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2025.8.19

【2025年上半期ベスコス総括】香水市場の伸長に日本人の香りに対する感受性の成長を実感|美的GRAND

長年、ビューティ業界を確かな目でウォッチ・分析し続けるプロによる特別寄稿。ビューティジャーナリスト・木津由美子さんが’25 年上半期のベストコスメを総括します。

ビューティジャーナリスト・木津由美子さん「香水市場の伸長に日本人の香りに対する感受性の成長を実感」

ビューティジャーナリスト

木津由美子さん

2025年上半期のコスメ市場を圧倒的に華やかに彩ったもの、それは間違いなくハイファッションブランドのプレステージフレグランスでしょう。ディオールの「ラ コレクシオン プリヴェ」、プラダの「オルファクトリー」、ジル サンダー「オルファクトリー シリーズ 1」、バーバリー「シグネチャー コレクション」、グッチ「アルケミスト ガーデン」、ヴァレンティノ「アナトミー オブ ドリームス」、イヴ・サンローラン「ル ヴェスティエール デ パルファム」……いずれも多種多様な香りで構成され、単価は100㎖サイズで4万円前後。リニューアルも含めこれだけのラインナップが同時期に出そろうのは、日本のコスメ史上かなり珍しいことといえます。

プレステージたる理由は明白。希少性の高い原材料、香り立ちで選ぶ抽出技術、熟練の調香師、高品質ボトル、アート性の高いパッケージなど、全てにおいて最高級を追求しているから。さらにハイファッションブランドとなると、それぞれのブランドストーリーやヘリテージに深く結びつけて香りも外見もデザインする。まさにファッションアクセサリーのように、つけこなすことで纏う人のスタイルが醸し出され、その人の体臭と合わさってパーソナリティの一部となり得るのです。

長らく“香水砂漠”と呼ばれていた日本のフレグランス市場は、コロナ禍を経てついに開花。それは全国の百貨店やセレクトショップなどで香水催事が急増していることからも明らかです。そうして密接な相関関係にある市場と消費者は、今なお共に成長を続けています。実際、若い世代はコスパ的発想からオードトワレよりも高価格だけど高賦香率のオードパルファムを買い求め、他者とのダブりを避けるためにニッチなプレステージを選択する傾向にあるようです。それを見越したかのようなプレステージフレグランスの台頭は、当然の流れといえるでしょう。

感性は不可逆的なもの、いったん磨かれたら元の状態にリセットはできません。だから元々香りに対する感受性が高いはずの日本人の嗅覚がさらに磨かれている今、日本のフレグランス市場には明るい未来しかない─そんな期待を抱かせたのが、2025年上半期のフレグランス市場だと思います。

A. アルデヒドをキー成分にコーヒーとアップサイクル・オリスがまろやかに香る。
ジル サンダー オルファクトリー シリーズ1 コーヒー オードパルファム 100ml ¥43,780

B. メゾンを象徴する赤の香りはブラックペッパーを効かせたフレッシュなアンバーアコード。
ヴァレンティノ ビューティ ヴァレンティノ アナトミー オブ ドリームス ソーニョ イン ロッソ パルファン 30ml ¥22,000

C. 抽出法の異なる3種のバニラにシダーウッドを重ねた新グルマンノート。
ディオール ラ コレクシオン プリヴェ クリスチャン ディオール ボア タリスマン オードゥ パルファン 200ml ¥63,140
ラ コレクシオン プリヴェ クリスチャン ディオール ボア タリスマンの詳細はこちら

D. 1960年代の名作映画に着想したアンバー調の香り。
プラダ ビューティ プラダ オルファクトリー マリエンバート オーデパルファム 100ml ¥53,900

『美的GRAND』2025夏号掲載
撮影/吉田健一(静物) スタイリスト/柿原陽子 撮影協力/Compartment.、AWABEES、UTUWA 構成/北川真澄

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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