齋藤薫の馨る女 EX
2018.12.1

何のために美しくなるのか【齋藤 薫さん連載 vol.80】

もちろん『美的』の読者は、美容を日々頑張っていると思うのですが、 その目的について、何のために頑張るのか、じっくりと考えてみたことはありますか? 今回は、美しくなったその先に目指すべきことを、薫さんに教えてもらいます。

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美容が人生の目的になっている人に言いたい。キレイになった自分を放っておかないで

ズバリ聞きたい。あなたの人生、充実しているだろうか? おそらくは、こういう人が1番多いのだろう。日々忙しくはしているけれど、これが人生の充実と言うのかどうかはわからない…。例えば『美的』の読者は、きっと心にも体にもヒマな時間はないはずだ。美しくなるという結構忙しいテーマを持って生きているし、人生つまらなくなるスキなどないのだろう。ただそれが人生の充実と言うのかどうか、やっぱりそこは疑問、と言う人が少なくないはず。

正直なところ、キレイになることは、本来が“人生の目的”ではなく“手段の一つ”に過ぎないから、その手段でいくら時間を埋めても、充実感は少ない。美容にただ時間とお金を費やしているだけでは、心は埋まっていない。なのに、そこがキレイの落とし穴。日々のキレイを叶える満足感が災いして、うっかりそれが“人生の目的”になっている人が少なくないのだ。ただ例外的に、美容系のブロガーとして成功している人たちは、キレイを体感していることを、不特定多数の人に見られ、真似され、評価される……それは明らかに、人生の喜び。いや、たとえたくさんの「いいね」が得られなくても、キレイになった手応えを発信することで“自己表現”がたっぷり出来ているからこそ、身も心も充実する。ましてやそれがある意味の生業となっていたら、ああ私は何と言う充実した人生を送っているのだろうという、強い充実感が得られるはずなのだ。

だからって、みんな情報発信者になりましょうと言っているのでない。むしろ大切なのは、キレイになったら、キレイになった自分を、ただそのまま放っておかないこと。そこで満足しないということ。満足したら人生は充実しない。みんなが誤解しているのは、そこなのだ。

せっせと美容して確実にキレイになって、だから自分に自信が持てて、自分を好きになれて……それだけで充分じゃないかという言い方もある。でも本当に実際そこ止まりだったら、いつか虚しさを感じるのだろう。キレイになっても、結局は人生変わらないじゃない?という、小さな失望が生まれるかもしれない。

だからキレイになったら、それまでとは違う次元に進みたいのだ。美容も英会話も、大きな意味での教養も、それ止まりでは何の意味もない。そうしたスキルを得たら、あなたは自分の人生に対して新たに何が出来るのか。そこが何より大事。だから改めて問いたい。あなたは、 キレイになったら何をしたいのだろう?

いや極端な話、美人コンテストで勝者となっても、それで幸せになれる人は不思議に多くない。そうではなくて何か新しいことに挑戦する心を持つことが、すなわち人生の充実につながるのだ。別に結果なんか出さなくていい。どんどん挑み、どんどん進む。それが結果として、 濃密でエクサイティングな人生をもたらすのだから。

逆から言うなら、どんなことにでも挑める自分を作るためにこそ、人は学び、体を作り、美容して、自分のスキルを磨くのではないか。美容止まりだったら、鏡の中での自己満足で終わってしまう。そうではなくて必ずもう1段登ること、キレイになったら、何かに挑み、自分を表現すること、それが心の充実の最大のコツ。それを繰り返しやっていかないと、年齢を重ねた時、私の人生ずいぶん薄っぺらいと、1番嫌なことに気づくことになるのだろう。人生に厚みを持たせるためには、やっぱり自分を磨いて高めて、それによって何か行動を起こすことなのである。例えば、昨日よりキレイになったら、今日は必ずどこかに出かける。会いたい人に連絡してご飯に誘ってみる。そうやって日々人生を少しずつでも切り開いていくことこそが、美容の目的なのだから。美容自体を目的にしてはいけない、美容でキレイになって、何をするか。毎日でもそれを考えて欲しい。きっと毎日が楽しくてしょうがなくなるから。

人生の充実度、その明暗を分けるのは、少しの体力と少しの筋肉である?

