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2026.08.24

沖縄、シトラスが最も美しく香る場所|石坂将「旅するフレグランスノート」vol.3

日本発フレグランスブランド「ショーレイヤード」の創業者である石坂将さんによるフレグランス連載。国内外を忙しく飛び回る日々のなか、旅先で出逢う風景や人々、そこで感じた匂いの記憶を通して、石坂さんならではの視点で香りへの想いを綴ります。

WRITING: 石坂 将

石坂 将

石坂 将

株式会社セントネーションズ代表/フレグランスプロデューサー

ランカスター大学大学院修了後フレグランスメーカーに入社、2012年独立し株式会社セントネーションズを設立、2013年「ショーレイヤード」を立ち上げ。全国の都市型商業施設に展開しつつ、21年に初の路面店としてカフェ併設の恵比寿本店を開業。25年にはブランド市場最大規模となる西麻布店のほか、初の海外旗艦店となるパリ店をオープン。

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世界に誇る美しい沖縄の海

沖縄には、季節がひと足先にやってくる。

梅雨明けの知らせとともに訪れた沖縄は、空の青さも、風の軽さも、本州とはまるで違っていた。湿度を含んだ空気でさえどこか透明で、太陽の光は街や海を鮮やかに照らし出している。その景色を見るたびに、「季節にも香りがある」ということを改めて感じる。

今回の旅の目的は、那覇で開催するSHOLAYEREDのポップアップイベントだった。限られた滞在時間ではあったが、どうしても足を運びたかった場所がある。それが、沖縄本島北部に浮かぶ古宇利島だ。

だだっ広い海ではなく、湾状のランドスケープを楽しめるのが古宇利島の情景だ。

古宇利島は「恋の島」とも呼ばれ、沖縄版のアダムとイブのような創世神話が語り継がれている場所でもある。橋を渡ると、時間の流れが少しだけゆっくりになるような感覚がある。エメラルドグリーンの海に囲まれ、潮風が静かに吹き抜ける島を歩いていると、人は昔から自然と共に暮らし、その風景を文化として受け継いできたのだと実感する。

最近は、ホテルや宿泊施設の香りをプロデュースする仕事も少しずつ増えてきた。その影響もあり、沖縄を訪れる機会は以前より確実に多くなった。ホテルにとって香りは、単なる「良い匂い」ではない。その土地の記憶を訪れた人の心に刻み、旅の余韻を何年も残し続ける、大切な体験の一部だと思っている。

降り注ぐ7月の光に鮮やかに映える木々の緑、ハイビスカスの赤。

「沖縄の香り」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。ハイビスカスやプルメリアを想像する方も多いかもしれない。しかし、私がレンタカーを走らせながら強く印象に残ったのは、どこまでも続くサトウキビ畑だった。

風が吹くたびに葉が擦れ合い、太陽の光を浴びて揺れるその景色は、沖縄らしい穏やかな時間そのものだった。実はサトウキビは、砂糖だけではなく、ラム酒をはじめとするアルコールの原料としても世界中で利用されている。香水に欠かせないアルコールも、植物の恵みから生まれるものだ。

香りは花だけで作られるものではない。植物が育つ土壌や気候、人々の暮らし、そしてそこから生まれる文化までもが、香りという表現の背景になっている。そう考えると、沖縄のサトウキビ畑もまた、香りの風景の一部なのだと感じる。

記憶に残るのは結局こういったその地域の牧歌的な風景だったりする。

東京へ戻ったら、今回の沖縄の旅を一本の香りとして形にしてみたいと思う。トップノートには、沖縄を象徴するシークヮーサーやベルガモット、グレープフルーツを合わせ、梅雨明けの空気を切り裂くような眩しい爽快感を表現したい。ミドルには、サトウキビ畑を吹き抜ける風をイメージした、ほのかにグリーンでみずみずしいニュアンスを。そしてラストには、流木や白い砂浜、夕暮れの静かな海を思わせる柔らかなウッディノートとムスクを重ねる。観光地としての沖縄ではなく、この土地の風や光、そして時間の流れそのものを閉じ込めた香りを作れたら、それはきっと何年経っても、この旅を鮮明に思い出させてくれる一本になるはずだ。

私自身、沖縄を思い浮かべるとき、真っ先に頭に浮かぶのはシトラスの香りだ。弾けるようなシークヮーサーや瑞々しい柑橘の印象は、強い日差しと青い海、そして潮風の軽やかさを自然と思い出させてくれる。

シトラスは、世界中で最も親しまれている香りのひとつでありながら、土地によって表情がまったく違う。イタリアのベルガモット、フランスのレモン、そして沖縄のシークヮーサー。それぞれが、その土地の風景を映し出している。だから私は旅に出ると、その土地に似合う香りを身につけたくなる。香りは、旅の景色をより鮮明にし、その瞬間を記憶へと変えてくれる存在だからだ。

澄みきった那覇の空気が、夕焼けの美しいグラデーションを際立たせる。

沖縄の夏には、やはりシトラスがよく似合う。爽やかでありながら生命力があり、暑ささえ心地よさへと変えてくれる。その香りは、この島の太陽や海、そしてどこまでも続くサトウキビ畑と、不思議なくらい自然に重なっていく。

旅先で身につけた香りは、いつかその香りを纏った瞬間に、その場所の空気まで思い出させてくれる。私にとって沖縄は、シトラスが最も美しく香る場所のひとつである。そしてこれからも、この島を訪れるたびに、新しい香りと新しい記憶を重ねていきたいと思う。

石坂将 旅するフレグランスノート

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

WRITING: 石坂 将

ランカスター大学大学院修了後フレグランスメーカーに入社、2012年独立し株式会社セントネーションズを設立、2013年「ショーレイヤード」を立ち上げ。全国の都市型商業施設に展開しつつ、21年に初の路面店としてカフェ併設の恵比寿本店を開業。25年にはブランド市場最大規模となる西麻布店のほか、初の海外旗艦店となるパリ店をオープン。

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Text & Photos: 石坂将

Edit:: 木津由美子

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石坂 将

株式会社セントネーションズ代表/フレグランスプロデューサー

ランカスター大学大学院修了後フレグランスメーカーに入社、2012年独立し株式会社セントネーションズを設立、2013年「ショーレイヤード」を立ち上げ。全国の都市型商業施設に展開しつつ、21年に初の路面店としてカフェ併設の恵比寿本店を開業。25年にはブランド市場最大規模となる西麻布店のほか、初の海外旗艦店となるパリ店をオープン。

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