どうせフェミだろ【中年男性、トキメキ美容沼へ vol.20】

こんにちは、ライターの伊藤聡と申します。私は男性のためのスキンケア本『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社)を出しました。みなさんは、スキンケアに興味がありますか。スキンケアという言葉から、どんなことをイメージしますか? こちらの連載では、スキンケアに親しんでいく上で役に立つかもしれないあれこれをテーマに書いていきます。トライしてみれば楽しくて奥が深い、スキンケアの世界を一緒に探求していきましょう。
試合終了のホイッスル
女性が世間の困りごとに意見を述べたり、なんらかの主張をしたとき、かならず聞こえてくる一部男性側からの返答が「どうせフェミだろ」です。今日はこの言葉について、あらためて考えてみたいと思います。なんだか頭ごなしに決めつけられているようで、思いやりが感じられない言葉ですが、なぜこの言い回しは多用されるのでしょうか。ある種の男性にとって「どうせフェミだろ」は、もはや論外だ、これ以上考えたくない、という議論打ち切りの合図のようです。あるいはエアロスミスのライブのクライマックスで演奏される「ミス・ア・シング」のような、これを出せば完全に決着がつくという究極の切り札なのかもしれません。彼ら男性は、このワードさえ口にすれば完全勝利、それ以上の話し合いはいっさい不要になると思っています。そして「どうせフェミだろ」は、試合終了のホイッスルのように鳴り響くのです。
かくして世間から誤解され続ける「フェミ」ですが、私はこうした言葉を目にするたびに、ふたつの疑問が湧いてきます。まずひとつめは「彼ら男性は『フェミ』についてどのくらい知っているのか」です。実際に、フェミニズムの本を1冊でも読んだことがあるのでしょうか。ちょっと怪しいところです。男性側が、本を引用するのを見たことがありません。もし彼ら全員がフェミニズムの本を買って読んでいるのであれば、そういったジャンルの本を出している出版社はもう少し儲かっていなければおかしいのです。また、私はフェミニズムの本を読んだことがあるのですが、内容がおもしろく発見が多いので、多少なりとも知的好奇心が備わっていれば、本を読んだ上で「どうせフェミだろ」という感想にはならないと思っています。そのため彼ら男性にとっての「フェミ」とは、「なんだかギャーギャーうるさいオンナ」という程度の意味で、それ以上の深い洞察は備わっていないのではないかと推測しています。
うるさくてもいいじゃない
さて「どうせフェミだろ」が、「なんだかギャーギャーうるさいオンナが文句言っているぞ」とほぼ同意義であるらしいことが予想できました。そこで私が感じるふたつめの疑問は、「ギャーギャーうるさくて、なにがダメなのでしょうか」です。日々の暮らしで気づいたことや意見があったら、誰しも自由に発言していいと思うのです。ここでちょっとした豆知識なのですが、「フェミ」は昔、ウーマンリブという別の名前で呼ばれていました。1970年代ごろの話ですが、ご存じでしたか。ウーマンリブの活動をしていた女性は、それは元気いっぱいで、たいへんうるさい人たちでした。バラエティー番組で足ツボをぐりぐりされて痛がるタレントだって、あんなに大きな声では騒いでいなかったと思います。1970年代なのでインターネットはありませんでしたが、もし当時SNSがあったら「どうせウーマンリブだろ」などとツイートされていたかもしれませんね。とはいえ、ウーマンリブ女性のがんばりはみごとなものでした。セクハラが間違ったこととされ、女性の身体を勝手に触ってはいけないという常識が広く共有されるようになったのも、ウーマンリブの運動あってこそではないでしょうか。これは大した成果です。やはり「ギャーギャーうるさくする」のは大事だという気がしてきました。
フェミニズムはなにかがあまりよくわかっていない方でも、「誰かがつらい目にあったり、恐怖や危険を感じたり、選択肢をせばめられたりする状況をなくそうとする運動」であれば、反対する人はいないと思います。性別が理由で理不尽な経験をしたり、つけこまれたりすることの多い女性を中心としつつ、苦しむ人を減らそうという考え方には、さすがに誰しも賛成だと思うのです。あるいは「いやいや、オンナはもっと苦しまなければならないし、危険にさらされた方がいい。たっぷり不自由を味わってもらうぞ」などと、悪の秘密結社の総統みたいな発想をする人がいるのでしょうか。それではちょっと悪役すぎます。いまの世の中でごく自然に暮らしていれば、フェミニズムと異なる考え方をすることじたいが難しいと私は思うのです。「フェミ」はなにか特別に偏った思想でもなければ、過激な主張でもありません。平和な世界の方がいいとか、人権は大事だとか、そういったごく普通の意見のひとつです。男性であっても、ぜひ心配せずに親しんでもらえればと思います。
声を聞くことから始めよう
一方「どうせフェミだろ」という言葉からは、「意見をしない女性」「自分に愛想よくしてくれる女性」「笑顔を絶やさず男性を立ててくれる女性」とだけ付き合っていきたい、それ以外の女性は認めたくないという考え方が透けて見えるようです。みずからの意見を述べ、要求をしてくる都合の悪い女性を選別し、放り込んでおく箱についているラベルが「フェミ」なのかもしれません。とはいえ人間ですから、生きていれば意見くらい出てきます。なにか意見を言った女性をすべて「フェミ」だと排除してしまう男性は、あらゆるテレビゲームをすべて「ファミコン」と呼ぶ両親みたいに、ものごとの解像度が低いと言わざるを得ません。世の中をより良く変えていくため、謙虚に耳を傾ける姿勢を身につけたいものです。
人間が生きていれば意見や考えが出てくるように、お肌も生きていればかさつきや荒れといった主張が出てきます。「どうせ肌荒れだろ」と決めつけてしまわず、肌の意見に耳を傾けて、向き合っていくことで、お互いがハッピーになれるのではないでしょうか。資生堂の「アルティミューン(TM) パワライジング セラム」は、お肌にうるおいをもたらしてくれる最新の美容液です。椿の種子から抽出された美容成分にはエイジングケアの効果もあり、ぷるんとした肌ざわりを取り戻してくれるのです。心地よい肌の感触は、身体の声を聞くところから始まります。心を閉ざすのではなく、オープンな姿勢でさまざまな意見を取り入れたいですね。

イラスト/green K
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