メイクアップニュース
2021.9.13

毎日使うフェースパウダーのこと、もっと知ろう! 原料や機能を徹底解説

マスクのこすれやムレ対策に、今や欠かせないのがフェースパウダー。今回は、花王 メイクアップ研究所 研究員でもあり通称“粉のアーティスト”とも呼ばれる青木利佳さんにパウダーの原料について教えていただきました!

アーティスティックで奥深い、パウダーの世界

「化粧品の研究者にとって、フェースパウダーはユニークな立ち位置のアイテムだと思います」と、花王の研究所でメイクアップ製品を担当する青木利佳さん。

「基本的に単体では成立せず、肌にほかの製品を塗った上に重ねて、油分や皮脂と混ざり肌になじんだ状態が“完成品”。薄く均一に、肌にしっかり密着する品質に仕上げることが大前提となります。原料の粉には無数の種類があり、そのブレンドによって、さらさら、しっとり、ツヤ、マット、毛穴カバーなどの個性が決まります」

まるでパンやお菓子作りのように、アーティスティックで奥深いパウダーの世界! ほんの入り口ですが、原料の特徴と仕上がりの個性との関係をご紹介しましょう。

【1】フェースパウダーはこんなものでできている!

粉の粒=丸いというイメージがありますが、左の電子顕微鏡画像でわかるように平たいものも多いのです。平たいものを「板状粉体」、丸いものを「球状粉体」と呼びます。「多くの粉の原料は層状の鉱物なので、粉砕すると層が剥がれて板状になります。丸いものは球状になるよう合成されています。板状粉体はなめらかでツヤが出やすく、球状粉体は肌の上を転がって滑りが良くぼかし効果をもつ、という特徴があり、これらをブレンドして製品に仕上げます」

□ タルク

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多くのフェースパウダーの主成分。すべすべ感と自然なツヤを与える板状粉体

「滑石」という柔らかい鉱物を砕いて作られる板状粉体。すべすべとした使用感と、光を正反射することによる自然な光沢を与えます。さまざまな大きさがあり、小さいものは密着感が高く、大きいものは透明感を演出。

 

□ シリカ

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ほかの粉体の滑りを良くしたりさらさら感を与える球状粉体

地殻に大量に含まれる物質「ケイ素の酸化物」。化粧品用には合成で球状に作られたものが多い。球状なので肌の上を転がり、板状粉体と一緒に配合すると均一な仕上がりに。皮脂を吸着してさらさら感を与える効果も。

 

□ マイカ

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薄くてなめらかな板状粉体。ツヤと透明感、パール感のもとになる

「雲母」という鉱石を砕いた板状粉体。薄く表面がなめらかなので、光を正反射してツヤとなめらかさ、透明感を与えます。また、マイカと酸化チタンを一体化させるとパールの光沢が現れ、パール剤になります。

 

□ 樹脂パウダー

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柔らかな質感と毛穴ぼかし効果をプラスする、弾力のある球状粉体

ポリエチレンやナイロン、シリコンなどを球状に加工した粉体。シリカと似ていますがシリカよりも柔らかく、弾力性があります。光を乱反射し、ソフトフォーカス効果で毛穴やシワなどの凹凸を目立たなくします。

 

個性や機能をプラスするその他の原料

上の4つの粉体のブレンドにより、フェースパウダーの特徴(ツヤ、マット、さらさら、しっとりなど)が決まります。それ以外に配合される原料は、メーカーや製品によって実にさまざま。例えば、UVカット効果のある酸化チタンや酸化亜鉛、着色のための酸化鉄や色素、輝きをプラスするパール剤(マイカやガラスと酸化チタンを一体化させた粉体)、毛穴をぼかすカバー粉体、保湿感をプラスするオイルやエキスなど。それぞれがフェースパウダーの仕上がりに個性や機能をプラスします。その他、香料や防腐剤が配合されることも。

□ カバー粉体
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毛穴やキメなどの凹凸を埋め、光を反射させて明るくなめらかな肌に見せるカバー粉体。さまざまな種類がある。

 

