美的GRAND
健康・ボディケア・リフレッシュニュース
2025.9.24

渡辺真起子さん「“楽しむ”ことが続けるコツ。」スペシャルインタビュー|美的GRAND

「なんの話〜?」。撮影後、スタッフに声をかけ、一緒におしゃべりを楽しんでくれた。他者への眼差しはいつも優しく、愛情深い。積み重ねた日々が生む必然の美は、ずっと憧れ。

渡辺真起子 ウーマン・イン・ハンサム!

“楽しむ”ことが続けるコツ。毎日ひとつ、新しいことをして前に進む

デニムジャケット ¥39,600(クローバーズ〈ボニーウーブン〉) スカート¥33,000、シューズ¥31,900(ツル バイ マリコ オイカワ) ピアス¥58,300[クリスタルピアスとセット](リューク) マラカイトのリング ¥66,000、ダブルフィンガーリング ¥187,000(プライマル) リボンタイ/スタイリスト私物

「私、店員さんにすぐ質問するんです(笑)」。美容アイテムの選び方を聞くと、そう答えた。それは、渡辺さんが敏感肌ケアに試行錯誤してきたからでもある。

「思いがけない情報が聞けるのはやっぱり人なんですよね。肌が弱いので安心して使えるもの、いつでもすぐ手に入るものを選びたいから、ドラッグストアで探すことが多いです。大丈夫だと確信をもてたものはしつこく使い続けています」

長年、アトピー性皮膚炎に悩まされてきた。ストレスが重なると肌が炎症を起こし、治まるまで時間がかかる。俳優としてこれからという20代後半、全身に症状が現れ、仕事を休んだことも。仕事や将来をどう選択していくかの悩みから、「情緒不安定の暗黒期だった」30代。その経験から、肌も体も調子が悪くなる前に対処することを心掛け、40代後半で更年期障害に直面したときも焦らなかった。

「仕事に影響しないよう、緩やかに更年期へ移行するため、時にはホルモン治療をしながら早めに対処してきました。何より心配だったのが不定愁訴。メンタルが不安定になり、性格の悪いオバサンになるのは嫌だなと思って。でも、更年期は自分のせいではないし、人間関係の嫌なことは私だけでは解決できないけれど、体のメンテナンスは自分でできる。症状が大きく出る前に体調を整えて心構えをしておけば、自分の変化を恐れずにすむんですよね。割とデータオタクなので、今もまめに血液検査をしながら自分の状態を知るように努めています。ホルモン値や足りない栄養素などを知れば、サプリなどでよけいなものをとりすぎずにすみますから。食事制限はしていませんが、食べすぎないようにし、週に1度、軽くファスティング。乳酸菌はヨーグルトや納豆、パウダータイプなど形を変えて毎日とるようにしています。飽きずに続けるためには“楽しい”をプラスすることが大事だと思っていて。全身運動も夏は海でシュノーケリング、冬はスキーと、楽しみながらやっているんです」

人気モデルとして活躍していた渡辺さんが俳優のキャリアをスタートさせたのは、映画。とはいえ、思うように出演できず、求められていないという孤独の中、31歳のときに主演したのが映画『M/OTHER』。作品は国内外で評価され、「やっと居場所を見つけた」気がした。

「俳優として生きる手がかりが見つかった気がして、私を見つけてくれた映画の世界に食らいついていこうと思いました。ただ、メディア露出は伴っていないので知名度はなくて。私は何をやっているのだろうという日々が続くんです」

だが、その存在感や演技は静かに、確かに認められていく。役を個性豊かに生きる俳優へのオファーは増え、44歳で、ドラマ『最後から二番目の恋』に出演。

「テレビドラマのお仕事は、早すぎるスピードについていけず苦手意識がありましたが、オファーをいただいたのが、母が亡くなる前でした。心配をかけ続けた母に、自慢の娘だと思ってもらえるような作品に出たかったんですね。テレビドラマでも頑張ろうという覚悟が決まった作品でもあります。今はドラマのお仕事はとっても楽しいです(笑)」

