2021.10.8

子役モデルから、ヘア&メイクアップアーティストへの 異例の転身。最高に充実して楽しい野口由佳さんの〝イマ〟

美容が好きな『美的』読者なら、ヘア&メイクアップアーティストや美容部員、ネイリストなど、「女性を美しくする職業につきたい」という夢を抱いたことがある人も少なくないはず。本誌をはじめとする女性誌を中心に大活躍するヘア&メイクアップアーティストの中でも、異例の経歴を持つのが今回ご登場いただく野口由佳さん。子役を経て、モデルや女優として活動してきた野口さんが「よりわたしらしく生きる」ために選んだのがヘア&メイクアップアーティストという道。野口さんが「天職だと思う」と自信を持って言える仕事と出会ったきっかけや転身への道のり、現在の仕事へのパッション…自分らしく充実している〝イマ〟にフォーカスします!

<野口由佳さんProfile>

森ユキオ氏に師事し、2012年に独立。ROI所属。女性誌のファッション&ビューティページではバランスが絶妙なヘアメイクを手掛けるほか、タレントや女優からの指名も多数でテレビや広告などでも活躍。

 

「子役としての活動は4歳から。そのときの経験は確実に〝イマ〟のマインドにも影響していると思うんです」

_dsb6868

お父様が「思い出作りに…」と子供タレントの事務所に書類を送ったことがきっかけで、4歳から子役・モデルとしてのキャリアをスタートしたという野口由佳さん。「子役を始めたころは〝やりたい〟という自分の意思というより、なんだかよくわからないけれどやらなくちゃって感じでした(笑)。保育園に通いながら事務所に所属し、子供服のカタログなどの撮影にちょこちょこ呼んでいただいたりして、仕事という感覚ではありませんでしたが、大人のスタッフさんの指示通りに撮影をしていた記憶があります。でも大人になってから聞いたのですが、実は私、4~5歳にして知らず知らず円形脱毛症になっていたんですって…。驚きましたよね、幼いなりにストレスを感じていたのでしょうか…。でもそれも今となってはイイ思い出。ヘア&メイクアップアーティストとして活動を始めてはや10年になりますが、自分の意志だけで進むのではなく、現場ではまず相手のリクエストに耳を傾けて寄り添うという姿勢を忘れないようにしています。それはもしかしたら、子役時代に自然に培ったものかもしれないですね」(野口さん)

「普通の子供時代ではなかった。でもそれ以上の経験をさせてもらえ、〝天職〟と思える仕事に出合えたのも子役モデルをしていたおかげ!」

_dsb6887

「子役やモデルとして活動していたので、日焼けはもちろん厳禁。屋外で思いっ切り遊びたかった小学校時代、私はレゴなどのおうち遊びがメインでした。そして、楽しみにしていた運動会や遠足などの学校行事と撮影などの仕事が重なったりすることも多々あり、客観的な言い方ですが悲しい子供時代だったな…と思います。〝自慢に聞こえたりもするから、芸能活動をしていることはあまり公言しないほうがいい〟という両親の方針で、小学校の友人たちには仕事のことはほぼ話していなくて…。おもちゃのCMやドラマにも脇役で出ていたりしたので、バレていたかもしれませんが(笑)。親や周りの大人たちの期待に応えなくては、という気持ちもあり、ある意味淡々と聞き分けのいい〝デキるコ〟を装って仕事をこなしていましたね。小学校も高学年になってくると自分の意見をちゃんと主張できるコも周りにいたりして、〝嫌なら嫌と言っていいんだ〟ということに気づき、仕事でも完全なる〝イイコ〟ではなくてもいいのかと思うように。とはいえなかなか殻は破れなかったのですが。中学に入ってからは『ピチレモン』などの雑誌のモデルも務めさせていただき、現場で同世代のモデルのコと会う機会も増え、仕事を段々と楽しめるようになりました」(野口さん)

〝ヘア&メイクアップアーティストになりたい〟という思いを抱くようになったのは15歳のころ。撮影で出会ったヘアメイクさんのプロッフェショナル魂に心救われたことがきっかけだそう。「私は中学の終わりから高校にかけて、すごくニキビに悩まされていて…。肌がポツポツあれていて、パーッと明るい気持ちになれない時期もありました。人前に出る仕事をしていたから、なおさらですよね。でもある日、とあるメイクさんが撮影現場で、ものすごくキレイにカバーしてくれて! ファンデーションを分厚く塗っているわけではないのに、気になる部分はしっかりと、でも自然にカバーしてくれて、その神業に感動しました。メイクでコンプレックスがカバーされると、こんなにも気持ちが上がるんだ! こんなにも笑顔になれるんだ! って…。肌も心も治療をしてもらっているかのような癒しと安心感を覚えたんですよね。それを機に、自分も〝女性を心から元気&幸せにする仕事=ヘア&メイクアップアーティストになりたい〟という気持ちが高まっていきました」(野口さん)