□ 大小のパール
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マイカやガラスと酸化チタンを一体化させ、光を強く反射するようにしたパール剤。サイズが小さいと繊細なツヤ感、大きとキラキラとした輝き感が出る。

 

\性質の異なるものがそろうSUQQUのパウダー/
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タルクやマイカ、樹脂パウダー、オイルなどの種類と配合バランスを変え、異なる仕上がりに。

上/オイルリッチでしっとり。
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中/樹脂パウダーが転がり、軽さを引き出す。
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下/さらっと自然なツヤ感。
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【2】配合原料のサイズやブレンドによって特徴が変わる

「板状と球状という形の違いに加え、粉体のサイズの違いによっても仕上がりに差が出ます。粒子が細かいと肌に緻密にフィットしてカバー力が出やすく、大きいと薄づきで透明感が出やすくなります」。仕上がりの特徴と処方について、一例を教えていただきました。

ツヤ or マット

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光を正反射する大きい板状粉体が多かったり、マイカやパール剤が多いとツヤ仕上げに。光を乱反射する球状粉体が多かったり粒子が細かいとマットに。右は腕にツヤのあるパウダー、左はマットなパウダーを塗ったところ。ツヤがあると明るさと立体感が出る。

 

カバー or 薄づき

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粒子が細かいほど肌にたっぷりついてカバーされた印象になり、粒子が大きいと薄づきに。また、白色でカバー力の高い酸化チタンが多いと隠蔽感が出ます。大小のタルク。さまざまな大きさをブレンドすると、薄く均一に密着する仕上がりに。

しっとり or さらさら

転がる球状粉体、シリカなどの皮脂を吸着する粉体が多いと、さらさら感触に。オイルの量が多かったり粉体の表面がコーティングされているとしっとり感触に。

くずれにくい

肌に面で密着する板状粉体にはくずれにくい性質、転がる球状粉体にはとれやすい性質が。両方がバランス良く配合されていると均一でくずれにくい仕上がりに。

毛穴ぼかし

光を乱反射してぼかし効果を発揮する球状粉体が多いと、毛穴やシワが目立たなく。光の反射が強い不透明なパール剤が多いと、逆に凹凸が目立つことも。

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上/粉体すべてをローズエキスでコーティングし、溶け込む質感に。
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下/板状粉体のみを使用し、処方の工夫によって均一で滑らかな仕上がりに。
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【3】フェースパウダーの機能はこんなにたくさん!

フェースパウダーにはくずれやテカりを防ぐだけでなく、仕上がりの印象をコントロールしたり日焼けを防いだりといったさまざまな働きが。「複数の粉体のブレンド具合で、フェースパウダーの強みが変わります。目的に合わせて使い分けるのもおすすめです」

くずれを防ぐ

大福の粉のような役割で、肌に塗ったファンデーションの水分や油分を適度に吸収。さらっとさせて、くずれやマスク移りを防止。

テカり防止

日中分泌する皮脂を吸収し、テカりやベタつきを防ぎます。多孔質の球状粉体が入っていると、その効果が高まります。

凹凸カバー

毛穴やシワの凹凸を目立たせるのは影。球状粉体配合のパウダーを塗って、光をふわっと乱反射させることで目立たなくなります。

きめ細かさ演出

球状粉体や透明度の高い粉体を塗ると、光の反射が穏やかになり、きめに落ちた影が目立たなくなって、緻密できめ細かい印象に。

ツヤを出す

板状粉体が多めだったり大小のパール剤が配合されていると、パウダーをつけても粉っぽさを感じさせず、自然なツヤ感が出ます。

くすみとばし

大小の粉体やパール剤が光をさまざまな角度と強さで反射させることで、肌の上でふわっとした明るさが生まれてくすみを払拭。

UVカット

SPF・PA表示により、UVカット効果をうたっているパウダーも。微粒子の酸化チタンが配合されたものに多いです。

 

花王 メイクアップ研究所 研究員

青木利佳さん

美的2021年10月号掲載
撮影/さとうしんすけ(静物)、長谷川 梓(人物)ヘア&メイク/永田紫織(LA DONNA)モデル/高野 和(美的クラブ) 撮影協力/Nuzzle、ヤーマン 画像提供/花王 構成/大塚真里

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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