大高博幸さんの 肌・心 塾
2018.9.18

『 あのコの、トリコ。 』『 プーと大人になった僕 』『 かごの中の瞳 』『 モアナ 』 試写室便り 【 大高博幸さんの肌・心塾 Vol.465 】

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©2018 白石ユキ・小学館/「あのコの、トリコ。」製作委員会

やっと気づいた。
好きだけじゃ、
隣に いられないってこと――。

あのコのために ボクは変わる――。

あのコの、トリコ。
日本/ 99 分
10.5 公開/配給:ショウゲート
toriko-movie.jp

【 STORY 】 地味で 冴えないメガネ男子の 鈴木 頼 ( より ) は、東京の高校に転入し、幼い頃から好きだった 立花 雫 ( しずく ) と再会。女優という夢に向かって まっすぐに がんばる雫に あらためて恋をした頼は、あるきっかけから、雫の付き人として 現場に同行することになる。ランジェリーの広告撮影では、共演するはずだった 人気俳優の 東條 昴 ( すばる ) が アクシデントで帰ってしまい、雫は 降板させられそうになる。そんな雫を助けるため、頼は 昴の代役をすることに! 頼が カメラの前に立つと 別人のような輝きを放ち、雫は 思いかけず ときめいてしまう。この広告が 話題となり、頼、そして 雫と昴の 未来を変えていく――。( チラシより )

小学館「 Sho-Comi フラワーコミックス 」から 第 1 ~ 5 巻が 好評発売中 ( 第 6 巻は 9 月 26 日頃 発売予定 ) 、白石ユキ原作の同名コミックの実写映画版です。
出演者は、吉沢 亮 ( 頼役 ) 、新木優子 ( 雫役 ) 、杉野遥亮 ( 昴役 ) に加えて、岸谷五朗、高島礼子、古坂大魔王、内田理央ら。監督は、本作が 映画監督デビューとなる 宮脇 亮。

当然ながら、マンガチックな展開の青春ラブコメディ。この種の作品としては テンポが いまひとつで、TV ドラマ風なタッチも少々気になりました。しかし、どちらかと言うと 女子よりも男子の心理に主軸を置いている点がユニークで、しかも 吉沢 亮と 新木優子のコンビに新鮮味があり、最後まで面白く観るコトができました。ゲネプロのシークエンスに、映画ならではの演出が成されていたコトも良かったと思います。

吉沢 亮は、顔だちも 顔つきも 肌も 非常に綺麗。しかも 洗練された雰囲気が身についている俳優なので、「 思いっきり ドジで 地味で 冴えない メガネ男子 」という役の設定にピッタリとは言い難いものの、雫に対する一途な気持ちを 全身で 精いっぱい自然に表現しています。
彼は 全篇を通じて、おそらくヌードベージュ色のリップカラーを使用していると 僕は 想うのですが ( あくまでも僕のカン ) 、ある場面で、淡いプラムモーブ色を ホンの少し ベージュにプラスしているのでは? と感じさせたりもする細心のメイクアップに、僕は眼が釘づけ……。また、彼のファンの皆さんは、彼が 上半身 裸になる 着替えのシーンで、意外なほど広い肩幅と 男性的な胸囲の持ち主であるコトに 驚かされるはずです。
たゞし、チラシに使われている彼の顔は、流し目風の表情に 凄いほど 妖艶な磁力が表われていて、試写招待状に使われていた 正面向きの顔写真 ( 月刊『 美的 』9 月号 P.223 に、同じ顔写真が大きく掲載されている ) のほうが、高校生らしいピュアな雰囲気があったのでは? と僕は思っています。

新木優子は、夢に向かって一直線に突き進んで行く雫の、いゝ意味で ドライなキャラクターを ハツラツと好演しています。高校の制服姿で 最初に登場するシーンから、少しずつ 大人びて行く姿が とても魅力的。眉山から眉尻の下の眉毛を整えすぎず、程よくボサボサのまゝにしているメイク法も、彼女を個性的に 若々しく観せていました。

主役ふたりのコンビは、今回だけで終わらせては惜しい感じ……。たとえば、シリアスなヒューマンドラマに、ワケありの兄妹 or 姉弟役などで再び共演したなら、いゝ映画になる可能性 大では?

 

poo
©2018 Disney Enterprises, Inc. All rights reserved

親友のプーが ロンドンに やってきた。
僕が忘れた「 大切なモノ 」を届けるために――。

プーと大人になった僕
アメリカ/ 約 110 分
9.14 公開/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
disney.jp/Pooh-Boku

【 INTRODUCTION ― STORY 】 『 美女と野獣 』のディズニーが「 くまのプーさん 」を実写映画化! 100 エーカーの森を飛び出した プーと仲間たちは、大人になった 親友の クリストファー・ロビンと 奇跡の再会を果たすのだが…。
ロンドンを舞台に、忘れてしまった「 大切なモノ 」を思い出させてくれる感動の物語。主人公の クリストファー・ロビンを、『 スター・ウォーズ 』シリーズの名優 ユアン・マクレガーが 演じています。( 試写招待状より )

前回の試写室便り『 寝ても覚めても 』に続いて、またしても 試写で観られなかった作品です。プーさんにも、大人になったロビンにも 逢いたかったのに 残念!

