大高博幸さんの 肌・心 塾
2017.8.1

『 フェリシーと夢のトウシューズ 』『 俺たちポップスター 』『 きっと、いい日が待っている 』『 ハイドリヒを撃て 』 試写室便り 【 大高博幸さん連載 Vol.406 】

© 2016 MITICO - GAUMONT - M6 FILMS - PCF BALLERINA LE FILM
© 2016 MITICO – GAUMONT – M6 FILMS – PCF BALLERINA LE FILM

家族のいない ひとりぼっちの少女が、
情熱だけを胸に パリ・オペラ座のバレリーナを目指す、夢に恋する物語!

フェリシーと夢のトウシューズ
フランス、カナダ/ 89 分
8.12 公開/配給:キノフィルムズ、木下グループ
ballerina-movie.jp

【 STORY 】 踊ることが好きなフェリシーは、いつか パリ・オペラ座で エトワールとして踊るという 大きな夢を持っていた。ある日、夢を叶えるため、幼馴染のヴィクターと二人で 施設を抜け出し 憧れのパリへやってくる。そこで フェリシーが見たのは、オペラ座の舞台で軽やかに踊る エトワートの姿だった。偶然出会った 掃除係のオデットの仕事を手伝うようになったフェリシーは、オデットの雇い主の娘 カミーユが オペラ座 バレエ学校の入学許可待ちであることを知る。そこで フェリシーは身分を偽り、カミーユとして入学するのだが…。 ( 試写招待状より。一部省略 )

物語の舞台は 1879 年、エッフェル塔の建設が進んでいた頃の 花の都 パリ。
主役のフェリシーは、バレエの基礎など全く知らないものの、情熱と勇気は誰にも負けない 11 歳の女の子。加えて、彼女と一緒に孤児院で育ち、彼女を愛している発明家志望の少年 ヴィクター、掃除係として働く足の不自由なワケありの女性 オデット、恐ろしく冷血な 大金持ちの ル・オー夫人、その娘で高慢な性格のカミーユ、厳格なバレエ教師 メラントゥ、さらに 孤児院で働くモジャモジャ眉のオヤジさん、ヴィクターを助ける 太っちょの少年 マティーら。この多彩なキャラクターが入り混じるところに一番の面白さがあり、特に後半、フェリシーが挫折を味わう辺りから ガゼン興味が増す構成。

個人的に少々どうかと思ったのは、CG技術を駆使しすぎている点。距離感やスピード感を強調するために、超高速のトラックアップ的シーンをコレでもかというほど随所に散りばめているコトです。もっとうまくコントロールを効かせたなら、ラスト近くのエキサイティングなクライマックスシーンが 一層 極立ったに違いないと 僕は感じました。
それはともかく、観客の子供たちにとって重要なポイントとなるのは、夢を叶えるために不可欠な要素が、きちんと描かれている点です。あからさまな or 押しつけがましい描きかたはされていないので、だからこそ、その点をしっかりと理解させられゝば、単なる「 面白かった! 」に留まらない、充実した間接体験の機会を子供たちに与えるコトができるはず。「 意外にハートのある人だったんだなぁ 」という類のキャラクターが 数名 登場するコトも、本作を後味の良いモノにしています。

 

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© 2016 UNIVERSAL STUDIOS

「 最近流行りの薄っぺらい音楽ドキュメンタリーを 茶化して面白がる事が、この映画の全てだ! 」 製作:J・アパトー

俺たちポップスター
アメリカ/ 87 分
8.5 公開/配給:パルコ
popstarmovie.jp

【 STORY 】 幼馴染みの コナー、オーエン、ローレンスが結成した世界的に有名なヒップホップバンド〝 スタイル・ボーイズ 〟。ところが、フロントマンのコナーが〝 コナー 4 リアル 〟として 突然ソロデビューし、バンドは呆気なく解散。専属 DJ に成り下がったオーエンと 引退して農家を営むローレンスを尻目に、ファーストアルバムが大ヒットして 人気絶頂のコナーは 自分のドキュメンタリーを製作することに。しかし、やる事なす事が全て裏目に出てしまい、セカンドアルバムは不評で大コケ、世界ツアーも大トラブルで中止に追い込まれてしまう。果たして、彼らの運命は…? ( 試写招待状より )