出演オファーは引きも切らず、12月には主演映画『無明の橋』が公開になる。渡辺さん演じる、娘を亡くした悲しみから立ち直れない女性が、富山・立山で「布橋灌頂会」という儀式に参加する物語だ。布橋灌頂会は、かつて、霊山・立山への登拝が禁じられていた女性たちが白装束姿で“橋渡り”をして極楽往生を願った、癒しの儀式ともいわれている。

「この儀式には、“一度死んでから生きる”という視点で、囚われているものから抜け出すという意味もあるそうです。私自身、両親を続けて亡くした後、娘としてもっとできることはあったのではという悔恨が消えず、亡くした家族との向き合い方は大きな課題でした。でも、自分の中に両親との日常は残っているんですよね。共有していた習慣や考え方、影響を受けたことが、今の私を支えてくれることもある。それは恋愛でも同じ。そんな風に考えると、少しずつ悲しみも癒えてきたように思います」

映画では、少ない台詞、静かな芝居が喪失感を際立たせ、ドキュメンタリーを見ているかのように渡辺さんの芝居に引き込まれる。劇中、陰影が際立たせる自然なシワが美しかった。

「鏡を見て、『シワシワだな……』とちゃんと落ち込むこと、あります。でも、そういう日常も生きてくるのが俳優という仕事。無駄な時間は1秒たりともないと言い聞かせながら、どうでもいいゲームで日々時間を溶かすことも(笑)」

幅広い作品に出演する一方で、近年は映画制作や映画祭の審査員も務める。そこには、「最初に居場所をくれた映画に恩返しをしたい」という思いも。

「私は他者を知りたくて俳優をしているのだと思います。映画を通して人間を考えることが楽しいし、そうすることで人を嫌いにならなくてすむんですよ。私以外の人々が一生懸命生きていることを感じると頑張れますし。映画は人を愛し、他者を肯定するためのクリエーションだと思っています。寂しくない大人はいないし、『私はここにいるよ!』と叫びたくなるような心細さは誰しも覚えがあると思うんです。私自身もそうです。同じような方に寄り添える作品を届けたいし、若者向けの作品であっても、どの世代もちゃんと存在しているように作っていけたらと思うんです」

自分を更新し続けるための秘訣を聞くと、「1日ひとつでもいいから、“初めて”をやること」だと教えてくれた。

「初めてのドラッグストアに行くとか、小さなことでもやってみると毎日が新しくなり、前に進んでいると自覚できるんです。後は自分を健やかに整えて、何かがあって、あたふたしたとしても、懲りずに挑戦を続けていきたいですね。楽しいと思えることをもてる人が、美しい大人であると思っています」

映画は、人を愛するためのクリエーション。孤独や寂しさに寄り添える作品を届けたいです。

Profile
わたなべ・まきこ
1968年東京都生まれ。モデルとして活動を始め、’88年に俳優デビュー。’99年の主演映画『M/OTHER』での演技が高く評価される。映画『チチを撮りに』で第7回アジアン・フィルム・アワードの最優秀助演女優賞などを受賞。近年の主な出演作に、映画『37セカンズ』『浅田家!』『ケイコ 目を澄ませて』『ナミビアの砂漠』『あるいは、ユートピア』、劇場版『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜南海ミッション』、ドラマ『最後から二番目の恋』シリーズ、『舟を編む〜私、辞書つくります〜』など。

Information
映画『無明の橋』
由起子は、3歳の娘を事故で亡くして以来15年間、罪の意識から逃れられずにいる。ある日、勤める美術館で地獄信仰を描いた絵画に心奪われ、絵の舞台である富山へ。「布橋灌頂会」の儀式に参加し、不思議なひとときを過ごす――。
監督:坂本欣弘 出演:渡辺真起子、陣野小和、木竜麻生、室井 滋ほか 12月19日全国公開。

『美的GRAND』2025秋号掲載
撮影/野呂知功(TRIVAL) ヘア&メイク/松井里加(A.K.A.) スタイリスト/KOMAKi 構成/松田亜子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

この記事をシェアする

twitter LINE Threads

関連記事を読む

あなたにおすすめの記事