ルイーズ・ブルジョワが愛したゲランの名香「シャリマー」。ゲランとアートとの深い関係

20世紀を代表する最も重要なアーティストのひとり、ルイーズ・ブルジョワ。六本木ヒルズのパブリックアートとして存在感を放つ、巨大な蜘蛛が卵を抱く彫刻《ママン》を目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。ルイーズ・ブルジョワは、彫刻、ドローイング、絵画、パフォーマンスといったさまざまなメディアを用いながら、男性と女性、受動と抽象、意識と無意識といった二項対立に潜む緊張関係を探求してきた作家です。そんなルイーズ・ブルジョワの大規模個展「地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」が六本木ヒルズ・森美術館にて開催しています。
ゲランとアートの関係性を紐解くトークショーに、俳優・笠松将さんが登場
「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」には、ゲランが協賛しています。この展覧会を記念して、プレス向けイベントを開催。俳優の笠松将さん、『GQ JAPAN』ヘッド・オブ・エディトリアル・コンテントの石田潤さん、森美術館キュレーターの椿玲子さんが登壇し、ゲランとアートの関係性についてのトークショーを行いました。
ルイーズ・ブルジョワの作品《蜘蛛》(1997年)に、ゲランの香水「シャリマー」が使用されていることについて、椿玲子さんは「部屋を大きな蜘蛛が守っているような作品で、その部屋の中には彼女と家族が実際に所有していたものが飾られています。それは彼女にとって、修復工房を営んでいた母へオマージュなんです。ルイーズ・ブルジョワは、シャリマーをとても愛用してました。作品に使用することで、その記憶、彼女の時間を永久に残したいという気持ちだったと思います。」と、ルイーズ・ブルジョワにとって「シャリマー」が大切な存在であったことを解説。
最近香水をつけ始めたという笠松将さんは、「香水は贅沢品だと思っていましたが、つけることで気持ちのスイッチを切り替えやすくなりました。偶然にもゲランの香水を愛用しているんです。役作りのイメージを作る時にも役立っています。」と香りを纏うことによる気持ちの変化を語りました。
ゲランは創業当時よりデザインをアーティストに依頼したり、「シャリマー」を生み出した3代目ジャック・ゲランは、無名の頃から印象派のコレクターであるなど、ゲランとアートとの関係性はとても深かったそう。
俳優という、自身もものづくりをする立場でもある笠松将さんは「何百年もの間、利益と関係なく、アーティストを支援しているというのは素晴らしいと思います。俳優と監督の関係にも通じる、お互いが刺激し合えるポジティブな関係だと思う。」とコメント。
椿玲子さんは「老舗のメゾンがずっと新鮮さを持って続いていくためも、アーティストとのコラボレーションは大切。アーティストたちもメゾンにサポートしてもらえて、とてもいい関係だと思います。」と語りました。
巨大彫刻《蜘蛛》に使われたシャリマーの香水瓶
ルイーズ・ブルジョワ《蜘蛛》 (1997) と共に。「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」(2024.9.25(水)~ 2025.1.19(日))、森美術館(東京)にて。© The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York
ブルジョワの多作な作品の中でも特に注目すべき作品が、1997年に発表された《蜘蛛》です。「蜘蛛」は繰り返し登場するテーマで、家業のタペストリー工房を営み、ブルジョワが「親友」とみなしていた温和で勤勉な実母を象徴しています。また、糸で傷を繕い、癒す修復家である一方、周りを威嚇する捕食者でもあると説明しており、母性の複雑さを表現するものでもあります。この作品には、母親のお気に入りだったと言われるゲランの名香「シャリマー」の香水瓶が、蜘蛛が守る檻のなかに、ブルジョワが大切に保管していたさまざまな私物とともに飾られています。
ブルジョワが「嗅覚には魂を揺さぶり、癒す力がある」という言葉を残したように、《蜘蛛》において、シャリマーは彼女と母親の関係や思い出を呼び起こすモチーフとして使われています。
ルイーズ・ブルジョワと《短刀の女》(1969-70)、シャリマーの香水瓶、母の鏡、 1980年 Photo: Mark Setteducati, ©The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo and VAGA at Artists Rights Society (ARS), NY
ブルジョワ自身も愛用していたシャリマー。本展覧会の中でも、遺品の香水瓶を展示しており、その場で香りも体験できます。ブルジョワは「香りは記憶のように、現れては消え、また現れる……それは香りが時間の継続であることの証。私は何十年間も忠実にシャリマーを愛用してきた。それは忠誠心。それは時間」という言葉を残しています。
創業以来続くゲランとアートとの深い関係
ゲランは1929年のブランド創業以来、芸術との関係性を築き続けています。名だたるアーティストとのコラボレーションを重ね、そのクリエイションは、これまで数多くの常連客やコレクターに愛されてきました。
名香「シャリマー」は、ゲランの歴史的な芸術の証です。1925年にジャック・ゲランが作ったこの先駆的なアンバーフレグランスは、インドの王室の永遠の愛の物語のエッセンスを表現しています。そして、レイモン・ゲランがデザインした象徴的なシャリマーのボトルは、庭園に流れる泉と優雅な建築にインスピレーションを得た革新的なデザインで、パリ万国博覧会で最高賞を受賞しています。
また一方で、ゲランはエキシビションの開催、創作活動を支援する活動などを通して、さまざまな芸術を結びつける架け橋となっています。現在もアートシーンにおける主要な国際的イベント「アート・バーゼル・パリ」のパートナーを務め、多彩な活動を展開しています。
この秋も、シャンゼリゼ通り68番地 本店ブティックでは、韓国のコンテンポラリーアートのエキシビジョンを開催。また、「アート・バーゼル・パリ」の開催を記念し、フランス人アーティストのジュリー・ボーフィスとコラボレーションしたフレグランスを発売するなど、精力的にアートシーンとの関わりを続けています。
ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ
さまざまなアーティストに多大な影響を与えているブルジョワの芸術は、現在も世界の主要美術館で展示され続けています。日本では27年ぶり、また国内最大規模の個展となる本展では、100点を超える作品群を、3章構成で紹介し、その活動の全貌に迫ります。
特設ショップでは、ブルジョアが愛した「シャリマー」も販売。さらに、その年だけの特別な香りが登場する「ミレジム コレクション」より、「シャリマー ミレジム ジャスミン」も特別販売します。シャリマーのはじまりの地であるインドと、ゲランが愛してやまない6つの香りの素材の一つである甘美で濃密なジャスミンにオマージュを捧げた今年だけの特別なコレクションです。
自らを逆境を生き抜いた「サバイバー」だと考えていたルイーズ・ブルジョワ。生きることへの強い意志を表現するその作品群は、見るものに生きる勇気を与えてくれます。自身の複雑な感情や記憶とともにブルジョアが愛した「シャリマー」にも注目してみてください。
ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ
会期:2024年9月25日(水)~ 2025年1月19日(日) 会期中無休
開館時間:10:00~22:00
※火曜日のみ17:00まで
※最終入館は閉館時間の30分前まで
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
シャリマー ミレジム ジャスミン
50mL 17,710円(税込)
2024年10月1日(火)より一部店舗・数量限定発売
(森美術館展示会会場、伊勢丹新宿店 本館1階フレグランスコーナー、ラ ブティック ゲラン ギンザ シックス、阪急うめだ本店、日本橋髙島屋S.C. 、大阪高島屋、心斎橋大丸、京都伊勢丹、銀座三越)
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。