KEY TO LIT・井上瑞稀さんのメンタルがぶれない理由とは!? 主演舞台『W3 ワンダースリー』インタビュー

漫画の神様・手塚治虫の普遍的な物語『W3(ワンダースリー)』は、地球人の真一と、地球の偵察にやってきた3人の宇宙人がさまざまな悪と戦うSF活劇。名作誕生から60年、KEY TO LITの井上瑞稀さん主演で舞台化。今、私たちが直面している問題についても考えさせられるドラマチックな作品への思いについて聞きました!
未来のために、お互いの言葉をしっかり理解し合いたい。人生の選択は「心躍ること」を大切にしたい。
――原作は手塚治虫さんの名作です。物語や、演じられる星真一役についてどんなことを感じられましたか?
僕が演じる星真一の第一印象は、 僕と似ているな 、ということです。台本に、「主人公のオーラは1ミリもない」と書いてあって。「あ、僕だ……」と(笑)。
物語は、とてもメッセージ性の強い作品です。戦争や地球温暖化、自然災害、エネルギー不足など、今の世界が抱えている問題に通じるテーマが描かれていて、何が正義で、何が悪なのか、という普遍的なテーマについて考えさせられます。その中で、 正義感の強い真一の成長を感じてもらえる作品 です。僕自身も、物語で描かれる強い思いをしっかり届けていきたいと思っています。
――井上さんは、原作はあえて最初に読まないそうですね。役にはどんなふうにアプローチを?
僕、すっごい影響されやすいので、原作を読んでしまうとモノマネしかできなくなるんです。だから、実写化作品では、 まず台本を読み、自分なりに役や物語を感じ、理解してから 、原作を読むようにしています。そのほうが物語をより客観的に見ることができて、お芝居にもぶれずに取り組める気がしています。
演じるときは、 とにかく質問することから始めています 。ちゃんと役を生きられるように、わからないことをわからないままにしておきたくないので、今回も演出のウォーリー木下さんをめちゃくちゃ質問攻めにしています。「この台詞はどういう意味ですか?」とか、「どう考えたらそういう発想になるんですか?」とか。今回は歌もあるので、あとはもう、ウォーリーさんに僕のすべてをゆだねて演じていきたいと思っています!
――未来について考えさせられるテーマも多く描かれています。役を通して、これからの生き方、人との関わりで意識していきたいと感じたことは?
正義は立場によって変わるし、それぞれの正義が対立して争いが生まれますよね。だからこそ、 互いの正義をちゃんと理解できる人間でいたい 、相手の言葉の理由を理解し、寄り添える人間でいたいと感じています。そのためにも、人の気持ちをちゃんと受け取って、どういう思いでいるのかということをより考えていきたいです。自分のことをわかってもらいたいと思うと、つい独りよがりな言葉を押し付けてしまうこともありますが、お互いに寄り添い、理解し合えたら争いは減る気もするんです。この作品が、皆さんにとっても これからの未来について考えるきっかけになったらうれしい です。
――ちなみに、井上さんにとっての正義というと?
僕自身が大事にしていることは、 とにかく「楽しむこと」 です。自分自身が心躍ることを大切にするということは常に忘れずにいたいです。そうすれば、悔いのない選択ができるような気もしています。
――多くの作品で活躍される中で、舞台は井上さんにとってどんな場所ですか?
どこか原点のような感覚があります。お芝居もライブも、身一つでステージに出ると、そこでは僕自身がむき出しになりますし、嘘がつけないですし。その中で、思いを伝える、役を生きるというのはすごく原始的というか、 芝居の基本 というような気がしていて。これからもできる限り挑戦していきたいです。
――主演として心掛けていることはありますか?
主演とさせていただいていますが、僕自身は主演とか座長だとは思っていないんです。今回はキャリア的にも僕がいちばん下だと思いますし、僕はすぐに自分のことでいっぱいいっぱいになりがちなので、 皆さんにたくさん頼らせてもらいながら頑張りたいな と。勝手ながら、僕が主演として引っぱっていくのは40歳くらいを超えてからだと思っているんです。それまでは、とにかく共演者の方のお芝居やスタッフさんの話をちゃんと聞いて、見て、感じて、お芝居に取り組みたいです。
こうあるべき、よりも、ありのままの自分で生きたい。スキンケアは保湿を頑張っています!
――公演期間中、体調やメンタルをどんなふうに整えていますか?
