ジャルジャル・福徳秀介さんインタビュー|書きながら、「救われたのは自分だった」理由
『キング・オブ・コント2020』で優勝し、YouTube「ジャルジャルタワー」も大人気のジャルジャル・福徳秀介さんが、待望の小説家デビュー! 自らを重ねて書いたという『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』は、共感と涙があふれる「私小説」的な恋愛小説。そこに込められた思いとは―。全3回にわたってインタビューをお届けします。
1回目のインタビュー記事はこちら
>>https://www.biteki.com/life-style/others/673912
原稿を書きながら、自分が救われていました
―小説の中では、主人公の“僕”の周りの人々の言葉が素敵です。
自分で書いていてなんですが、皆、けっこういいこと言っていますよね(笑)。こういうことを言うかな、言われたらうれしいかな、という感じで絞り出しました! いい言葉を思いつくとネットで検索して、既出でないことを確認しながら書いていましたね。
僕がぐっときたのは、「嫌いな人が困っていたら『ざまあみろ』と思うな。嫌いな人が困っていたら助けてあげなさい。そして『私に助けられて、ざまあみろ』と思いなさい」という言葉です。書きながら、自分の中のネガティブな考え方も変わって、背中を押してもらった感じでした。どこか、自分に向けて書いているところもあったかもしれません。
―タイトルや、ふとした場面に出てくる空の描写も印象的ですよね。
自分では気づいていなくて、編集者の方に「空がよく出てくるね」と言われて初めて、そういえばそうだなと。
僕は毎日、空を見ます。子供の頃から、出かけるとき、玄関のドアを開けた一発目に空を見るのが習慣なんです。以前、共用廊下が屋内にあるマンションに住んだときは、すぐに引っ越しました。玄関を開けても空が見えないんですよ。内見のときに気づいてはいましたが、住んでみると、思った以上に空が見えないことが耐えられなかった。そのくらい、空を見ることは重要みたいです。
大げさかもしれないですが、空を見ることで、「今日はこの空の下で生きるんや」という、その日の覚悟みたいなものをしているのかもしれません。
初めて自分をさらけ出せた。恥ずかしいくらいに!
―「自分をさらけ出せない」という福徳さん。小説を書いているときは、思いがあふれ出てきたそうですね。
僕は犬が大好きで、今回の表紙も飼っていた犬の写真なんですが、犬って、すぐお腹や肛門を見せるじゃないですか。あれが愛される理由だと思うんです。それと同じで、さらけ出している人は愛される。
だけど僕は、いまだに自分をさらけ出せません。コントではなく、福徳自身として話すときは、思いがうまく言葉にできなくて。心の中にはいろんな感情が渦巻いているのにちゃんと伝えられないので、「クールやな」「何考えているかわからん」とよく言われます。仕事でも、現場にいる人の“目の数”を数えてしまって、それが多い程うまいこと話せないし、ここで自分を出したとて、面白くないだろうなとブレーキがかかってしまう。
それが今回、文章を書いているときは不思議と自分を出せた。ここまでさらけ出せたのは初めてだと思います。読み返したとき、「おいおい、これはちょっと恥ずいぞ」と思うくらい、リアルな僕が詰まっています。
『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』
福徳秀介
大学2年生の僕は、キャンパスでは日傘を差して人目を避けるような、さえない日々を送っている。ある女子学生の凜とした姿に惹かれた僕は、必死の思いで初デートに成功するが…。暗闇から抜け出させてくれるような珠玉の言葉が響く恋愛小説。¥1,500/小学館
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Profile.
ふくとく・しゅうすけ/1983年兵庫県生まれ。関西大学在学中の2003年に後藤淳平とお笑いコンビ「ジャルジャル」を結成。独特のシュールな世界観とセンスで人気を博し、毎日コントを配信しているYouTube「ジャルジャルタワー」も評判。「キングオブコント2020」で優勝。
構成/松田亜子
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