大高博幸さんの 肌・心 塾
2017.11.7

『 人生はシネマティック! 』『 猫が教えてくれたこと 』 試写室便り 【 大高博幸さんの 肌・心塾 】 Vol.420

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(C) BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THEIR FINEST LIMITED 2016

映画製作に情熱を傾ける人々を
愛とユーモアあふれる視点で描く
ヒューマン・ドラマ。

みんなで作る「 最高の結末 」。

人生はシネマティック!
イギリス/ 117 分/ PG 12
11.11 公開/配給:キノフィルムズ
www.jinsei-cinema.jp

【 STORY 】 第二次世界大戦中のロンドン。執筆経験ゼロの女性が、ダンケルクで兵士を救った姉妹の映画の製作に 脚本家として加わることに。軍部政府の横やりや検閲、さらにベテラン俳優のわがままに振り回されながらも、周囲の魅力的な仲間とともに 最高の映画を完成させる! ( 試写招待状より )

試写招待状の画像 ( チラシ画像と共通 ) に作り物的な印象を受けた僕は、観るべきかどうかと少々迷ったのですが、これは観て正解の上質なヒューマンドラマでした。

舞台は 絶え間ない空襲に脅かされている 1940 年のロンドン。ヒロインのカトリン ( ジェマ・アータートン ) は、スペイン戦争で負傷した夫との暮らしを守るため、週給 2 ポンド ( 男性ならば 3 ポンド 10 なので、これは相当な差別 ) で 情報省 映画局 脚本部の職を得る。彼女は 特別顧問のバックリー ( サム・クラフリン ) と パーフィット ( ポール・リッター ) と共に脚本作りに没頭。検閲や政府からの 指示・要求が入る度に、知恵を絞って改訂を繰り返す。かつて人気を誇った 老優 アンブローズ ( ビル・ナイ ) の扱いにも 四苦八苦するカトリンだったが、軍部からは 米国の参戦を促す目的で、米軍の英雄飛行士 カール ( ジェイク・レイシー ) の登場シーンの追加まで命じられる ( しかもカールは ズブの素人で、パロディのような大仰な芝居しかできない ) 。そんな厄介な問題を ひとつずつ誠実に解決していくうちに スタッフの絆は深まり、結果的に 映画は大成功を収める。
その課程で カトリンは、一女性として自立心を養うと共に 才能を開花させ、周囲から 一目 置かれる存在となっていく ( ここが本作の最も重要なポイントです ) 。

僕は 感心したり 悲しんだり アキレたりしながらも ワリと冷静に観ていたのですが、完成した映画が公開されている劇場のシークエンスで 想わずポロポロ、涙が止まらなくなってしまいました。上映されている映画の画面はモチロンですが、それ ( スクリーン ) を注視している観客たちの 表情・反応にも共感し、胸を打たれたからだと思います。
続くラストシーンは、脚本部のオフィスで新作の準備を始めるカトリンとパーフィット、そして検閲に最も近い立場にある 監視役 フィル ( レイチェル・スターリング ) との クールでいてウォームな やり取り…。この映画には〝 悲劇 〟の痛ましい要素があるものの、希望に満ちたエンディングが 物語全体を後味の良いモノにしています。