生が充実している人と充実していない人との決定的な違い。それがどこにあるか分かるだろうか? 答えは簡単、行動力である。ただの行動力。みんなやりたいことはたくさんあって、あーこれもやりたい、あれもいいと、頭をよぎる事は日々あるはずだ。でも、実際、そのための行動を起こすか起こさないかでは大違い。天と地の違いである。ともかく、うらやましいほど人生を謳歌している人は、全員、行動力がある。人生がつまらない人は、行動力がない。本当にそれだけの差。とは言え、人の人生の明暗を大きく分けてしまうくらい大きい差。人間の質を分けてしまうくらい大きい差であるのは確か。じゃああなたはどちらだろう。行動力がある人か、ない人か。

実はここで、多くの人が曖昧な答えになる。自分に行動力がないとは思いたくない。やりたい気持ちはすごくあるのだからと。だから、私には行動力がありませんと言い切るのは、せいぜいが1割2割。7割は、ないわけじゃないのだけれど……と口ごもる。言い換えればみんな、あと1歩が踏み出せないのだ。あと少しエネルギーが足りないだけ。

じゃあそのあと少し、どうしたら身に付けられるのだろう。その答えも実はすごく簡単。少しの体力と少しの筋肉、それをプラスすればいいのだ。たったそれだけなのだ。それも、何らかのサプリを始めれば生まれる程度の体力。あるいは何らかの体操を1つ加えれば生まれる程度の、足腰の筋肉。それだけで、行動力は生まれると言いたいのである。

それ、一体どういうことか。行動力は心だけの問題ではない。むしろ半分は体の問題。なぜなら、やりたいと思うことを、今やろうと立ち上がる一瞬の力、それが全てだからである。あー面倒、明日でいいや、と、ソファーから立ち上がらないのは、行動力の欠如。今じゃなくて、いつかね、そうやって実行を後回しにするのは、エイっと始める、その瞬間のパワーがないから。境界線はそこにあるのだ。

実際に、ジムに通い始めて、筋肉をつけたら、やたら行動的になって、いろんなことを始めたと言う人が少なくない。例えば、細胞エネルギーを高めるコエン ザイムQ 的なサプリや、ニンニクやゴ マなど、滋養強壮的なサプリを1つ増や したら、急に前向きになって、自分でも 驚くほど積極的に何かを始めるようにな ったと言う人が少なくないのだ。そして 気がつけば、毎日が見事に充実していた と言う人が。

毎週毎週、どこかしらへ旅行している という人がいる。今週は京都、来週は北海道、その翌週は台湾という具合。まだ40代、でも知らないところがあるまま死ぬのはイヤと思ってからは、行きたいと思った所には、すぐにでも行かないと気が済まない。どんどん行かないと、時間が足りない。いつかは、いつかは……では結局どこにも行けない。だから、無意味な間をあけずに、即実行していたら、毎週の旅行になってしまったと言うのだ。 最初は、そんなに急がなくても、もっとゆったり人生を紡げばいいのにと思っていたのに、なんだかだんだん羨ましくなってきた。いや、真似したくなってきた。それこそ毎日が楽しそう。人生は楽しむものという、当たり前の価値観を、そのまま形にしているから、とてつもなく楽しくて疲れは吹き飛ぶそうである。

もちろん旅行ばかりじゃない。その方法論は、全てのことをシンプルに実行させてくれる。会いたい人には、会えるなら会いに行く。受けたい講義は受けたいだけ受けに行く。知りたい事は知りに行く。そういう単純な行動力が、心から羨ましく思えてきたのだ。人生を充実させるのは、少しも難しいことではないこと、その人はシンプルに教えてくれたのである。少しの筋肉をつけ、少し意識を変えるだけで人生の質は変わることも。

 

美容ジャーナリスト/エッセイスト
齋藤薫
女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。「Yahoo!ニュース『個人』」でコラムを執筆中。『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)、「The コンプレックス 幸せもキレイも欲しい21人の女』(中公文庫)など多数。

『美的』12月号掲載
文/齋藤 薫 イラスト/緒方 環

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