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スキンケアニュース
2025.7.31

スキンケアとメイクの境界線はどこ?【中年男性、トキメキ美容沼へ vol.23】

こんにちは、ライターの伊藤聡と申します。私は男性のためのスキンケア本『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社)を出しました。みなさんは、スキンケアに興味がありますか。スキンケアという言葉から、どんなことをイメージしますか? こちらの連載では、スキンケアに親しんでいく上で役に立つかもしれないあれこれをテーマに書いていきます。トライしてみれば楽しくて奥が深い、スキンケアの世界を一緒に探求していきましょう。

どこまでがスキンケアで、どこからがメイクなのか

スキンケアとメイクの境界線は、どこにあるのでしょうか。これはなかなか難しい問題です。たとえば日焼け止めがそうなのですが、顔に塗ると少し肌の色が白っぽく変化するような製品があります。日焼け止めクリームそのものは紫外線対策ですからスキンケアに分類されますが、実際に使用すると、なんというか涼しげな肌の色になる場合があるんですよね。肌のトーンが均一に整うのです。いくらか印象が変わり、結果として多少メイクの要素がくわわってきます。多くの男性は、スキンケアとメイクにははっきりとした境界線があると考えていますが、実はその区分はそこまで明確ではなく、「スキンケアだが、メイクとも呼べなくはない、あいまいな領域」が存在します。男性のスキンケアに対する抵抗感は減ってきましたが、メイクにはまだ拒否反応があります。しかし、ひとたびスキンケアに足を踏み入れた男性は「スキンケアだが、メイクとも呼べなくはない、あいまいな領域」を発見することになるのです。

スキンケアは主に肌質を改善する作業なので、たとえば「毛穴が目立たないようにビタミン系の美容液を塗る」といったことをしますが、実際そこまですぐに改善するわけではありません。多少はよくなったような気がする、といった中途半端な状態が続きます。こうした日々の地味な積み重ねをしていると、美容に詳しい先輩から「毛穴が気になるなら、ファンデーション使っちゃえば?」というアドバイスをもらったりします。ひとまず、昼間はファンデーションで毛穴を隠しておき、夜は美容液やパックで毛穴の引き締めをおこなう、という悪魔のささやきです。「毛穴を目立たなくする」ことがゴールであるなら、高速道路で行くか、一般道を行くかの違いは気にせず、とにかくゴールへ到達すればいいという考え方に、そうした柔軟な発想のなかった私は「なるほど」と納得したものでした。

ズルをしている気がする 

しかし同時に、ファンデーションで毛穴を隠すのは邪道なのではないかとも感じていました。粉飾決算していた企業の社長ってこんな気持ちだったろうか。ズルをしている気がする。そういう小手先のテクニックではなく、自分の肌で勝負したいと思うわけです。なにかを顔に塗って、気になる部分を隠すことに抵抗感が生じたのですが、これは多くの男性に共通する気持ちではないでしょうか。私は長らく、男性のメイクに対してあまりいい印象を持っていませんでした。ゲームを自力で進めずにすぐ攻略サイトを見てしまうとか、話題のドラマを3倍速で見てから感想を語るとか、そういう行為に近い印象を持っていました。

正攻法ではない、という私の思い込みは、「メイクは男らしくない」という旧来的な発想にもとづいていたのでしょう。女性と比較して、周囲から容姿でジャッジされることが少なく、容姿と自己肯定感がそこまで密接に結びついていないからかもしれません。私の場合、メイクに興味はあったものの、こうした抵抗感を克服するのが意外にたいへんでした。かつては、あれこれと理由をつけてメイクを避けていた私でしたが、日焼け止めの場合、「これは紫外線対策、スキンケアなので……」と言い訳をしながら使えるという利点がありました。ですので、男性であれば、当初は日焼け止め機能がついている製品を使うところから始めるのがいいかと思います。心が慣れるまでには多少時間がかかるものです。

 よりよい状態へ持っていく

メイクに関していえば、女性は主に「そうすると気分がいいから」「自己肯定感が上がるから」しているとおっしゃる方が多いのですが、かかる感覚を男性が理解するのは意外に難しい気がします。好きな洋服を着て気分がいい、というあたりまでは男性にも同じ感覚があり、理解できるものの、「自分自身をよりよい状態へ持っていくことで生じる気分のよさ」について、どちらかといえば男性は疎いような気がします。しかし私自身の経験として、人と会うときに多少なりとも肌の色を整えてから出かけると、「これから友人と会って楽しい時間をすごすのだ」という気持ちが高まってくることに気づきました。

身なりをよくすることによって、「あなたとの時間を大切に思っていますよ」と相手に意思表示する感じがあるのです。私は、スキンケアから始まるケア全般について考えることが多いのですが、人と会って話すことや、自分の見た目をできるだけ整えてから出かけることは、自分に対するケアだと思うようになりました。人と会って話すのは、それだけで心の薬になるので、自分自身もできるだけいい状態になっておきたいと考えるようになったのは、大きな変化でした。

 休日だけでも、どうですか

男性におすすめしたいのは、休日、人と会うときだけでも、肌の色を整えるかんたんなメイクをしてから出かけることです。こうすると「これから人と会うぞ」という気分が高まっていき、よいコミュニケーションが取れるように感じます。平日は特にしなくてもいいと思います。というのも、男性が会社にメイクをしていくのはかなりハードルが高いですし、どの段階までのメイクなら周囲に溶け込めるのか、その線引きもつかみにくいものがあります。SUQQUの「スキンケア クリーム ティント」は、自然な肌色を保ちつつ、いかにも明るく健康そうな質感に変化させてくれる保湿クリーム兼ファンデーションです。肌がなめらかになったような質感を与えてくれます。

さらには日焼け止めの効果もありますから、ちょっとメイクが照れくさい男性にも「これは紫外線対策だから」というエクスキューズまで準備されていて万全です。これひとつを使用するだけでもかなり印象が変わってきますので、ぜひお試しください。使うときは指で伸ばしてもいいのですが、できればブラシを使うと美しく仕上がります。これは私も教えてもらって驚いたのですが、ブラシを使うとかなり均一に、キレイにファンデーションを伸ばせるのです。メイク用のブラシはドラッグストアでも安価で売っていますので、探してみてください。ちょっといい自分に変化してから、仲の良い友人に会いに行ってみてほしいです。

 

 

伊藤 聡(いとう・そう)
会社員兼ライター。50代にして美容の楽しさに目覚める。著書に『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社刊)

イラスト/green K

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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