美的GRAND
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2025.1.10

「古民家」という暮らし方から時を重ねたものだけに宿る価値を知る|美的GRAND

人生でたったひとつの自分の顔には、頑張って生きてきた証である、個性が刻まれています。その魅力に気づき、育んでいくために、同じように個性や味がにじみ出た「古民家」を愛する人たちの気持ちを知ることから始めましょう。

時が経たないと出ない“味”というものがある

各地の主要な都市では再開発が進み、古いビルや木造建築物が一掃されて、整備された公共施設やマンションなどに姿を変えています。新築不動産の価格高騰は今もまだ続いていますが、それでも都心部では抽選で当たらないと購入できない程の人気だそうです。一方で、都心部から少し離れたエリアに木造の古民家を購入し、リノベーションして住むことも、憧れのライフスタイルとして今注目を集めています。「古民家に居心地の良さを感じるのは、決してシニア世代だけではありません。むしろ20代、30代など若い世代の方から問い合わせをいただくことも多いです」と語るのは、一般社団法人全国古民家再生協会の山名健太さん。古民家再生や住まい全般にまつわるセミナーや研修、視察などで、日本全国を飛び回っている方です。

仕事や家事に追われて日々忙しく過ごしていると、機密性や耐震性、防犯面、その他さまざまな理由から、無難に新しい建物を選びがち。そんな利便性をおしてでも住みたいと思わせる、古民家の魅力とは?「古民家を好む方には、画一的な建物にはない、唯一無二の個性を愛する方が多いと思います。新しい建物には新しさという魅力がありますが、建物には時間が経たないと出ない“味”というものがあります。古民家をすぐに造ることはできませんよね。人の手ではどうすることもできない、経過した時間が価値となり、建物の風合いや個性を作り出しているのです」

ハッとさせられる言葉です。どちらが良いという話ではなく、新しいものにも古いものにも別軸の尊さがある。そして、互いになり替わることは決してできないのです。話を人に置き換えると、私たちは生きた人間であり、自分の体という住みかは一生にひとつだけ。古くなったからと新築に引っ越すことはできません。それならば、古民家のように素材を丁寧に手入れして、時にはリノベーションのようなケアも加えつつ、個性を育てていくのが幸せです。

一筋縄ではいかないけれど上手に住めば満足感が高い

古民家の魅力、そこに住むことについて、もう少しお話を伺いました。
「実は木造住宅に使われている木材は、完成して時間が経つ程、強度が高くなるのです。木材の中に含まれる水分が徐々に抜けて乾燥し、それによって強度が増したり、ねじれなどの味や風合いが出てきます。杉や松なら完全に乾燥するまで約800年、その後徐々に強度が低下しますが1000年以上はもつとされています。木造建築は、本来命が長いものなのです」

ただしもちろん、そこには住む人のこまめなケアや寄り添いが欠かせません。「湿気が籠もると木材が腐ったり、害虫が発生しやすくもなるので、換気は欠かせません。また、床板や天井を張り替えたりといったリノベーションも必要になります。古いイコール安価ではなく、快適に暮らす上でそれなりにコストもかかります。一筋縄では行かない、でも上手に住めば満足感も価値も高い、それが古民家です」

聞くにつれ、人が年を重ねることとの共通点がたくさん。シワも表情の変化も、滲み出る個性として愛しく思えるには、若いときよりも少し心を砕いて、丁寧にお手入れをすることが大切なのです。

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古民家で暮らすためのポータルサイト『クロニカ』を運営する代表の方の、古民家リノベーション実例。一軒家を建てようと検討する中で、古い家をリノベーションしてオンリーワンの住まいを造るという選択肢に。床板や天井を取り替え、壁を塗り替えるなどを行っています。「古民家は元々のデザインが洗練されているので、老朽化した部分を取り替える以外、内装には実はそんなに手を入れる必要がないのです」とは、代表の方の言葉。
https://kuronika.com

一般社団法人全国古民家再生協会 事務局次長

山名健太さん

『美的GRAND』2025冬号掲載
写真提供/ iStock、クロニカ、amanaimages、ゲッティイメージズ 構成/大塚真里

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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