて衝撃を受けたんです。「お客さんが椅子の背もたれから背中を離すくらい巻き込んでいくのが演劇だ」と言われて、ガツンときました。同時に、舞台は生き物だし、毎日違うものになっていいんだって思えるようになって。今はむしろハプニングがあっても、その波にどう乗っていこうかとワクワクしています。
――正門さんが今、美しいと思うものはどんなことですか?
神社です。よく行く神社があって、「そろそろ行かないとな」と感じると行くんですよ。「今年も半年終わったな、そろそろ行こうかな」みたいな感じで。行くとやっぱり気持ちがいいし、境内の厳かな感じとか、神聖な空気感もすごく美しいなと思います。いつもオフの日の午前中に行くのですが、早い時間から行動するのも気持ちがいいんですよね。そこから家に帰ってゆっくりコーヒーを飲んだりする時間も、心に余白ができる感じで好きです。
肌に関しては、アベンヌのイメージキャラクターに就任してからアベンヌ ウォーターは必ず携帯していて、乾燥を感じるとシュッとしています。肌の調子がいいと自分も気持ちがいいんですよね。
――今作への意気込みを!
元々、演劇の始まりは遊びだと聞くので、シェイクスピアだからといって気負わず、気楽に観に来てもらえたらうれしいです。前情報を調べなくても楽しめると思います。僕も舞台を観るときはそんなに調べたりはしないんですよ。HPとかチラシを見るくらいで。今回もそれで十分です。ちゃんと伝わるように頑張ります!
Profile
正門良規:1996年11月28日生まれ。大阪府出身。「Aぇ! group」のメンバー。24年5月にCDデビュー。19年にドラマ『恋の病と野郎組』に出演以降、俳優としても活躍目覚ましく、多くの作品に出演。主な出演作に、NHK連続テレビ小説『スカーレット』、主演ドラマ『京都のお引越し』『ムサシノ輪舞曲』、映画『グランメゾン・パリ』、主演舞台『染、色』『ヴィンセント・イン・ブリクストン』など。Aぇ! groupとして主演する映画『おそ松さん 人類クズ化計画!!!!!?』が2026年1月9日公開。
Information
舞台『十二夜』
https://twelfth-night.com/
船が嵐に遭遇し、双子の兄と生き別れた妹・ヴァイオラ。イリリアに流れ着いた彼女は、生き延びるために男装し、「シザーリオ」と名乗って公爵オーシーノに仕えることに。密かにオーシーノに恋心を抱くが、男のふりをしているため、想いを告げられずにいる。一方、オーシーノは伯爵令嬢オリヴィアに夢中。ヴァイオラを使者に立て、自らの想いを伝えさせようとする。ヴァイオラは葛藤しながらもオーシーノの想いをオリヴィアに届けるが、オリヴィアが男装したヴァイオラに一目惚れしてしまい……。ヴァイオラの男装から始まる恋の三角関係の結末とは――。
10月17日〜11月7日 東京グローブ座(東京)
11月15〜11月21日 森ノ宮ピロティホール(大阪)
出演:正門良規(Aぇ! group)、大鶴佐助、高橋由美子、松本紀保、長井短、北村優衣、阿知波悟美、峯村リエほか
原作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:森新太郎
撮影/西谷陽斗 ヘア&メイク/髙取篤史(SPEC) スタイリング/丹ちひろ・横田勝広(YKP) 取材・文/松田亜子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。