バンド解散、アルバム不評、ツアー中止。〝 ポップスター 〟の失敗と挫折と転落を描いた〝 波瀾爆笑 の しくじりコメディ!!! 〟。ドキュメンタリーだと想っていたのですが、これはドキュメンタリー風の一種の劇映画。バンドを立ち上げて有名になった途端、突然ソロデビューした若者の話で、〝 バカバカしい笑い 〟と下ネタ満載の 87 分。しかし 徹底的に根アカで、バカバカしいコトを百も承知で作っているので、コレはコレなりに存在価値があり、大喜びするファンも大勢いそう。主役のコナー ( アンディ・サムバーグ ) には 眉を整える専門のメーク係まで付いている…、その短いシーンに限っては、僕は思わず、真剣に観てしまいました。

ビックリしたのは、リンゴ・スターが特別ゲスト出演していたコト。加えて、マライヤ・キャリー、ピンク、マイケル・ボルトン、アダム・レヴィーン、50セント、マーティン・シーンらの姿も…。But、不覚にも僕は、エマ・ストーンの姿を見落としてしまったんです。残念無念、信じられない!

 

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©2016 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa International Sweden AB.

ある養護施設を舞台に、
幼い兄弟が実際に起こした
勇気と奇跡の物語。
デンマーク・アカデミー賞 6 部門受賞!

きっと、いい日が待っている
デンマーク/ 119 分/ PG12
8.5 公開/配給:彩プロ
Kittoiihigamatteiru.ayapro.ne.jp

【 STORY 】 1967 年、コペンハーゲン。労働者階級家庭の兄弟、13 歳のエリックと 10 歳のエルマーは、病気の母親と引き離され、男児向け養護施設に預けられるが、施設では しつけという名のもとの体罰が横行していた。エリックたちは環境に馴染めず、上級生たちからイジメの標的にされてしまう。弟のエルマーは宇宙飛行士になるという夢を持っており、エリックは複雑な思いを抱いていた。ある日、叔父が「 一緒に暮らそう 」と施設を訪ねてくるが、ヘック校長に一蹴されてしまう。悲観したエリックとエルマーは 施設からの逃亡を図ろうとする――。 ( 試写招待状より。一部省略 )

生活苦によって肉親から引き離された兄弟が、収容された養護施設で 暴力による過剰な養育を受けていたという 実話に基づく物語。『 オリバー・ツイスト 』や『 それでも夜は明ける 』 ( Vol.209 ) 、『 スポットライト 世紀のスクープ 』( Vol.336 ) 等と共通した要素を持つシリアスドラマです。

施設の冷酷な校長 ( 演ずるのは マッツ・ミケルセンの実兄、ラース・ミケルセン ) は、厳格な規律と体罰こそが 子供たちを救う最上の方法だと信じきっているようですが、予告なしに現れた役所のアンダーセン捜査官 ( 俳優名不明。3 枚目のスティルの右の男性 ) の不屈な態度に動揺するところを見れば、自身の〝 教育法 〟 が非難の対象となって当然だと認識しているコトは明らか。彼の部下たちは右に習えで、中には 10 歳前後の幼い少年を 己れの性欲を満たすための〝 道具 〟にするという 忌しい男もいる…。そうした描写は不愉快極まりないものの、カーリーヘアのトゥーヤら三人組が それとなくエリック ( アルバト・R・リンハート ) と エルマー ( ハーラル・K・ヘアマン ) を助ける場面や、新たに赴任してきたハマーショイ先生 ( ソフィ・グローベル ) の存在に救いがある上、後半はハラハラさせながらも、胸のすくようなラストに向けて突き進んでいきます。

印象的だったシーンは、
1 ) 〝 文章力 〟に優れたエルマーが、字が読めないトゥーヤたちに、家族から届いた手紙を読んで聞かせる場面。
2 ) エリックが、エルマーを〝 毒牙 〟から守るために、身代わりになろうとする場面。
3 ) 二場面ほどの登場ながら、アンダーセン捜査官の 押しの強さ、頭とカンの良さ、そして人間性の豊かさが顔に表われる場面。
4 ) ハマーショイ先生の どうにもできない立場、後悔と自身に対する失望、そして 再び立ち上がるに至る経緯。
5 ) ラスト直前、アンダーセンを信じて、トゥーヤを筆頭に 少年たちが 重い口を開こうとする場面 ( チラシの下方にあるスティルの場面。手を挙げているイエローベージュのシャツ姿がトゥーヤ ) 。
6 ) そして 願っていた以上の、充ちたりたラストシーン。

