摩擦はスキンケアの大敵【中年男性、トキメキ美容沼へ vol.26】

こんにちは、ライターの伊藤聡と申します。私は男性のためのスキンケア本『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社)を出しました。みなさんは、スキンケアに興味がありますか。スキンケアという言葉から、どんなことをイメージしますか? こちらの連載では、スキンケアに親しんでいく上で役に立つかもしれないあれこれをテーマに書いていきます。トライしてみれば楽しくて奥が深い、スキンケアの世界を一緒に探求していきましょう。
ノーモア摩擦!
男性がスキンケアを始めて学ぶことのひとつに、「摩擦を避ける」が挙げられます。それまでほとんど考えたことのなかった摩擦。あるいは「乾布摩擦」などといって、むしろ身体に良いことなのでは? と思い込んでいた摩擦が、スキンケアの大敵であると知ったのは、スキンケアを知ってからです。周囲の男性に「顔を拭くとき擦っちゃダメなんですよ」と説明すると、まるで「柚子胡椒には胡椒が入ってない」と聞かされた人みたいな顔つきになって、「ええっ、どうして?」と質問してきます。実は知らない人が多いのです。洗顔後、顔を拭くときはタオルで擦るのではなく、ポンポンと押さえるようにする。決してゴシゴシしない。なかには田中みな実さんのように、顔は拭かない派もいます。摩擦について学んだとき、「自分はいままで、本当に身体を雑に扱ってきたんだな」とあらためて感じました。スキンケアの上手な先輩方(主に女性)に話を聞くと、自分の身体を傷つけないよう慎重に扱っていて、その繊細な気配りに感動したものです。
洗顔そのものも同様で、決して力を入れて擦ってはいけないと学びました。泡立てネットを使って、洗顔料をなるべく柔らかい状態にし、顔全体に広げて優しくなでるだけでじゅうぶん。それで汚れは落ちますと言われていますが、顔を力いっぱい洗っているときの「汚れが落ちている感じ」の心地よさにはどうしても抗えません。どれほど注意しても、顔面を強く擦ってしまうクセはなかなか直りませんでした。特に鼻のまわりのアブラなどは気になりますから、無意識のうちに力が入り、気がつくと、DJが客を盛り上げようと必死でスクラッチしてるときくらい、激しく擦ってしまっているのです。あれ、なんでしょうね。つい擦っちゃう。力を入れて顔を洗うのって、なんだか妙に気持ちよくて、効果が出ているような気もするし、ついやってしまいそうになります。これは多くの男性に共通するのではないでしょうか。そのため、どうにか摩擦を避けてもらうよう、スキンケアをする男性にはお願いしています。
ヒゲ脱毛にはタイムリミットがある
男性にとってもうひとつ悩ましいのはヒゲ剃りです。ヒゲ剃りもカミソリによる摩擦のひとつとカウントできますが、肌にかかる負担が大きい作業です。スキンケアの視点から言っても、いっそのことヒゲ脱毛してしまう方がよいのではと考えるようになりました。しかしヒゲ脱毛は、一定の年齢までに済まさないとできなくなってしまうのでした。これ、ご存じでしたか。ヒゲ脱毛は、メラニン色素にレーザーを反応させて熱に変え、毛根の発毛組織を破壊するという方法を取っているので、歳を取ってヒゲに白い毛が混じると、メラニン色素を含まない白い毛は脱毛できなくなるのです。私はもう間に合いません。いま、私のヒゲは白と黒が半々といったところですが、あと5~6年もしないうちダンブルドア校長になる予定です。ひとたび白くなり始めたら、もう止める手立てはありません。白い毛を無理やり脱毛する方法もなくはないらしいのですが、費用も手間も相当かかるようです。基本的には、ヒゲが黒いうちに済ませてしまわないと手遅れになります。これ、先に伝えておいてほしかったナァ。お若い方はぜひ、タイムリミットを踏まえた上でのヒゲ脱毛をご検討ください。
摩擦を避けることを考えた場合、スプレータイプの化粧水は本当にオススメです。特にお風呂上がりなど、まずは顔にスプレーを吹きかけて保湿するのは、私自身の経験から言ってもかなり効果的なスキンケアの方法だと言えます。あご、首あたりまで広い範囲にスプレーして、たっぷり湿らせてみましょう。いっさい摩擦が生じませんし、毎晩のルーティンを始める前の下準備としてもかなりよさそうです。また実際に使ってみて感じるのは、毎日たっぷり顔に使っても意外になくならないというか、使い切るまでに結構時間がかかることです。つけすぎ、というくらいに使用するのがオススメです。そんなにすぐにはなくなりません。スキンケア製品を使うとき、つい「もったいない」という気持ちが湧いてきますが、残りの量など気にせずたっぷり使うのが楽しいですし、気分がいいので、ぜひそうしましょう。摩擦を避けつつうるおいを閉じこめる、そんなスキンケアが理想です。
スプレーを使って保湿しよう
今回紹介する「アベンヌ ウォーター」は、フランスのメーカーが製造している保湿スプレーです。ドラッグストアで手に入ります。サイズはいくつかありますが、大容量の300gを威勢よく使うのがいいのではないでしょうか。値段もお手頃で、あまり悩まずに入手できるのが魅力。赤ちゃんでも使える肌に優しい製品ですので、敏感肌の方でも大丈夫です。お風呂上がりに、まずはこのスプレーをしゅーっと顔に噴霧すれば、洗顔後のつっぱった肌の感覚がほぐれていくのがわかります。この柔らかくなじんでいく感覚はスプレーならでは。これはあくまで下準備ですので、いわゆる導入として使用し、噴霧して肌になじんだくらいのタイミングで、化粧水、美容液、乳液とつけていくのがよいかと思います。他のスキンケア製品を塗るときも、あまり手を動かさず、肌にゆっくり押し込むようにし、なじませる感覚を大事にしましょう。この「なじませる」っていうのが男性にはむずかしくて、面倒くさがって手順を省略してしまうのですが、時間をかけた方がいい結果が出やすいので、ぜひ余裕を持ってやってみてください。

イラスト/green K
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