“Mattママ”桑田真紀「手放すことに慣れたら人生は回り出す」|美的GRAND 連載 Vol.25
夫は野球界のレジェンド・桑田真澄氏、次男は現在アーティストとして多方面で活躍中のMatt Rose氏。専業主婦から一念発起し、彼らを公私ともに支え、現在は化粧品会社も経営する桑田真紀さん。「優れた才能を発掘して応援したい」という根っからの「応援気質」で周囲の人々をサポートする真紀さんの「応援力」は、夫、子供、義理両親など身内だけでなく、上司・部下・同僚やママ友、すべての人間関係の参考になるはず。
「捨てること」に罪悪感は不要です。手放すことに慣れたら人生は回り出す

断捨離は捨てることではなく未来を受け入れる準備
「断捨離」という言葉が世の中に浸透して久しいですが、私はずっと、この言葉に少し引っかかりを感じていました。「捨てる」という行為そのものが、なんとなく悪いことのように思えてしまうからです。
モノを大切にしなさいと育てられた世代の私たちは、まだ使えるものを捨ててしまうことに罪悪感があります。もったいない、また使うかもしれない、この服だってもっていればまた着るかも……。でも最近、少し考え方が変わりました。
断捨離というのは「捨てるための作業」ではなく、「新しいものを受け入れるための余白を作る行為」なのだと。古いものを手放すのは、新しい何かが入ってくるための準備。そう思うと、捨てることへの罪悪感が薄れていく気がします。これは実際にやってみた人でないとわからないかもしれません。その上、不思議なことに、本当に物事が回り出すのです。
身内が心筋梗塞で倒れたとき、搬送された病院のベッドで彼女が言ったことがとても印象的でした。「もう、本当にモノは何もいらないわ。必要なものなんて、実はそんなにないって気がついた」と。それからずっと、その言葉が頭に残っています。究極のところ、人間は本当に少ない所有物だけでも生きていける。食べるものがあって、安心できる場所があれば、それでいい。モノがなくても、私たちは充分に生きていけるんだと。
その言葉を聞いてから、不思議なことに、私は「手放すこと」が怖くなくなりました。この勢いで……とばかりにクローゼットや納戸の大整理をしたのは言うまでもありません。
モノの断捨離の判断基準は「自分が把握できる量」だけもつこと
私は元々身軽な方でもないのですが、定期的に身のまわりを見直して、もう自分には合わないと思ったものは似合いそうな知人に差し上げたりしていました。でも、今はそれをやめました。なぜかというと、あげた後が気になってしまうから。喜んでくれているかな、もしかして迷惑だったのでは?と考え始めると、かえって疲れてしまう。だから今は、自分の中で「不要!」と決断したら業者さんにまとめて引きとりをお願いしています。段ボール箱に詰めた時点で、自分の中では終わり。そこに感情を引きずらないようにしています。
収納についても、考え方が変わりました。モノが増えると、「収納を買おう!」となりがちですが、それはいけません。収納を増やすのではなく、今あるスペースに収まる量にする、が正解だと気づいたのです。
引き出しも、バッグの中も、みっしり、ぎっしり、パンパンになっている状態は禁物。見る度に気持ちが滅入ってしまいますし、余白があるからこそ何がどこにあるかわかる。ガサゴソと探すこともなくなり、それだけで心がずいぶん軽くなります。
整理整頓好きな次男(Matt)に「ママのもの、ちょっと捨てていい?」と言われたこともありました。そのときは「ダメに決まってるでしょ!」と言ったものの、後から思ったのは「どうぞどうぞ!と言ってみても良かったかも」ということ。それらは意外となくなっても平気だったんじゃないか。つまり、自分が持っているものがなんなのかですら、満足に把握していないんじゃないか。それって私に必要なものなの?と。
だから今の私の基準は至極シンプルです。「自分が把握できる量だけもつ」。どこに何があるかわからないなら、それはモノを所有しすぎているということ。古いCDもDVDも、何十年も前の服も、押し入れの奥に眠っているものも。いつか使うかもしれないと思ってもち続けているもの程、実際には使わない。それが真実だと思うようになりました。
捨てることは悪いことではありません。「ありがとう、充分使わせてもらいました」という気持ちで手放す。ごめんなさいと言いながら捨てるのではなく、感謝しながら手放す。その気持ちの切り替えが、断捨離をかなり楽にしてくれます。
仕事や役割の断捨離では「キャパオーバーか否か」を意識して
50代になると、仕事における断捨離も切実なテーマになってきます。早期退職をするかどうか、役職定年をどう受け止めるか、60歳を過ぎても再雇用で今の仕事を続けるべきか。そんな選択が次々と目の前に現れる年代です。
そういった人生のターニングポイントのみならず、日々の業務や作業における取捨選択が必要だと感じている人も多いのではないでしょうか。
どういうわけか業務が自分に集中しがちな人は、「断れない人」なのかもしれません。優秀だからなのか、押しつけられやすいのかはわかりませんが、いつもキャパシティを超えてしまって精神的にも、身体的にも、つらいことが常態化してしまう。決して良いことではありません。
それはクローゼットと同じです。服を10着しか入れないと決めたら、11着目が来たときに1着出さなければいけない。仕事も同じで、自分のキャパを10と決めたら、11になった時点で「すみません、今は手いっぱいで」と言える自分になるのです。断ったら嫌われるかもしれない、と心配になる気持ちはよくわかります。でも、心身が壊れてしまったら本末転倒。健康でいるために、精神的な余裕を守るために、「断る」という選択をする。それは自分を守る、立派な決断だと思うのです。
「やらなければいけない」という空気に飲まれて引き受けるのではなく、自分のキャパシティをわきまえる。役割を手放すことは、決して無責任なのではありません。町内会やPTAやマンションの理事会役員など、地域での役割についても同じです。
モノや仕事や人間関係が軽くなるとすべてがどんどん巡り始める
モノも、人間関係も、仕事も、断捨離を経た先にあるのは「軽さ」です。
軽くなると、動きやすくなります。新しいことが入ってくるための余白ができます。そしてその余白に、本当に必要なもの、本当に大切な人、本当にやりたいことが、自然と入ってきます。
まず始めるなら、モノの整理から。物理的な環境がすっきりすると、気持ちも整い、「仕事にも余白を作ろう」「自分の時間を大切にしよう」となり、人にもやさしく親切になれる気がします。
捨てることへの罪悪感を手放す。それが断捨離における最初の一歩なのかもしれません。
Maki’s 今号のキレイの源

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