漫画『彼方のアストラ』とアルティザン＆アーティストのマスクポーチで、ワクワク感をアップ！連載・薬剤師津田マリエの“効く”漫画＆コスメの処方箋

美的世代の女子は、恋に仕事にプライベートに、悩みやストレスもいっぱい。そんな沈んだ心をものの20〜30分で、スッと軽くしてくれる漫画をご紹介。この連載は、年間300本以上の作品を読む、薬剤師の津田マリエさんが、悩みや症状に合わせて“心が元気になる漫画とコスメ”を毎回処方。読んで、試して、心も見た目も引き上げちゃいましょう！

/ kanatano001-1 （C）篠原健太／集英社

見事な伏線に拍手！ SFサバイバルミステリー

「学園コメディ漫画『スケット・ダンス』の篠原先生がおくるSFサバイバルミステリー。篠原先生の作品だからギャグ漫画かなと思いきや、本格的なSFミステリーで予想を遥かに超える作品となっています！見事な伏線の回収と、え！？こんな前から伏線仕込んでたの！？という驚き、そして素晴らしいストーリー展開に読み終わった後は思わず拍手したくなった驚愕の作品です」

処方箋No.34

・こんな症状におすすめ
日常に驚きがなくてつまらない。

・処方マンガ
「彼方のアストラ」篠原健太（集英社）

・薬効
読み終えるまでに間違いなく何度も驚愕する。

・副作用
読み終わって、すぐにもう一度最初から読みたくなる！

・何巻まで処方
5巻ですっきり完結。全巻どうぞ！

・あらすじ
宇宙への往来が当たり前になった近未来。主人公のカナタは探検家を夢見る高校生。同級生のアリエスら9名と“惑星キャンプ”に旅立つ。生徒のみで5日間のキャンプのはずが謎の球体に吸い込まれ宇宙に放り出されてしまった班員たち。そしてそこには１つの宇宙船が！しかし通信機は壊れていて…。母星へと帰還するためのサバイバル生活が、今始まる。彼らを待ち受ける想像もつかない過酷な運命とは？近未来SFサバイバルミステリー！

心にささる！元気になるPOINT

サバイバル×コメディー×ミステリーの黄金バランス

＜話の流れ＞

「ケアード高校に通う生徒たちは、惑星アクパで5日間過ごす惑星キャンプへと旅立つことに。教師は生徒を送り届けた後すぐUターンし、生徒のみで5日間過ごすのです。惑星キャンプでは各班にひとつずつ特別課題が出されるのですが、B5班への課題は10歳の少女を同行させるというもの。そこで妹フニシアがいるキトリーに姉妹で参加してもらうことに。メンバーの選出は無作為とされ、ほとんどの生徒が初対面という状況の中、班員9人は惑星アクパに降り立ちました。しかし、アクパに着いたのも束の間、9人の前に謎の黒い球体が出現し全員が飲み込まれ宇宙に放り出されてしまうのです。そして、そこには無人の宇宙船が！宇宙船に避難し、ひと安心したメンバーでしたが、通信機は使えず飛ばされた先が惑星アクパから遠く離れていることが分かり、捜索は絶望的だと言う事実を突きつけられます。そしてある日の晩、カナタは班員のザックに、1人呼び出され通信機が意図的に壊されていたという事実を聞かされることに。通信機を調べたところ、なくなった部品の配線に切断された後があり、切断面が新しかったというザック。通信機をわざと壊した犯人は９人の班員の中にいる！いったい誰が、なんのために自分たちを殺そうとしているのか！？宇宙の彼方で遭難し、誰が刺客かも分からないまま故郷を目指す9人の冒険が始まったのでした」

＜マリエ’s POINT＞

「最初は個性豊かな9人の成長と絆の物語かなと思って読むと、いい意味で予想を裏切られます。ただのサバイバル成長物語だけでなく（その要素だけでも十分面白い作品ですが）、ミステリーとしても格別に面白いのです！メッセージ性や壮大なテーマのある作品ではあるのですが、コメディー漫画を得意とする篠原先生らしい魅力的なキャラクターたちと軽快な台詞回しで、決して重たくなりすぎずミステリーとコメディー、そしてSFのバランスが絶妙な作品となっています。ただの青春マンガではないスーパー骨太のSFミステリー！まさにサバイバル×コメディー×ミステリーの黄金バランスで、できているような稀有な作品です」

自分という人間を決めるのは何か？

「最初は頑なに友達なんていらないとみんなを遠ざけていたキトリー。妹フニシアにすら冷たく接していたキトリーでしたが、フニシアが宇宙生物に連れ去られそうになったのを期に自分の今までの行いを反省し、みんなと打ち解けるようになります。食料問題やその星特有の生物による攻撃で病気になったり、船が落下しそうになるなど、様々な困難の中、自分のアイデンティティーを揺らがすような事件にも遭遇そんなときキトリーの発した一言にすべてが込められている気がしました。

“誰と関わってどういう経験をするかで私は決まるのね。この旅で私は変わった。それが嬉しい”

どんな困難があろうとも、どんな人生であろうとも関わっていく人たちや経験によって自分という人間がつくられていく。そしてその出会いや経験をどんな風に捉えられるかは自分次第。困難な状況であってもポジティブに捉え前に進もうというキトリーのセリフにはとても共感できました」

5巻で伏線がすべて回収されるすっきり感

「刺客は一体誰でなぜ班員たちを殺そうとしているのか、班員たちを飲み込んだ謎の球体の正体は？など伏線（ヒント）が随所に散りばめられ、5巻で一気に解決されます！このスッキリ感たるや！私は最初読んだとき鳥肌が立ちました。この作品の面白さを語り尽くしたい気持ちはありますが、あまり書くとネタバレになってしまうので。今まで沢山の漫画を読んできましたが、正直5巻でここまで完成度の高い漫画はなかなかお目にかかれない！しかも最初から終わりまでしっかり計画していないと書けないような作品なので、連載前にどれだけ緻密に計画されていたのだろうかと思うと、作者の篠原先生には本当に脱帽です。そして1度目と2度目では読む視点が全く変わるところも面白い！ 2度楽しめますよ！読み終わるまでに何度も感嘆の声をあげ、驚きとワクワクをくれました。日常に驚きがなくつまらないと感じたら、ぜひ5巻一気に読んでみてください！」