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2022.12.7

松田聖子さんをディーバに変貌させた眉の威力【天野佳代子「老けない生活」vol.8】

もっとキレイになりたい、華やかになりたいと思うなら、アイシャドウやアイラインを変える以前に眉を変えてみましょう。美の偏差値が一気に上がる可能性大です。80年代、アイドルのトップを走っていた松田聖子さんがそうだったように。【天野佳代子「老けない生活」vol.8】

80年代、アイドルはみんな自分メイクでした

「眉は顔の額縁である」、あるいは「眉は顔の屋根である」と昔から言われています。絵画にとっての額縁、家屋にとっての屋根同様に、眉は顔全体の見栄えを左右する重要なパーツであることを示した言葉です。
こんなふうに例えられるまでもなく、誰もが眉の大事さは知っています。長さや太さを少し変えただけでも顔の印象が変わること。優しい顔に見せたい、知的な顔に見せたいなど、自分のなりたい顔を明確に実現するのも眉であること。わかってはいるけれど、テクニックを要するのも眉。なかなか満足のいく形を見いだせず、現状でとりあえず満足しながら、いじることをやめてしまっている人も多いことでしょう。年齢と共に顔つきは変化しています。今の顔に見合った眉バランスを見つけるつもりで、時間のあるときに眉をあれこれいじってみてください。思わぬ顔のアップデートが見込めるはずです。

この「眉で人の顔は変わる」という話しが出る度に、鮮明に思い出すことがあります。ずいぶん昔の話しになりますが。
遡ること35年程前、長いこと芸能界に関わる仕事に従事していました。某芸能事務所に所属する歌手のファンクラブ会報誌の制作をまかされ、彼ら彼女らを取材するために各テレビ局に出向いたものです。取材は歌番組の本番の合間を利用して、もっぱら楽屋で行われたので、ほかの歌手のおしゃべりが耳に入ってきたり、素顔を垣間見たりは日常茶飯事。

頃は80年代。松田聖子さん、中森明菜さんを筆頭にアイドル全盛時代。アイドル同士はみんな仲が良く、楽屋のロビーはまるで休み時間の教室のように賑やかでした。
さらに当時の楽屋の風景を思い出すと、特に個室ではない楽屋の場合では、多くの歌手の使用コスメやメイク法を見ることができました。アイドルはどなたも自分でメイクをされていて、メイクアップアーティストをつけるのはCM撮影くらい。皆さん若いから肌に粗もなく、マスカラやリップを塗るだけで見栄えのいい顔に仕上がったので、プロの手を借りる必要がなかったのだと思います。

80年代の太眉を決定づけた、嶋田ちあきさんの超絶テクニック

ただ、そんな中、ひとりだけ早々にメイクアップアーティストをつけた方がいました。それは松田聖子さん。デビューして4年程たったとき、彼女の顔がガラリと変わったこと、覚えている方は少なくないはず。それはあきらかにメイクの変化でした。目元、口元が際立ち、輪郭もシャープに。それまでの幼い顔立ちは消え、美しさをたたえた大人の女性へと変貌を遂げました。ファンならずとも、日本全国が彼女のこの変化に息を呑んだはずです。もちろん私もそのひとり。
メイクアップアーティストは嶋田ちあきさん。彼がついてからの聖子さんは見る度に輝きを増し、まさに大輪の花が開花していく有りようでした。
ファンデーションの塗り方、アイシャドウ、リップの色選びなど、流行りを反映させながら彼女が最も輝くメイク法が嶋田さんによって編み出されたと想像しますが、どこよりも何よりも手が加えられたのは眉毛。それまではほとんど触れられていなかった薄めで短めの眉は、嶋田テクニックによって太く長く、存在感のある眉に変わったのです。

よろしかったら、ネット上で『Rockn’Rouge』(1984年リリース)と『天使のウインク』(1995年リリース)のレコードジャケットを見比べてみてください。その変化に驚くはずです。

2002年『美的』2月号掲載 Photo by 富田眞光

この嶋田眉は彼女に多大なる美の恩恵をもたらしたと思います。それまでは幼く頼りない表情を見せていた聖子さんですが、存在感のある嶋田眉によって意志のある凜とした顔立ちを得た途端、衣装も私服も一気に大人っぽく。歌う表情にも一層の色気が宿り、ボーカリストとして歌の世界観を広げました。アイドルからディーバへと変わった瞬間だったと思います。眉毛の力、恐るべし。メイクの力、恐るべしです。このときの聖子眉が80年代の潮流になったことは言うまでもありません。
聖子さんだけではなく、眉を変えて美しさが倍増した方はたくさんいらっしゃいます。誰もが聖子さんのように大きな変貌を遂げるとは限りませんが、少なくとも眉は美を左右する威力のあるパーツ。何歳になってもあきらめずに追求していただきたいと切望します。

余談ですが、そこから20年程たって『美的』が創刊され、編集スタッフになった私は嶋田ちあきさん担当に。80年代当時、私が担当しているシンガーも嶋田さんにヘアメイクをお願いしていたので、取材と称して楽屋に入り、片隅で嶋田さんのメイクテクをじっと見ていたことがありました。『美的』の撮影時にそのことをお話したら、気さくな嶋田さんらしく「なんだ、声かけてくれたらよかったのに」って。当時ペーペーの私が嶋田さんにお声がけすることなんて到底できるはずもありません。今、嶋田さんはバンコクを拠点に、メイクアップアーティストとして、製品開発者として多岐に渡って活動されておられます。嶋田ちあきさんという希代の天才アーティストと、またご一緒できる日がくることを願っております。

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美的GRAND編集長・美容エディター
天野佳代子
音楽ライター、作家、そして『美的』創刊当時からのエディターを経て、現在は『美的GRAND』編集長。年齢不詳な美肌っぷりが『マツコ会議』ほかテレビ番組で話題になる。初の美容本『何歳からでも美肌になれる!』(小学館刊)は今なお大ヒット中。『美的』本誌にて旬のコスメを紹介する『カヨッキズム』を連載中。面白そうなことを見つけては、どっぷり沼にはまるタイプ。最近は休みのたびにスパイスカレー作りを楽しんでいる。

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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