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2011.8.9

大高博幸の美的.com通信(66) 『シャンハイ』&『リメンバー・ミー』 試写室便りNo.15

今回は夏休み大詰めにオススメの、大作×1、小品×1の紹介です。

そこは、愛が命取りになる街。
愛か、陰謀か。1941年、太平洋戦争開戦のカギを握る男と女が、命を賭けて貫いたものとは──?
『シャンハイ』(原題=SHANGHAI、アメリカ映画)
★詳細は、shanghai.gaga.ne.jp へ。
<8月20日(土)から、全国ロードショー>

「空虚な大作かも」という予感があって期待はせずに観たのですが、始まると同時に完全に引き込まれました。ひと言で「面白かった」んです。“陰謀”そのものよりも、複雑に絡み合う登場人物たちの“愛”を、1941年の“魔都”上海を舞台に描いている…。それだけで僕は堪能できました。

主要なスター5人のうち、登場場面が最も多いのはジョン・キューザックとコン・リーで、最も少ないのは菊地凛子。そんなコト、どうでもいいと思うでしょうが、その“差のあるバランス”が良かったのです。もしも5人に均等に活躍させようなどとしたなら、コレは「まとまりに欠けた締まりのない大作」となる可能性が大でした。

コン・リーは、最近作の中ではコレがベスト。ミステリアスな雰囲気を巧みに表現しているし、中盤以降で見せる人間的なタッチもいい。メークは薄めにしている場面のほうが美しく、彼女特有の唇と頬の筋肉の動きに、なんとなくシャイそうなニュアンスが漂ようところに僕は惹きつけられます。緩やかにウェーブをつけたヘアも、とてもよく似合っていました。もうひとつ、煙草をくゆらす、シガレットケースをつかむ、といった手指の動きも注目に値します。

菊地凛子は、哀れな身の上ゆえの淋しそうな表情に、いわくあり気な雰囲気がよく出ていて、終盤近く、阿片中毒で衰弱しきってしまう辺り、メーク技術の力もあってショッキングなまでの印象を与えます(以前、NHKの歴史ドキュメンタリー番組で観た実写フィルムでの、阿片中毒患者の姿を彷彿とさせました)。登場場面が少ないのに強い存在感を放つ彼女は、やはり“何か”を持っている女優です。

渡辺謙は、見せ場が少ないのが少々残念ですが、詳しくは書けない“ある場面”で、「どこへも連れて行ってやれなかったな…」とつぶやきながら涙をこぼす演技に、説得力がありました(セリフを書いた人もウマイと思います)。

キャストに次いで印象的だったのは、幾つもの大セット、ロンドンに残されている由緒ある建造物内で撮影された屋内シーン、エキストラに至るまでの衣装のすべて、ラッパ型蓄音機をはじめとする小道具…。

上映時間105分は、大作の割には長くありません。カレイドスコープを覗くような気分で観るのが(僕は)オススメです。

P.S. かなり不思議だったのは、観ている最中、大きな映画館の中にいるような気がして、一瞬、「あ、ここは試写室だ」と思ったコト。こんな感覚、初めてでした。よく来ている場所だというのに、不思議…。


きみに会えて よかった
傷つき閉ざされた心が愛で解けてゆく。
生きる悦びを取り戻した忘れられない夏。
『リメンバー・ミー』(原題=Remember Me)
★詳細は、rememberme-movie.jp へ。
<8月20日(土)から、シネマート新宿ほか、全国順次ロードショー>

コレは上質で良心的な中身の濃い小品、お金をかけた大作とは別種の愛すべき小品です。
『トワイライト・サーガ』で一躍脚光を浴びて若い映画ファンのアイドルとなったロバート・パティンソンの主演作であるコトから、“アイドル映画”などと簡単に言いたがる人もいるようですが、仮にそうだとすれば、コレは“最上質のアイドル映画”。しかし、彼の主演は人気が出てから決まった話ではなく、まだ無名の頃に出演を熱望していた企画が、やっと形になったというイワクつきのモノ。普通、人気が出て注目され始めたスターは、より華やかな話題作に出たがるモノだし、エージェントだって低予算の小品には出したがらない。それでも初心を貫いたロバート君は、中身のある俳優として生きていこうとしている様子…。そして完成した作品は、それを証明するような出来になりました。

ストーリーは一種の恋愛モノであると同時に、ふたつの家族の物語。登場人物は誰もが心に傷を持つ身で、それを主要な俳優たち(ロバート君とコンビを組むエミリー・デ・レイヴィン、それぞれの父親を演ずるピアース・ブロスナンとクリス・クーパー、そしてロバート君の妹役のルビー・ジェリンズら)がシンパシティックに好演しています。

脇筋ながら特に考えさせられたのは、ロバート君の妹(名門の小学校に通っています)が同級生たちに髪を切られるというエピソード。この種の悪質ないじめって、いつの時代にも、どこにでもあるんですね(しかも、それと同レベルの行為を、いい歳をした大人になっても平然とやってる人たちって実際にいるんですよね、自覚も罪の意識もないままに)。それでもなお、自分の特技と感性を生かすべく、少しずつ強く成長していく彼女(ロバート君の妹さんです)の姿に、僕はとても感動させられました。主役ふたりの恋のプロセスにもモチロン感動しましたが、この妹さんの話は、ココに記しておかなくてはと考えた次第です。

この映画は皆さんの心に残り、心の支えともなりうる作品です。上映時間は113分。

P.S. セックスシーンは3回出てきます(笑)。But、セックスシーンというよりは、メイクラブシーンという印象。観ていて恥ずかしくなるようなシロモノとは別種でしたよ。

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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