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2026.08.23

向坂くじらさん連載「そうでないものの美」 Vol. 05

詩人・小説家の向坂くじらさんによる連載、第5回目のテーマは「予期せぬものの美」です。

EDIT: 美的編集部

美的編集部

美的編集部

2001年に創刊された美容専門誌『美的』(小学館)の編集部。「肌・心・体のキレイは自分で磨く」をキャッチフレーズに、タレント、モデル、カメラマン、美容家や美容ライターといった各分野のスペシャリストとともに、最新のビューティトピックを深く掘り下げた誌面作りがモットーです。2026年には創刊25周年を迎え、これまで積み上げた膨大な美容に関する最新の知見をもとに、美容に対して誠実なメディア運営に取り組んでいます。

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SOURCE: 美的 2026年9月号

2026年9月号

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詩人・小説家

向坂くじら

Vol. 05/予期せぬものの美

炎天

歩いていて

ふいにだれかが出現する



ぶつかる

よけようとすると

相手も同じ動き

いたわりあいながら同時に

責めあってもいるような

体ふたつ 鏡うつしの炎天の

時間がとまっていく

ほんとにだれもいなかったのだ

ぶつかりそうになるまでは

それはたしかなことだったのだ

さんぽが好きなのは、なにげない植物のつくる風景が好きだからだ。たまたま出会ってはっとおどろいた草木があると、また見に行ったりする。けれどそのときにはもう、はじめてのようにはおどろかないことがある。そのふしぎさ。変わらずきれいなのに、なにか違う。風景ではなく、わたしのほうが変わったのだ、と思う。きれいだろうとあらかじめわかって見にきたせいで、わたしにはもう、きれいだということしかわからなくなってしまった。そこでこぼれおちているなにかを、ずっと見たいと思っている。予期していない目でしか出会うことのできない、なにか。そのものの、それ自体、というような、空白を指す指示語でしか書きあらわすことのできない、そのなにか。さんぽ、というより徘徊、は結局、そのためにしているのだった。

……と、ここまで書いた日、わたしはめずらしく車で出かけ、そうして、警察のお世話になった。事故ではない。駐車しようとして変なところにはまり、こうなったらどう動かしても隣の車にぶつかると悲観して、警察に助けを求めたのだ。「事故を起こす前に、あらかじめ警察を呼ぶ」ことになったわけだ。日々がナンセンスに呑まれている。駆けつけた警官に指示してもらい、なんとか隘路(あいろ)を抜け出したときには、汗だくだった。蒸された頭で、なーにが、空白じゃい、と思う。予期せぬものは、こんなにありありと、剣呑(けんのん)にあるじゃないか。

そうしてやっとそのすがたが、うっすらとでも浮かんでくる。出会おうと思っても出会えないのに、かといって出会わないでいることもできない、それ。あっちこっちで口をひろげて、確かにあるそれ。そう思ったらおそろしいような、頼もしいような気がしてくるのだった。

\過去連載もお見逃しなく!/

「そうでないものの美 」

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

EDIT: 美的編集部

2001年に創刊された美容専門誌『美的』(小学館)の編集部。「肌・心・体のキレイは自分で磨く」をキャッチフレーズに、タレント、モデル、カメラマン、美容家や美容ライターといった各分野のスペシャリストとともに、最新のビューティトピックを深く掘り下げた誌面作りがモットーです。2026年には創刊25周年を迎え、これまで積み上げた膨大な美容に関する最新の知見をもとに、美容に対して誠実なメディア運営に取り組んでいます。

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イラスト: たなかみさき

構成: 渋谷香菜子

SOURCE: 美的 2026年9月号

2026年9月号

9月号

7月22日 ¥1,100

『美的』9月号は、「肌もメイクも『スタミナ仕込み』でくずれ知らず!」という大特集! 気温も湿度もぐんと上がってきた季節…

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