1960 年代の終わり頃に小ヒットした「 パフ、ザ・マジック・ドラゴン 」は、仲よしだった男の子が大人になり、パフ ( 魔法の竜 ) のコトを忘れてしまう……、いくら待っても帰って来ない 親友を想って 泣き暮らしていたパフは、黄金色のウロコがはげて、魔法の力も消えてしまった……という内容の、可愛くも 可哀相な歌でした。
この映画の ロビンは、プーと再会したコトによって「 大切なモノ 」を取り戻すのでしょう、多分。ロビンは 何かに つまずいて、人生の〝 まさか 〟( 上り坂と下り坂の間に存在する〝 間坂 〟のコト ) に苦しんでいる……。そんな時に、プーさんが登場するのかな……。

余談ですが この映画、新聞の記事によると、中国では 上映禁止扱いなんですってね。中国当局は その理由を明らかにしていないようですが、習近平 国家主席が プーさんに似ているとして、政府に批判的な人々が プーさんを〝 抵抗のシンボル 〟的に利用しているコトが、検閲の対象となっている理由なのだとか……。プーさん、きっと マイっているコトでしょう……。

 

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(c)2016 SC INTERNATIONAL PICTURES. LTD

失った視力を 手術で取り戻した妻。
美しく変わっていく彼女に 疑いと嫉妬を抱く夫。
そんな二人が犯した 裏切りが引き起こす、
衝撃的な〝 愛の結末 〟――。

かごの中の瞳
アメリカ/ 109 分/ R 15 +
9.28 公開/配給:キノフィルムズ/木下グループ
www.kagonaka.jp

【 STORY 】 ジーナは 夫のジェームズと、彼の赴任先の タイ・バンコクで 幸せな結婚生活を送っていた。子供の頃の交通事故で 失明してしまったジーナだが、ジェームズの献身的な支えで 何不自由なく暮らしている。そんな 2 人の悩みと言えば、子供ができないことぐらいだった。ある日、角膜移植をしたジーナは、片方の視力を取り戻す。喜びに震えるジーナの瞳が捉えたのは、ナイトのような夫ではなく、地味で平凡な中年男の姿だった。心の奥に眠っていた好奇心や冒険心が目を覚ましたジーナは、髪を染め 流行のファッションで着飾り、外の世界へと飛び出していく。一方のジェームズは、徐々に 嫉妬と疑念を抱き始めていた。ところが 突然、ジーナが 再び 視力を失い始める――。( プレス資料より。一部省略 )

互いに愛し合っていたはずの相手のコトを、実は少しも知らなかったと気づいたジーナ ( ブレイク・ライヴリー ) と ジェームズ ( ジェイソン・クラーク ) が、予想もしなかった人生の扉を開いてしまうという、一種のサスペンスドラマです。つまるところ、ふたりの間に 本物の愛は 存在していなかった…… と思わせてしまう内容が、僕にとってはイマイチでした。

異国情緒漂う バンコク、プーケット、そして バルセロナでのロケーションシーンは、観る者の眼を楽しませてくれます。But、ジーナの視点としてのモヤモヤとした映像の多さと、カット割りの細かさ & スピードの目まぐるしさに、僕は ついて行けませんでした。そして 何故か、折に触れて 変態的趣味を盛り込もうとしている後半の演出 ( 監督・脚本は『 チョコレート 』『 ネバーランド 』『 プーと大人になった僕 』の マーク・フォースター ) は、ストーリーの本質から 遊離している印象……。

R 15 + 指定の、そうした内容を好む方々には オススメの映画。僕自身は B・ライヴリーの演技を期待して観たので、その点では 一応 満足した というところです。

 

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©2014 Bruce Posner-Sami van Ingen. Moana © 1980 Monica Flaherty-Sami van Ingen. Moana © ℗1926 Famous Players-Laski Corp. Renewed 1953 Paramount Pictures Corp.

100 年前の南の島、ある家族の物語――。

世界映画史上の傑作が、新たに付け加えられた音響とデジタル技術により 瑞々しく蘇る!

