内田有紀さん「多くの美容法を真似しては、合わなくて失敗…を繰り返してきました」|美的GRAND
「奇跡の45歳」と、人は言う。けれど、奇跡だけじゃない。苦しみながら、楽しみながらの半生で得た覚悟と自覚、そして大らかな心もちが、内田さんの変わらない美しさを導いている。
内田有紀
行きつ、戻りつ、カッコつけず。
シンプルで無理のないケア。自分のもつ力でキレイに
変わらない人程、自らをアップデートし続けているといわれる。内田有紀さんも、肌や体のケアは試行錯誤し、たどり着いた今のお手入れは至ってシンプル。スキンケアは化粧水中心で、油分の多いクリームは肌に合わないため使わない。内側からの健康をより意識し、毎朝、手作りのフルーツジュースでビタミン補給。
「多くの美容法を真似しては、合わなくて失敗…を繰り返してきました。今のお手入れはセオリー的には違うかもしれませんが、私の肌にはしっくり来ますし、何より大事なことは、自分に合う・続けられるケアだと思うんです。続けているという事実って、自信になるんですよね」
2年前、顔全体に原因不明の吹き出物が出た。考えうる限りの対処をしても治らず、藁わらにもすがる思いで、自らに言い聞かせた。「大丈夫、私の肌はキレイになる」と。
「家事をするときも声に出して言い続けていたら、数日後、うそみたいにキレイになって。治り始めだったのかもしれませんが、治癒力も自分で高められるのかもしれないと感じました。ポジティブな言葉を口にすると脳がその状態を作り出すといわれますが、自分を信じる強い心は大事なのだと、改めて実感して。今は肌も体もまず、自分のもつ力で元気になることを意識しています」
スタイルは、家でエクササイズ動画を見ながら体を動かしたり、外出時に意識して歩く中で無理なくキープ。食事も極端な糖質制限はせず、大好きな和食中心で、時にはジャンクフードも楽しむ。
「体重が落ちにくい年齢ですし、3kg増えると顔つきが変わって、作品内で顔がつながらなくなるので、1~2kg増えたら戻しています。楽な方に流れがちな私でも、2kgなら頑張れるんです(笑)。小さい振り幅の中で行ったり来たりして、帳尻を合わせています。健康も同じで、小さな不調に気づきながら、大きな病気を予防していきたいですね」
思いやりが足りなかった頃うまく演じられなかった
「全然できていない。しっかり演じてください」。35歳のときに出演したドラマ『最後から二番目の恋』の撮影中、内田さんは共演者やスタッフの前で、監督から指摘された。結婚を機に芸能界を休業した後、俳優復帰し、仕事に邁進していた頃。自尊心もプライドもズタズタになった。すぐに演技コーチにつき、芝居を一から学び直した。クランクアップ時、「すごく良かった」という監督の言葉が忘れられない。
「当時の私には、共演者のお芝居への想像力や思いやりが欠けていたと思います。今思えば、普段の生活でもそうでした。支えてくださる方々には感謝しかない一方で、その思いを伝えられていなかったし、忙しさに追われて、皆さんがどういう思いで私をカメラの前に立たせてくださったのかという思いにも気づけなかった。そういう機微を察することが、生きたお芝居に影響することを理解できていなかったのだと思います」
年をとればとる程、プレッシャーは育つ。でも、そのままの自分を受け入れて前に進みたい
幅広い役を演じ、俳優として円熟期を迎えているが、意外にも「年をとればとる程、プレッシャーが育ってしまう」と言う。
「キャリアが長くなる程、できて当然と見られるので失敗ができなくなります。でも同時に、人は何歳になっても努力し続けなければいけないことに気づかされました。失敗が怖いならできることを増やそう、苦しみも栄養にして頑張ろう、と。知ったかぶりをせず、カッコ悪い自分をさらけ出して、できない部分は人に頼れるようになりました」
時には座禅をし、自分のペースを取り戻す。天気のいい日には散歩をする。そうして積み重ねた日々の心地よさが、「いい年のとり方につながる気がする」と信じている。
年齢と共になくしたものばかりを数えると焦る。けれど、今の自分を理解し、受け入れ、周りへの感謝を忘れない内田さんの心の余白が、成熟した美しさを導いている。
「心の状態は顔つきにも影響しますよね。そう思うと、生活や人間関係が安定した先に、美しさがあるような気もします。まずは心を整えることが、自分らしい美しさにつながるのかなと思います。今、美しい風景など心動かされる出合いがあると、感じたことを言葉にして確認しているんです。なんとなくキレイだった、で終わるのはもったいないし、そういう感情のストックを重ねた先に、どんなお芝居ができるのか楽しみなんです。これからもきっと失敗すると思いますが、苦しみながら、楽しみながら、間違えたり、時々うまく行ったりしながら、少しずつ前に進んでいきたいと思います」
PROFILE
うちだ・ゆき/1975年東京都生まれ。’92年に女優デビュー。主な出演作に、ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』シリーズ、『最後から二番目の恋』シリーズ、NHK大河ドラマ『西郷どん』、NHK連続テレビ小説『まんぷく』など。今年はドラマ『華麗なる一族』での演技も注目を集めた。スペシャルドラマ『ドクターY~外科医・加地秀樹~』(10月放送、テレビ朝日系)、ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』の新シリーズ(10月スタート、テレビ朝日系、毎週木曜21時〜)に出演。
『美的GRAND』2021年秋号掲載
撮影/竹内裕二(BALLPARK) ヘア& メイク/高橋里帆(Happy Star) スタイリスト/岸本佳子 構成/松田亜子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。