サウナの“ととのう”は「多幸感」の言い換えってホント?真相を専門家に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日常生活で生まれる美容や女性のライフスタイルの疑問を医師や専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は「サウナ」について。サウナの“ととのう”は「多幸感」の言い換えってホント? 日本サウナ学会代表理事の加藤容崇先生にお話を伺いました。
Q:サウナの“ととのう”は「多幸感」の言い換えってホント?
“サウナー”や“サ活”などの言葉を耳にするようになり、サウナに興味のない人でも「サウナが流行っている」と感じるほど。そんな中で“ととのう”という言葉も聞くようになりましたが“ととのう”と心にも良い影響があるんだとか。さっそく、この疑問について日本サウナ学会代表理事の加藤容崇先生に聞いてみました。
A:ホント
「交感神経と副交感神経が急激に切り替わることで幸福感を感じることができます」(加藤先生・以下「」内同)
“ととのう”とは?
「“ととのう”とは、簡単に言うと“とても気持ちがよくて、心身ともに快調に感じられる状態”を指します。“ととのう”の代表格であるサウナで例えると、3つの幸せホルモンである心の平常を保つセロトニン、やる気や達成感をもたらすドーパミン、そして心身の苦痛を和らげ快感をもたらすエンドルフィンが分泌される状態です。しかし、ホルモンなど体内でたんぱく質を生成すると、ホルモンの材料であるアミノ酸はどんどん消費されてしまいます。アミノ酸の中でも体内で生成できない必須アミノ酸は食事により補給することが必要です。ちなみに、レモンやグレープフルーツなどの柑橘系の香りと味は交感神経を活性化させ、気分が高揚するため、サウナの “ととのう”の追体験ができるかもしれません」
“ととのう”がもたらす心への影響
「サウナで“ととのう”と交感神経と副交感神経が急激に切り替わることで体が“バグる”感覚が得られます。私が感じることはリラックスしているけど、眠いわけでなく、むしろ意識は清明に晴れている感覚です。心が穏やかになったり、幸福感を感じることができます。フィンランドの研究によると、週4~7回サウナに入る人は精神疾患リスクが78%減少しているという結果もあります」
サウナで自律神経も整う?
「そうですね。高温のサウナ室と水風呂の交代浴は血管の反応を強く起こします。それが自律神経の訓練となり、自律神経の調整力を高めます」
サウナが注目されている理由は?
「これまで日本では、サウナは“中年男性の娯楽”という位置づけでした。そして、基本的にはひとりで行くもので、若い世代や親子、カップルなどと連れ立って体験を共有する、あるいは、異なる世代にサウナのよさを伝えていくという文化もありませんでした。だから、中年世代にヒットするかどうかがブームの鍵で、下火となるのは、オイルショックなど、社会的情勢の影響が強い傾向がみられます。
今回、サウナがヒットしたきっかけも、社会情勢。新型コロナウイルス感染症流行による社会情勢の混乱を乗り切ろうと、個人個人がパフォーマンスを上げるため、癒しを求めサウナに殺到したのです。そして、それを後押ししたのが『マンガ サ道』などサブカル的な側面です。これは、サウナ、水風呂、外気浴、という入り方のフォーマットを普及させ、先輩や親にサウナの入り方を教わらなくても入り方が分かる…ということで、多くの人がサウナを利用するきっかけとなったのです。
また、若者を中心に会社での飲み会を嫌う風潮がこれをあと押ししました。会社の飲み会は行きたくないけど人とのコミュニケーションは取りたい、そんな若年層に、気の合う仲間とのサウナ会が流行しています」
サウナの入り方のコツは?
「サウナの入り方のコツは、なんといっても“無理をしないこと”。とくに最近では、激アツサウナや、冷たすぎる水風呂(グルシンという、水温が一桁台の水風呂)など、過激なセッティングがクローズアップされていますが、過剰な体への負荷は大きなストレスとなります。特に女性は性ホルモンの分泌が抑制されるという報告がありますので気を付けてほしいところです。その日の自分にコンディションをきちんと把握して、体への負荷を抑えながら利用することが、自律神経を大きく活性化させることに繋がります。
そして、サウナのあとの体のケアも重要です。体内の水分量が減り、乾燥しやすくなっていますから、まずは体の表面は水分の蒸発を防ぐオイルなどを塗るのがおすすめです。
体の内面のアフターケアもとても大事です。サウナに入ると、エンドルフィン、ドーパミンやセロトニンなどの多幸感を感じるいわゆる“幸せホルモン”が出ます。しかし、出るということは体内の原材料が消費されるということ。特に、体内で合成できない“必須アミノ酸”は枯渇すると不眠になったり意欲が低下したりと悪影響が出ます。トリプトファンやフェニルアラニンといった必須アミノ酸を補充することが心身ともに“ととのう”上でも重要なのです。
食品で言うと、卵や大豆、牛乳や乳製品にトリプトファンとフェニルアラニンが多く含まれていますので、サ飯の際にも気にしてみてください」
Point
・体への負荷を抑え、無理をしないこと・乾燥しやすい体表面の水分蒸発を防ぐためオイルなどを塗る
・サウナ後はトリプトファンやフェニルアラニンなどの必須アミノ酸を補充する
サウナに入ったあと食欲が増すのはなぜ?
「サ飯選びも重要です。サウナに入ると味覚が敏感になり、ご飯が美味しく感じられます。副交感神経が活性化し胃腸の動きが活発になるため、それが食欲増進につながるようです。しかし、食べ過ぎはよろしくありません。“ととのう”ことで消費した必須アミノ酸も補える、旬の野菜を取り入れたサラダがおすすめです。血糖値の上昇を穏やかにしカロリーの抑制もできますよ」
心身ともにととのうサラダのレシピ
「この時期におすすめのレシピを紹介します」
かぶとマッシュルームとくるみのサラダ
■材料(1人分)
ブラウンマッシュルーム…40g(10g×4個)
カリフラワー…60g
かぶ…1個
油…適量
生姜…10g
もち麦と雑穀ミックス(炊いてあるもの)…40g
ガルバンゾー(水煮)…50g
くるみ…10g
■作り方
(1)
生姜は千切りにする。マッシュルームは縦半分に切る。カリフラワーは小房に分ける。かぶはくし形に切って皮をむく。
(2)
フライパンに油をひいたら生姜を入れて加熱し、香りが出てきたらカリフラワー、かぶ、マッシュルームを綺麗に焼き色がつくまで加熱する。
(3)
器にもち麦と雑穀ミックス、ガルバンゾーを敷き、(2)を乗せて、粗く砕いたくるみをトッピングしてごまドレッシング※をかける。
※自家製ごまドレッシング レシピ
<材料>
白ごまペースト…大さじ1 すり白ごま…大さじ1 砂糖…大さじ1 牛乳…大さじ2 米油…小さじ2 塩…ひとつまみ 穀物酢…小さじ1しょうゆ…小さじ1
<作り方>
ボウルに全ての材料を入れて混ぜ合わせる。
レシピ監修:西岡麻央
文/土屋美緒
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
群馬県出身。北海道大学医学部医学科卒。北海道大学医学部にて特任助教として勤務したのち渡米。ハーバード大学医学部に勤務。帰国後、慶應義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット、北斗病院腫瘍医学研究所に勤務し、癌ゲノム医療を行っている。加速する医療費増加を目の当たりにし、予防医療の重要性を認識。健康習慣による予防が最高の手段だということに気づき、予防医療としてのサウナを研究するため、日本サウナ学会を設立。自身も筋金入りの「サウナー」であり、サウナブームを牽引する人物のひとり。著書に『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社)がある。