岩波ホール 創立 50 周年記念 上映作品。

モアナ
南海の歓喜
アメリカ/ 98 分
9.15 より公開中/配給:グループ現代
http://moana-sound.com/flaherty.html

【 SYNOPSIS 】 南太平洋 サモア諸島で暮らすルペンガ一家には、モアナとペアという ふたりの息子がおり、兄のモアナには、ファアンガセという婚約者がいる。一家は、常食とするタロイモ採りに出かけたり、野獣の通る道に 罠をかけて 生け捕りにしたりといった日々を過ごしている。また、珊瑚礁の岸に寄せる波間には、魚や貝や海老がいるので、丸木舟に乗って海にも出かける。
家では、母親が 桑の木の皮を剥いで 叩き伸ばして布を作り、白檀の赤い種で色染めをする。主食のパンノキ、タロイモ、グリーンバナナ、ココナッツミルクを植物の葉で包んで、焼き石の かまどで焼くパルサミが並べられた。デザートには ココナッツカスタードも用意して、家族の帰りを待つ。
モアナとファアンガセは、結婚式の準備のために 体に油を塗ってもらい、婚約者同士の踊りをはじめる。モアナは 成人式の入れ墨を ほどこされ、その痛みを乗り越えると、いよいよ 結婚式を挙げる準備が整った。ほら貝の音とともに太鼓が鳴り響き、盛大な祝宴が催される。村の人々は、子どもから大人まで みな 歓喜に満ち溢れ、歌い踊り ふたりを祝福する。( プレス資料より )

40 年近く前に、NYの近代美術館 or ロッチェスターの ジョージ・イーストマン・ハウスの敷地内にあるドライデン劇場で、エスキモーの生活を描いた『 極北のナヌーク 』( ’22 ) という無声のドキュメンタリー映画を観て感動して以来、ずっと いつか 観たいと思っていたのが、同じ ロバート・フラハティ監督の『 モアナ 』でした。

オリジナルは 1926 年に パラマウントがリリースした作品で、’80 年に フラハティ監督の三女 モニカによって サウンド版 ( 無声映画に音楽や効果音を付加した音響版 ) が作られて 一部で公開された後、2014 年に オリジナルのプリント ( 上映用のポジフィルム ) を世界中から再収集した上で デジタル化し、モニカが制作したサウンド素材とリミックスして完成させたのが、今回 公開の運びとなった〝 サウンド版・デジタル復元版 〟です。映画通でなければ 興味の湧かない話だろうとは思いますが、〝 ドキュメンタリー 〟という分類用語は、’26 年の本作初公開時に、ニューヨーク・サン紙の映画評で、評論家 ジョン・グリアスンが 初めて使用したコトが 起源とされています。

前記の Synopsis どうり、『 モアナ 』は 南海島の光景と共に、モアナの家族と婚約者の自給自足の生活ぶりを映し出します。背の高い椰子の木が並ぶ海岸線、南東貿易風で荒れる海、岩場の穴から空高く立ち昇る波しぶき……。男三人で出掛ける漁では、カヌーに乗せられないほど大きな亀を捕獲するシーン等もあるのですが、それらが 全て 詩的なニュアンスを伴っている点が 非常に貴重。まだ幼いペアも手伝いをする料理のシーンは、自分の小学生時代の 夏休みのキャンプを想い出させてくれたと同時に、「 あのデザートは、どんなに美味だろうか 」と 食欲も そゝられました。
しかし 最も感動させられたのは、モアナら五人が 互いを尊重し合い、自然 or 神に感謝し、自らの生命と日々の暮らしに 歓びを感じている姿、そのものでした。

本作を観ながら、二~三度 想い出し、比較してしまったのは、 ’20 年の D・W・グリフィス監督の小ヒット作『 渇仰の舞姫 』という南海島のロマンス物 ( 劇映画 ) でした。フラハティ監督も それを観たはずですが、『 モアナ 』は 海岸線のカメラアングルひとつを取っても 見事なまでに絵画的で、『 渇仰の舞姫 』から 6 年後に『 モアナ 』を観たであろう グリフィス監督とカメラマンの G・W・ビッツァーも、本作のカメラワークには 感服したに違いないと思いました。
たゞし『 渇仰の舞姫 』の 結婚式のラストシークエンスには、主役の R・バーセルメスと C・シーモアの非常に美しいクロースアップ等が捜入され、エンディングに ふさわしい 豊かな余韻が 醸し出されていた……。『 モアナ 』には、それが 少々不足しているという印象を 僕は受けました。

最後に余計な比較などしてしまい恐縮ですが、本作は 映画通ではなくても 一見の価値のある傑作なので、少しでも興味を抱いた皆さんは、岩波ホール ( 03-3262-5252 ) のロードショー ( 10.12 まで ) で、ぜひ観てください。〝 映画 〟〝 映画美 〟に 再度 開眼する 98 分となるかもしれません。

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
質問がある方は、ペンネーム、年齢、スキンタイプ、職業を記載のうえ、こちらのメールアドレスへお願いいたします。
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biteki-m@shogakukan.co.jp
( 個別回答はできかねますのでご了承ください。)

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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