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2023.8.7

「石井美保さんは清潔感が増し続ける稀有な人」齋藤 薫さん特別寄稿|美的GRAND

【美容ジャーナリスト 齋藤 薫さん特別寄稿】フェミニンな印象なのにマスキュリンな中身。柔軟なのにブレない意志と言葉。ずっと変わらないのに、いつも新鮮。いくつもの相反した魅力をもつ美容界の奇跡の47歳はこれからどこへ向かうのか――

石井美保、美の思考回路

ブラウス¥30,800(プレインピープル青山〈プレインピープル〉)ピアス¥105,600(ドレスアンレーヴ〈A.T.C.S〉)

「石井美保」という人は

フェアな謙虚さを秘めた客観性
必要以上に褒められることを、望まない人がいる。以前、ある女優さんの記事を書いた時、“そんなに褒めないでほしい”という校正が入った。そういう反応をするのは、正直でフェアな謙虚さをもつ、客観性ある人。この人も、そういうタイプである気がする。どんな褒め言葉にも、不用意に舞い上がったり、慢心したりしない。実際、写真で見る以上の美しさは、本当に息を飲むほどだったりするのだけれど、それをくどくど語られるのを望まないのだろう。想像に過ぎないが「それより“昔はくすんでいた私の肌がなぜキレイになったのか”を聞いてほしい」そう言いそうな人である。自分が賛美されるより、何か1つでも多く役に立つことを伝えたいと。美に対し、そういうフェアさを持つ人だ。ともかく気負いがなく、気取りもない。裏表がなく、嘘がない、動画で話すのを見た瞬間にそれが伝わってきた。そうした人柄がまた、この人一流の、涼やかな美しさにつながっているのである。

清潔感が増し続ける稀有な人

初めて石井美保さんという人を知ったとき、なんという凜とした清潔感のある人なのだろうと思ったもの。まるで「白鳥」を踊るバレリーナのようと。私はずっと前から、“美しさの正体は、すなわち清潔感である”と訴え続けてきた。当たり前に聞こえるかもしれないが、清潔感ほど成立させるのが難しいものはない。なぜなら歳をとるほどに、人はひとつの宿命として清潔感を失っていく。もっと言えば、美容もおしゃれも実はすればするほど清潔感が失われる可能性をはらんでいるから。なのにこの人は年齢を重ねるほどに、逆に清潔感を増し、磨くほどに、また有名になるほどに、新たな清潔感を積み重ねていて、それ自体本当に稀有なこと。「奇跡の47歳」は何が奇跡って、この年齢では、ありえないような清潔感なのである。

簡潔な言葉で表現する研ぎ澄まされた知性
もちろん石井美保さんといえば、真骨頂は透明感。肌の透明度はまさしく息を飲むほどと言われるが、その上位概念に清潔感という大きな美の体系があると考えてみてほしい。この人の専門分野だから当然のことなのかもしれないが、まつ毛の毛先にまで、一本一本の指先にまで清らかさが溢れていること、そして息までが清らかそうな歯の美しさ、5歳の少女のような白目の白さ。さらには華奢なウエストと長い手脚、そこまでが揃って生まれるのが、非の打ち所ない清潔感。それでも説明しきれない無類の清らかさは、言わば外連味のない語り口からも来ているのだろう。求められることを的確に、ほとんど無駄のない簡潔な言葉で表現する研ぎ澄まされた知性にすら、清潔感を感じさせる人なのだ。曖昧さがなく、迷いも感じさせず、確信をもって生き方までを指南し、すでに独自の法則を数々作ってきたブレのない提案は、それ自体が清々しい。ましてやわずかも媚びるところのない“人との対峙”の仕方も含め、命まるごと濁りのない人なのである。それこそ謙虚さもこれ見よがしだと、むしろ逆に清潔に見えなかったりするものだけれど、冒頭で語ったように、とてもフェアな謙虚さを秘めた客観性までが涼やかだ。

サバサバ マスキュリンな精神性とのバランス
一方で、誰もが口を揃えるのは、“とことんフェミニンで甘やかな見た目からは想像がつかないほど、サバサバした人”。ただし、自ら私はサバサバしているのと称する人が傲慢だったり乱暴だったりするサバサバとは全く違う。他者にサバサバしているのではなく、あくまで自らにサバサバしている、だからそのまま好感度につながる。そうしたことも含めて澱みがない人。ちなみに美の正体が清潔感なら、人の魅力の正体は、矛盾にあると私は思う。一見とても女らしいのに、クールで男性的だったりすること。いつもふんわりとした柔らかいドレスを着ているのも、いつもピンヒールを履いているのも、無意識にでもマスキュリンな精神性とのバランスをとっているのだろう。正直言ってどちらかに偏っていたら、ここまで圧倒的な支持を得たかどうかわからない。プリンセスのような嫋やかさと、騎士のような凜々しさ、その相反するベクトルを併せ持つから、ここまで人を惹きつけるのだ。

「石井美保」の本当の奇跡が輝くとき

あるインタビューでは、仕事の依頼には80%でも100%でもなく120%で答えることをモットーとしていると語っている。カリスマ美容家にもなろうとしてなったのではない。30代で起業し、朝から晩まで食事もできないほど忙しかった時代を経て、いつの間にか注目の的となり、気がつけばメディアを超えTVでもラジオでもオファーが絶えない、全くスペシャルな存在となっていた。つまり大きな目標はあえて持たなかった。目の前にあるものを必死で片付けることが今につながっただけ、と語る。でも世の中、そういう人ほどますます大きな存在になるようにできている。50代、60代、70代と、美容の進化とともにこの人はもっと劇的に輝くのだろう。“大人の清潔”の破壊力はとてつもないから。これほど美しいのに、ズルくない人だから。むしろこれから、透き通るような光を放つ本当の奇跡を起こすかもしれない。

『美的GRAND』2023夏号掲載
撮影/柴田フミコ ヘア&メイク/中野明海 スタイリスト/大沼こずえ 構成/松村有希子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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