周期は28日? 45日? 知ってるようで知らないターンオーバーの話【スキンケア科学者・次田哲也博士の 「人生100年時代」の美肌学 vol.4】
科学的根拠のある、本当に正しい美容情報を。先進の皮膚生理学や気象情報、化粧品開発テクノロジーなどに関する膨大な知見から、今みんなが知るべき情報をわかりやすくひもといてお伝えします。
28日じゃなかったの? 最近よく聞く「肌の周期45日説」
私たちの肌は日々、新陳代謝(ターンオーバー)を繰り返しています。
どのくらいのサイクルで生まれ変わっているかご存じですか?

正解は、約45日!
というのも、肌(表皮)の土台となる「基底層」から新しい細胞(表皮角化細胞)が
生まれ育つのに約2週間
かかります。
その後に、細胞は「有棘細胞」「顆粒細胞」と形状や性質を変化させながら、
約2週間でいちばん外層の「角層」へ
到達します。
角層では、外界の刺激から体を守る強固なバリアとして大活躍。活躍している間に、後輩の細胞たちが次々と育ってきて肌の最外層へと押し上げられていきます。
約2週間働いたタイミングで、細胞は役目を終えて肌から離脱
します。「垢」としてはがれ落ちていくのです。
この一連の肌細胞の営みを「ターンオーバー」(新陳代謝)と呼びます。
*日数は資料によって若干の違いがあります。
データ引用:『あたらしい皮膚科学』
『皮膚をみるひとのための化粧品知識』
『日本化粧品検定2級テキスト』
ツギタ博士 助手コンド 一言メモ
近年は、約6週間を1サイクルとして捉えたスキンケアアイテムが増えている印象。
1日1層ずつはがれていく? 新陳代謝の本当の姿
肌のいちばん外側で頑張る「角層」には、細胞がだいたい10-14層*積み重なっています。そして、角層の細胞は約2週間(14日)で役目を終えてはがれ落ちていきます。
*顔の場合。層数は部位によって異なる。
まぶたや唇などは層が薄く、かかとなどは厚い。
データ出典:『皮膚の医学』(田上八朗)
そこで読者のあなたに質問です。ターンオーバーは早いほうがいいのでしょうか? それとも遅い方がいいのでしょうか?
「ターンオーバーを促進して、メラニンを含んだ不要な細胞を排出させる」「ターンオーバーを促進して、なめらかな肌に整える」「加齢で低下しがちなターンオーバーを促す」
そんなフレーズを聞くと、早いほうが美肌になれるイメージがありますよね。一方で
「ターンオーバーが早すぎて細胞が未熟なまま角層に押し上げられると、バリア機能の低い肌になってしまう」
といった事実もあります。実際、アトピー性皮膚炎などバリア機能障害の見られる肌では、ターンオーバーが早くなりすぎていることが多いのです。
つまりは、ターンオーバーは早すぎても遅すぎてもいけない。〝正常な状態〟が良い、ということになります。では正常な状態とは…? 理解していただくために、観察してみましょう。

市販のデジタルマイクロスコープで肌の状態を観察中。こんな小型のスコープでも、50倍レンズでキメの状態を観察することができます。

そしてこちらは肌の表面をテープで採取して1,000倍のレンズで観察したもの。このひとつひとつの粒が細胞です。私たちの体は細胞でできていることがよくわかります。
さて、うろこのように整列している大量の角層細胞は、どのようにはがれおちるのでしょうか。
こちら、肌の細胞を拡大した模型を作ってみましたのでご覧ください。

肌の角質細胞が、規則正しく積み重なっている様子です。その細胞のうち、上の黒い細胞がはがれようとしています。
細胞は六角形のような形をしているとよくいわれますが、正確には14の面をもつ平たい形をしているんですよ。この形を扁平の「ケルビン14面体」と呼びます。
ここでお伝えしたいのは、健康な肌では 肌の細胞同士はキレイに整列してくっついているけれど、あるときにそのつながりが外れてポロッと1枚だけはがれ落ちる ということです。