のどのケアには気を使っています。加湿器を使い、のど飴をいたるところに置いて、調子が気になったときにすぐ食べられるようにしたり。はちみつ系の味が多いです。僕は割とわかりやすくスイッチを切り替えるタイプで、本番が始まったらオンで、終わったらオフ。だから、 オフの日は思いっきり休みます 。休演日はひたすら爆睡。 ちゃんと休むということも仕事のひとつだと思うから 。
――ずっと張り詰めている気持ちの息抜きはどんなふうに?
息抜きにどこか出かけようと思ったりもするのですが、疲れちゃうよな、と思うと、結局息抜きできないままなんですよ。それに僕、気を抜くと体調を崩しがちなんです……。大きな公演が終わると熱が出ちゃったりとか。なので、もう息抜きはしないことにしました! 公演期間中も緊張を緩和することなく、緊張しっぱなしで過ごしています。終わったら、一気に脱力して思いっきり寝ます!
――日々のスキンケアのルーティンは?
これがズボラであまりお話しできることがないのですが、化粧水、美容液、乳液の基本的なステップは頑張ってやっています! やっぱり 保湿が一番大切 かなと思うので。
――井上さんは人見知りだそうですが、そういった自分を変えようとしたことはありますか?
それがですね、本当に申し訳ないのですが、改善しようと思っていないのだと思います。人見知りな自分をダメだなと思いながらも、割とありのまま、マイペースで生きてきておりまして。無理をして、「僕はこうあるべきだ」という型に自分をはめたとしても、そのパブリックイメージがついてしまうほうが生きづらそうな気がするから、もうダメな自分を受け入れて生きていこうと。周りに迷惑をかけない範囲で、自分らしく生きていきたいと思っています。だから、メンタルもそんなに疲弊しないのだと思います。ただ、マイペースな僕が疲れない代わりに周りを疲れさせてしまっているような気がしておりまして……お詫びいたします……。
――KEY TO LITのメンバーとして、俳優として、お手本にしている人はいますか?
実は憧れの人もいなくて……と言うと、尖っているやつみたいですよね。でも本当にいないんです。なぜなら、憧れたり、ああなりたいと思っても絶対になれないですから。だから、 僕という色を見つけて、それをちゃんとお届けできるようになりたいです 。ちなみに、ふだん頼りにして時々意見を聞くのは京本大我くんです。
KEY TO LITとしては今年ライブを予定していますが、それがファンの皆さんへのお披露目になると思うので、気合を入れて頑張りたいし、お芝居も継続して挑戦していきたいです。めちゃくちゃ頑張るので、楽しみにしていていください!
Profile
井上瑞稀
いのうえ・みずき/2000年10月31日生まれ。神奈川県出身。
KEY TO LITのメンバー。俳優としても数々の舞台やドラマで活躍。主な主演作に、映画『おとななじみ』、主演ドラマ『なれの果ての僕ら』、舞台『ルーザーヴィル』『劇走江戸鴉〜チャリンコ傾奇組〜』など。25年はドラマ『霧尾ファンクラブ』にも出演。KEY TO LITではコンサートを開催予定。
Information
舞台『W3 ワンダースリー』
https://w3-stage.com/
6月7日〜29日 THEATER MILANO-Za(東京)
7月4〜6日 兵庫県立芸術文化センター(兵庫)
日本の田舎・小川村に住む星真一は漫画を描くことが好きな少年。
2024年、銀河系のすぐれた生物の集まりである銀河連盟は、地球の様子を探らせるため、調査員を派遣する。W3(ワンダースリー)と呼ばれる銀河パトロールのボッコ、プッコ、ノッコの三人は、それぞれウサギ、カモ、馬の姿に変身して小川村に潜入、調査を開始する。そこで彼らは真一と出会う。
一方、真一の兄・光一は秘密諜報機関フェニックスの一員として、兵器の開発拠点であるユダ島へ潜入。そこで待ち受けていたのは警備隊のランプだった。
真一とワンダースリーは次第にランプの野望や群衆の混乱に巻き込まれていく――。
出演:井上瑞稀 平間壮一 永田崇人 松田るか 相葉裕樹 彩吹真央 中村まこと 成河 ほか
原作:手塚治虫 漫画『W3(ワンダースリー)』
脚本・作詞:福田響志
演出・上演台本・作詞:ウォーリー木下
音楽監督・作曲・作詞:和田俊輔
衣装/デニムジャケット¥38,500(DIGAWEL 1〈DIGAWEL〉) シャツ¥29,700(Sian PR 〈SEUVAS〉) その他/スタイリスト私物
【お問い合わせ先】
DIGAWEL 1:03-5722-3392 Sian PR:03-6662-5525
撮影/西谷陽斗 ヘア&メイク/浅津陽介 スタイリスト/小林洋治郎 取材・文/松田亜子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。