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メイクアップニュース
2022.3.1

ついにデビュー。“エルメスの肌”はなぜ心を動かすのか?【齋藤薫「大人美のマナーとルール」vol.7】

3月1日、エルメスから、待望のファンデーションがデビューする。すでにリップやチークなどを成功させているエルメスだが、初のファンデーションは、ベースメイクの世界に新しい価値をもたらす特別なものとなった!【齋藤薫「大人美のマナーとルール」vol.7】

何か心に訴えかけるものがない化粧品は、もう欲しくない

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(C)Studio des fleurs
前例なき美容上のブランクも長かった“こんな時代”だからなのか、今、化粧品の見方が少し変わってきている。
心が動くか動かないか? 訴えかけるものがあるのかどうか? つまり単に新しいだけではない、膨大な化粧品の中でキラリと光る唯一無二の魅力をもつものでないと、もう欲しくはないと思うほど。
スペックよりも今、そうしたことが重要に思えてならないのだ。

そういうものは、直感でわかる。話を聞いただけで、いや聞き始めて間もなく、ツボにストンとはまる。よくぞ作ってくれましたと、拍手をしたくなる。時代が求めていたのはそれなのだと、胸がすくような化粧品って稀にあるものなのだ。

その一つが、じつは本日3月1日発売、エルメスが初めて放つファンデーション。それって、エルメスだから? いや、ファンデーション選びはもっとシビアなもの。ブランド信仰的な要素は、もはや入る隙がないのだ。

ただある意味、エルメスだからこういうものを作り得たと言ってもいい。なぜならそれは、まさしく「エルメスの肌」を作り出すアイテムだからである。

そのファンデーションは、Planifier Air(プランエア)と名付けられている。化粧品名というよりも、絵画か、映画の作品名のよう。それは「光いっぱいの屋外」という、一瞬で情景までを想い浮かばせる言葉だからである。
もともとフランス語には情緒を宿す言葉が多く、とりわけ“美しいもの”を表現するニュアンスある言葉の豊富さは際立っている。この言葉も、意味を聞いた瞬間、様々な絵画や映画のワンシーンが浮かんできた。

印象派の絵画のような光の元で、纏うもの

例えばあまりにも有名なルノワールの『ムーラン・ド・ギャレットの舞踏会』、クロード・モネの『散歩・日傘をさす女』、マネはもちろんモネも描いていた『草上の昼食』……柔らかい影があるからまぶしい光が際立つ陰影の魔術、印象派の絵画が次々に浮かんできたのだ。

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また、ティモシー・シャラメをブレイクさせた映画『君の名前で僕を呼んで』に『プロヴァンスの贈り物』など、別荘やリゾートでのヴァカンスを描いた、夢のような映画たちに溢れている“光のシーン”までが甦ってきた。

いずれも、豊かでラグジュアリーな日々を舞台にした光。幸せを伴う光。単に、日差しが強いだけのただの屋外ではない、誰もがそこに身をおきたいと憧れる、光のヴェールを纏うような情景を、たった一言で言い当て、一瞬でその世界に運んでしまうコンセプト、それ自体にまず新鮮な感動を覚えたのだ。

そして次の瞬間、なるほどこれは、今までにない独創的なファンデーションなのだと確信させられた。つまり、その「プラン エア」が細かい説明などいらなくなるほど、リアルに商品特製を物語っていたのだ。その巧みさにも驚きがあった。

肌の見た目は、言うまでもなく、光に左右される。いわゆる間接照明が肌を1番美しく見せるなら、燦々と降り注ぐまぶしい光は、残念ながら、肌の欠点を1番目立たせる。それこそ毛穴やキメ、シワやたるみなど、全ての影を濃く見せてしまう。ましてや化粧膜そのものを目立たせるから、“厚化粧なのに欠点が目立つ”という最悪の仕上がりを生みかねない。

しかし、エルメスはあえてそのシチュエーションを選んだ。つまりそうした光燦々の屋外という悪条件でも、平然と美しい肌を作ることを約束する意味もあったのではないか。

肌の凹凸を影に見せない。色ムラも目立たせない。化粧膜を感じさせない。光の下でも欠点を欠点に見せず、透明感ある均一な美肌膜を肌と一体化させる………ファンデーションがずっと課題としてきた問題を、全てクリアしている証ではないか。

これぞエルメスの肌、運命の肌作り

こうした戸外の光の下でさえ美しい“ヘルシースキン”をコンセプトとしているシリーズにはシャネルのレ ベージュがあるが、エルメスにとってこのシチュエーションは、ブランドのDNAにもつながってくる。いわば光の下でも美しい仕上がりこそ“エルメスの肌”と名付けられるもの。運命のファンデーションと言ってもいいものなのだ。

なぜなら、エルメスは馬具工房から始まっている。たちまち馬術の世界での名門ブランドとなっていくのだが、100年前に初めて作ったメンズウェアはゴルフ用ブルゾンだった。やがて顧客である紳士のライフスタイルに合わせて時計や革製品へと広がっていった。

つまりエルメスの舞台は時代を問わず、透き通る青空が背景にあり、爽やかな風が吹き抜ける光の下。そして、ターゲットはもともと性を超えた、“喜びに満ちた豊かな人生を楽しむ人々”に他ならないのだ。

現代の洗練を象徴する、性を超えた美しい皮膚膜を!

特徴は全てそこに行き着く。例えば……
・欠点を巧みにカバーするにもかかわらず、見えないほど極薄で軽やかな膜が、見事に均一に吸い付くこと。
・よく伸びるのにピタッと止まり、ノーテクで失敗もないライトバーム状であること。
・あらゆる肌色に対応する10色のカラーを揃えていること。
・試し塗りしなくても自分がなりたい肌色を選べるよう、パッケージにも正確にその色を再現していること。(これは技術的にとても難しく、ファンデーションでは極めて稀)
・当然のように高いSPF値をクリアし、化粧崩れの不安も感じさせないこと。
・下地もいらない、朝のスキンケアさえいらない、日中のオールパーパスアイテムであること……。

じつは全てが、ジェンダーレス対応。とはいえ従来のBBクリームやCCクリームとは違う。クオリティーはあくまでも、エルメス。
仕上がりはあくまでも、“エルメスの肌”

色彩はもちろん、素材へのこだわりは誰も真似できない職人魂が、ファンデーション作りにも生かされ、エルメスのレザーとも、絹のカレとも、見事に調和し共鳴する、他にはない皮膚感を作りあげたのだ。

今や、スニーカーをハイヒールと同じ思い入れで履きこなす時代、“カジュアルなのにラグジュアリー”というバランスこそが、洗練の印であるという時代、“エルメスの肌”こそ、そうした現代の洗練を象徴する美肌膜だということに気づいてほしい。

良いファンデーションは今、見分けがつかないほど、正直よく似た美肌をもたらすけれど、屋外の光の下でも美しい美肌をもたらすファンデーションは、今も、稀有である。それだけは間違いないのだ。

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美容ジャーナリスト/エッセイスト
齋藤薫
女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。『大人の女よ! 清潔感を纏いなさい』(集英社文庫)、『美人だけが知っている100の秘密』(角川春樹事務所)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)など著書多数。

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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