【大高博幸さん連載 vol.333】 試写室便り 第112回 『さざなみ』『無伴奏』『ルーム』『見えない目撃者』

アカデミー®賞を貫いた世紀の愛の物語。

閉ざされた［部屋］からの脱出。
大きすぎる世界に飛び込んだ、
母と息子の衝撃の感動作。

ルーム
アイルランド＝カナダ／118分
4.8 公開／配給：ギャガ
GAGA.NE.JP/ROOM

【STORY】　閉じこめられた［部屋］で暮らす、ママとジャック。体操をして、TVを見て、ケーキを焼いて、楽しい時間が過ぎていく。しかし、この部屋が、ふたりの世界の全てだった。ジャックが 5歳になった時、母は［部屋］しか知らない息子に 本当の世界を見せることを決意する。（ チラシより ）

アカデミー®賞 主要4部門にノミネートされ、ママ（ジョイ）役の ブリー・ラーソンが主演女優賞に輝いた作品です。
17歳の時に誘拐され、狭い納屋に閉じ込められて 7年……。ジョイは 5歳になった息子のジャックと暮らしている。ジャックは この［部屋］の外の世界を TVでしか知らないが、素直な愛らしい性格の子供に育っている。この［部屋］には 時々 オールド・ニックという男がやって来て、食料や衣類を置いていく（ ジャックは その間、クローゼットの中で眠る ）。閉ざされたドアの鍵の暗証番号は、オールド・ニックだけが知っている。
やがて 外の世界に興味を抱き始めたジャックに勇気を得たジョイは「モンテ・クリスト伯」にヒントを得て、ジャックを外の世界へ送り出そうと計画する……。

これ以上は 書かないほうがいゝのでしょうが、ジャックは どうにか脱出に成功。犬と散歩中の男と 黒人の女性警察官との機転によって、ジョイも救出されます。その瞬間、それまで静まり返っていた試写室内に 嗚咽の声が溢れました。
しかし、映画は そこで終るワケでは ありません。この母と子が、どのように社会から迎えられ、どのようにして新しい生活を始めるかまでを、比較的 淡々と描いていきます。

最も印象的だった台詞は、次のふたつ。
1）「ジャックの親は 私 ひとりだけ」（ 救出された後、TVのインタヴュアーから ジャックの父親について問われたジョイの、毅然とした返答 ）。
2）「髪を切って ママにパワーを送るの」（ 入院したジョイを慕うジャックが、祖母 ＝ ジョイの母親に言う台詞。祖母は 涙ながらに、ジャックの考えに賛成する ）。

類まれな 異様とも言えるリアリティを放つ作品で、脚本（ 原作者である エマ・ドナヒュー自身 ）と 監督（ レニー・アブラハムソン ）の 薄氷を踏むような細心の仕事ぶりに 敬服 & 脱帽。B・ラーソンと ジャック役の ジェイコブ・トレンブレイを筆頭に、祖母役の ジョアン・アレンから 端役の無名俳優（ 特に女性警察官役 ）に至るまで、真実味あふれる演技が 作品を見事に支えています。

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ビューティ エキスパート 大高 博幸 1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ：大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。 ■大高博幸さんの 肌・心 塾　https://www.biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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