「あのとき感じたパッションを信じ、突き進んできたから〝イマ〟がある。無謀かも⁉と思った夢を貫いてよかったなって思います」

_dsc2686

「結局20歳ごろまで、ヘア&メイクアップアーティストになりたいという夢は抱きつつ、女優やモデルの仕事を続けていました。短大卒業を前に〝このままやっていても仕方ないな〟と思い、モデルの先輩や事務所のマネージャーにも相談した上で自分なりに導き出した決断は、所属していた事務所を退所し仕事はスッパリやめて、ヘアメイクの学校に行くというコト! 仕事を続けながらヘアメイクの勉強をする二足のわらじという選択もあったかもしれません。でもプロフェッショナルになるためには生半可な気持ちではいけないとも思いましたし、女優やモデルの仕事は好きにはなっていたけれど、突き詰めるほどの自信もなかった。だからこそ、中途半端なキャリアは捨てて、新たな夢に向かってイチから経験と知識を積み重ねていきたいという大きな決断ができたのかもしれません。ヘアメイクの学校に1年通った後、〝この方の下で学びたい〟と切に願い、アシスタントとして雇ってもらったのが森 ユキオさん(ROIヘアメイク代表)。実は森さんこそが、思春期ニキビに悩んでいた私の肌を見事にカバーしてくれ、私に〝気持ちもポジティブに引き上げるメイクの力〟を教えてくれた恩人! 当時、基本的に森さんのアシスタントの条件は美容誌免許を持っている人ということだったのですが、ヤル気を買ってくれ、美容誌免許をもっていない私をアシスタントとして雇ってくれました。師匠は本当に、森さんしか考えられなかったんですよね。東京で、第一線で活躍されているヘア&メイクアップアーティストのアシスタントになるのはかなり狭き門なのに、本当にラッキ―だったと思います。でも一歩踏み出す力がなかったら〝イマ〟の私はいなかったわけだから、その原動力があった当時の自分に感謝したいって思います」(野口さん)

「現場へは毎日、車で。ちょっと早く現場入りして車の中で待つのも、自分らしさを取り戻し、集中力を高めるのに大切な時間です」

_dsb6614

「昨年からのコロナ禍で、より密にならないように配慮し、スタジオやロケ先への移動もより安全な方法で…と撮影スタイルにも変化が。それに伴ってここ1年半は自分で車を運転して現場入りするのが私の定番に。運転免許は持っていたものの10年以上ペーパードライバーだったので、こんなにも毎日〝車が相棒〟になるとは思ってもいませんでした。でも〝車のある暮らし〟へとスイッチしたことで、人生が何倍も充実したように思います。ヘア&メイクアップアーティストという仕事は大きいトランクに、小さいトートも1~2個あったりと、とにかく荷物が多いので、荷物を置いてからでないとこれまでは撮影後に出かけることもできなかったんですね。車があれば、荷物を積んだまま、撮影終わりに気になるベーカリーにパンを買いに行ってみたり、話題のショップに寄ってみたり…。朝、現場に早くついてしまったときも、車内でお気に入りの音楽を聴いたり、ボーッとしたり…せわしない日々の中でも、〝自分だけの空間〟は仕事前に心を落ち着かせるためにもひと役かってくれています。仕事もこれまでより集中して効率的にこなせている気がして、こんなにも豊かさを上げてくれる存在ってないのでは!?って思ってしまう程!」(野口さん)

「〝イマ〟に不満一切ナシ! そう言い切れるのはきっと〝天職〟に出合えたから!」

_dsb6699

「もちろん自分のことをわかってくれる家族や友人の存在も大切ですが、仕事ってメンタルに一番に関わってくるものだな、って日々感じています。撮影現場でモデルのヘア&メイクが完成して、カメラマンが1シャッター押して画面に写真が映し出されたとき、現場スタッフが満場一致で〝かわいい~♡〟と盛り上がる瞬間がたまらなく好き! 自分が施したヘア&メイクがモデルの顔立ちだけでなく、衣装やそのシーンにも見事にハマって、現場で〝ヘア&メイクかわいい〟をたくさん言ってもらえた日はとにかくハッピー。毎日異なる現場やスタッフで緊張感は程よくありながら、達成感に満たされる日々。最高ですよね、本当に。〝表舞台から裏方へ、異例の転身だね〟とよく言われますが、逆に表も経験して、裏方の仕事にも触れてきたからこそ、より早くスムーズに現場になじめたというのもあるし、モデルや女優として活動しながらも自分の中では少し悶々としていた20歳までの私がいるからこそ、〝イマ〟の私がいる。小さいころからの経験も何事もムダではなかったと感じるし、失敗を恐れずに自分を信じて突き進んできたからこそ、〝イマ〟がより充実して、楽しく幸せに感じる。ヘア&メイクアップアーティストという職業は〝天職〟だと自負しています。〝ヘアメイクの力〟を信じ、いつでも初心を忘れず、40代、50代…といつでも笑顔でポジティブに仕事を楽しんでいきたいなって思っています」(野口さん)

 

_dsb6518

 

わたしらしく生きる人を応援 MX-30プロジェクトストーリーはこちら

 

野口由佳さんの未来、”イツカ”のストーリーはこちら

撮影/舞山秀一 構成/門司紀子

この記事をシェアする

facebook Pinterest twitter