監督は、俊英 イェスパ・W・ネルソン。本作は、2017 年度 デンマーク・アカデミー賞の 作品賞、オリジナル脚本賞、助演男優賞、助演女優賞、美術賞、衣裳賞を受賞しています。
誰にとっても忍耐力を要する映画ではないかと思いますが、これは観るべき一編です。僕自身は、人と人との信頼感と相手を思いやる心の美しさに、強烈な感動を覚えました。

 

© 2016 Project Anth LLC All Rights Reserved.
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1942 年、チェコ・プラハで起きた ナチス親衛隊大将 ラインハルト・ハイドリヒ暗殺事件。
ナチスの壮絶な報復攻撃を受けて 多くの犠牲者を出し、第二次世界大戦中、最も凄惨な史実のひとつとして語り継がれる物語。
本年度 チェコ・アカデミー賞、14 部門ノミネート!

ハイドリヒを撃て!
「 ナチの野獣 」暗殺作戦
チェコ、イギリス、フランス/ 120 分/ PG12
8.12 公開/配給:アンプラグド
shoot-heydrich.com

【 STORY 】 1941 年 冬。イギリス政府とチェコスロバキア亡命政府の指示を受け、二人の軍人 ヨゼフ・ガブチークと ヤン・クビシュが チェコに潜入。年を越え、二人は レジスタンスの協力を得て ハイドリヒを狙撃する機会をうかがっていた。愛する女性との生活を夢に見て 心が揺れ動きながらも、祖国のために 戦うことを誓う。しかし、それは 壮絶な悲劇の始まりであった。 ( 試写招待状より。一部省略 )

自らの命を犠牲にして、ナチスに立ち向かった男たちの奮闘を描くサスペンス。戦争を題材としたヒット作が続く中、迫力ある映像が高い評価を受けた、史実に基づく戦争映画です。
ハイドリヒとは、ヒトラー、ヒムラーに次ぐ〝 ナチス・ナンバー 3 〟、ナチス高官の中でも特に冷酷な性格で知られ、「 金髪の野獣 」と呼ばれた男。ホロコーストの最高指揮官としてユダヤ人絶滅を計画。後に ユダヤ人の強制収容所移送を主導した A・アイヒマンは、ハイドリヒの直属の部下。

雪景色の夜の森に、ヨゼフとヤンがパラシュートで降り立つ場面に始まる本作は、全編にわたって演出も撮影も非常にリアル。暗殺決行の場面と 大聖堂の中で繰り展げられるラストの戦闘場面は勿論、時間の経過や場所の変化を示すインサートショット ( たとえば、夜が明けて 外燈の灯が ひとつずつ消されていく見事なワンカットなど ) までが、完璧な構図による撮影と絶妙な編集のタイミングで、空気感さえをも如実に描写しています。

主役の キリアン・マーフィ ( ヨゼフ役 ) と ジェイミー・ドーナン ( ヤン役 ) は、今や旬の二男優。彼らと恋仲になる レンカ役の アンナ・ガイスレロヴァー、マリー役の シャルロット・ルボンと共に、揃って適役を好演。二組のカップル それぞれの恋模様も テーマにうまく溶け込んでいて、とてもとても良かったです。
ほんのちょっとしたコトかも知れませんが、年越しパーティの場 ( ナチス隊員の姿も数多く見受けられるカフェ ) で、「 目については元も子もない 」と 初対面のヨゼフから注意されたレンカが、「 リップスティックだけが現実を忘れさせてくれる。たとえ数時間でも 」と言い返す台詞が、僕には とても印象的でした。また、暗殺決行の直前、舗道で会ったヨゼフに、レンカが「 約束して 」とだけ囁いて、彼の接吻を受ける場面も感動的でした。

どちらかと言えば男性観客向きですが、彼氏に付き合って観るつもりでいた皆さんも、意外なほど 夢中にさせられる映画だという気がします。
脚本・監督・撮影は、スチール & ファッション・フォトグラファー出身、『 フローズン・タイム 』の ショーン・エリス。彼の次回作が 今から待ち遠しい。

 

 

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biteki-m@shogakukan.co.jp
(個別回答はできかねますのでご了承ください。)

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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