次にはがれ落ちるのは、赤くマークしている細胞です。先にはがれ落ちた黒い細胞のすぐ下層にある細胞ではなく、そばにある白い細胞がひとつはがれます。

そしてまた、その隣の細胞がはがれ落ちていきます。まるで、お行儀よく整列した細胞が順番待ちをしていてひとつひとつはがれ落ちていくようですね。このとき、角層の細胞たちはただ単に順番待ちをしているのではありません。きれいに整列しているときは、お互い手をつなぐようにすきまなく整列して肌のバリアを強固に保っています。そして順番がきてはがれおちる瞬間、つないでいた手を離して、ポロッとはがれ落ちていくんです。卒業する最後の最後まで、肌を守るためにオシゴトをする角層細胞…そう思うと愛しくなってきますよね。
「規則正しくターンオーバーしている状態」とは、このようにきれいに整列した細胞から、役目を終えた古い細胞が一枚ずつはがれ落ちていく状態のことです。
細胞自ら生み出す「酵素」がターンオーバーの要です!
細胞同士がふだんは仲良くつながりあっていて、いざサヨナラとなると後腐れなくスッと離れる……。そんなワザが可能なのは、とある「酵素」が細胞の周りに存在しているからなのです。
こちらは、角層を断面にして見た、よくあるモデルです。
レンガのような四角いものが細胞で、その周りは細胞間脂質(セラミドなど)で満たされています。そして、赤い丸印で示しているのがたんぱく質。スナップボタンでくっつけるように細胞と細胞をつなぎ止めています。

これらのたんぱく質を「コルネオデスモソーム」(接着因子)といいます。肌の細胞が生まれ育つ過程で、こういった接着因子を切る酵素や、セラミドなどの細胞間脂質が作り出されます。
ツギタ博士 助手コンド 一言メモ
生まれてからはがれ落ちるまでの約45日間の間に、お行儀良く並んだり、くっつき合ったり、役目を終えた人だけそっとサヨナラしたり…と大忙しの細胞たち。その間に酵素や潤いといった耳なじみのある〝機能的成分〟を自ら生み出したり、バリアを形成したりとさまざまな〝オシゴト〟をしてくれているんです。
そのおかげで私たちの肌はすこやかな状態を保てていると思うと、愛おしい気持ちになりますよね。だから、頑張っている肌を強くこすったり、無防備に紫外線にさらすなんてもってのほか! たっぷりと保湿してよい環境を保ち、いたわってあげましょう。
健やかなターンオーバーに着目したコスメ
細胞同士をくっつける接着因子の働きが悪くなってしまうと、肌のハリ感にも影響が出てしまうことに着目。蓄積しがちな「糖化デスモソーム」を洗い流すアイテム。写真は洗顔料ですが、クレンジングクリームもあります。
ポーラ B.A ウォッシュ 100g ¥12,100(3月1日発売)
表皮のターンオーバーに着目し、そのサイクルに丸ごと働きかけて生まれ変わらせていく美容化粧水。1本を、ターンオーバーの1サイクル42日間で使い切る設計。
カネボウインターナショナルDiv. カネボウ ジェネレイティング エッセンシャルズ 168ml ¥13,200
表皮細胞が生まれて形を変えながら育っていく過程で、細胞自らがセラミドなどの保水成分を生み出す現象に着目。その働きをサポートして潤い改善する有効成分「ライスパワーNo.11」を配合した先行美容液。
ONE BY KOSE セラムヴェール ディープリペア 60ml ¥5,940(編集部調べ)
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
肌や化粧品に関する専門的な内容を、わかりやすくかみくだいて伝えるスキンケア・サイエンスコミュニケーター。博士(工学)。大手化粧品メーカーにて30年以上にわたり、化粧品の臨床評価技術の開発をはじめ、皮膚科学に基づく基礎から応用の研究開発に従事。元東京農工大学客員教授。現在はフリーランスとなり、その活動の幅を広げている。『美的GRAND』本誌でも、サイエンスに基づいてケア法や最新コスメを解説する特集が大人気。https://kairossc.com