上映時間は 117 分のワリに やゝ長い気もしましたが、全てが丁寧に誠実に作られていて、出演者も粒揃い。
カトリン役の G・アータートンは『 ボヴァリー夫人とパン屋 』( Vol.295 ) での主役とは比較にならないほどの好演。脚本チームの S・クラフリンと P・リッター、監視役の R・スターリングをはじめ、老優役 B・ナイ ( 彼が最後の登場々面で示す〝 スターの習性 〟の見事なユーモア! ) 、彼を懸命に支えるエージェント役の エディ・マーサン ( 日本でも異例の大ヒットとなった『 おみおくりの作法 』( Vol.266 ) の主人公役 ) 、その姉役 ヘレン・マックロリー ( 『 ヴェルサイユの宮廷庭師 』( Vol.308 ) での演技とは全く異質な人間味 ) 、イケメンでセクシーだが 絶句させられるほど演技下手なカール役 J・レイシー ( 『 クーパー家の晩餐会 』( Vol.328 ) と『キャロル』( Vol.326 ) の脇役で注目され、『 女神の見えざる手 』( Vol.417 ) では J・チャステインを相手に エスコートサービスの男を好演。本作では、なんと金髪で登場 ) etc、全てのキャラクターが観客の眼を惹きつけます。
監督は『 ワン・デイ 23 年のラブストーリー 』( Vol.100 ) の ロネ・シェルフィグ。
誰が観ても楽しめる映画ですが、チームワークの難しさを痛感している皆さんや、自分の将来について試行錯誤している皆さんには 是非とも オススメしたいです。

 

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©2016 Nine Cats LLC

イスタンブールは猫の街。
日々を ひたむきに生きる街の人々は 悩みや苦しみを背負いながら、猫との出会いに癒され、深い愛情を注ぐ。

まるで会話をしているように通じあう人と猫との交流を、優しく見つめた物語。

猫が教えてくれたこと
トルコ/ 79 分
11.18 公開/配給:アンプラグド
neko-eiga.com

【 INTRODUCTION 】 海外との貿易で栄えた街 イスタンブールは 古くから海洋交易の重要拠点として発展し、猫は オスマン帝国の頃に 貨物船に乗って世界からやってきたとされる。今なお帝国時代の名残を残す 古き良き街並みの片隅に生きる猫たち。街に生きる人々の日常を描きながら、映画の中心となるのは個性的な 7 匹の猫たち。監督とカメラマンは、野良猫たちの食事時間、行動ルートなどを毎日じっと観察し、猫の通り道に 地上に接するようにカメラを据え、時にドローンを飛ばし 屋根の上からも撮影するなど、猫の自然な姿を捉えることに成功した。( プレス資料より抜粋 )

「 動物を愛せない人間なら、人を愛するコトもできない 」と言う街の一男性の言葉が、妙に印象的だったドキュメンタリー。イスタンブールにも猫を嫌う人はいるそうですが、少くとも この映画を観る限り、猫は街の暮らしに溶け込んで 街の一部になっています。監督の ジェイダ・トルンとカメラマンが、猫と猫を可愛がる人々に強い愛情を持って製作したコトが よく分かる内容です。

面白かったのは 7 匹の猫たちの、人間以上に個性的なキャラクター。生まれたばかりの子猫のために市場で泥棒をするサリ、撫でられ好きなベンギュ、レストランの近くに住み着いて ネズミ退治に精を出すアスラン、夫を尻に敷きながら 嫉妬深さを顕わにするサイコパス、市場の人気者のデニス、チョイ悪で楽天的なガムシズ、紳士的で美食家のデュマンなど、彼らの行動・ライフスタイルが余すところなく捉えられているのです。
僕が特に惹かれたのは、母親になってからハンターに変身したというサリが、エサをくわえて子猫たちの元へと急ぐ姿。さらに、行きつけのレストランのガラス窓を叩いて ( 店は開いているのに、彼は決して中へ入らない ) 、店主に食事を注文するデュマンの 驚くべき礼節さでした。

映画は 次のような言葉で、物語を締めくゝっています。
「 この街の猫は 長い間、人間と共に暮らしてきた。しかし 都会から緑が失われつゝある今、急速に居場所を減らされている。猫と人間が共存できる方法を模索するコトが、実は人間が抱えている問題を解決するコトにつながるはず。猫を愛するというコトは 人を愛するコトに他ならない。猫たちは人間に生きている実感を与え、私たちを幸せにしてくれる存在なのだから 」。

猫好きな皆さんは言うまでもなく、僕のような犬好きをも惹きつける愛すべき一篇。ロッテントマトでは 満足度 98 点を獲得、米国では 公開された外国語ドキュメンタリー映画として 史上 第 3 位の大ヒットを記録しています。

 

 

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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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