エディター・ライター。自ら立ち上げた出版レーベル『BOOK212』より初の絵本『ピンクのカラス』を刊行。
(問)https://book212.com
チークを施したことで生まれる表情や肌色が、自分自身の心にときめきとして返ってくる|美的GRAND
美容エディター・松本千登世さんが厳選。『このコスメが、すごい!~大人の顔創り編~』
温度を感じさせる色、湿度を感じさせる質感
〈上から〉
Brand / NARS
Item / ブラッシュ N 777
まるできめ細かなルースパウダーにナチュラルな血色を忍ばせたような繊細なフォーミュラが内側からにじみ出るようなシアーな発色を実現。シームレスな仕上がりと心地よい使用感で、自然な美しさに。¥5,060
Brand / M・A・C
Item / グロー プレイ クッショニー ブラッシュ ジンジャー ラック
弾力のあるクッションが肌の上でふわりと解けてじゅわっと広がり、するりとなじむ。程よい艶とほのかな血色が肌印象を一気に研ぎ澄まし、モードな仕上がりに。オイルを豊富に含むので、リップにも。¥4,950
エモーションが透ける「生命感」
終わってみれば、あっという間のパリ五輪。体操に柔道、バスケットボールにバレーボール……、はなはだ勝手ながら、応援する私たちにとっても、いや、だからこそよけいに、理不尽さを感じたり、悔しさが残ったり。ただ、複雑な感情も含めて、多くの感動ストーリーとして胸に刻まれたし、すがすがしい選手たちの笑顔にまた、元気や勇気をもらいました。その実、勝負を超えたところで、印象に残ったことがあります。それは、彼らの閃光(せんこう)を放つ眼差しに加えて、温度と湿度を感じさせる、ピンクに染まった頬。勝敗を分ける一瞬にすべてをかける、闘志と情熱がぎゅっと凝縮したような「あの顔」「あの肌」「あの頬」に、美しさの真実があると確信したのです。世界を舞台に戦うアスリートたちと重ねるにはあまりにおこがましいけれど。
年齢を重ねる程に、心を躍らせること、心を奪われることが減っていく気がしていました。そう思っている大人はきっと、私だけではないはずです。挑戦や冒険に対して、億劫(おっくう)になるからでしょうか? それとも、経験や知識が逆に作用するからでしょうか? 心が固くなって、その動きが鈍り、好奇心や向上心がさびついている、みたいな。それは表情や肌色に如実に現れていて、表情がどこか浮かない、肌色がどこかさえない。くすみやたるみなど、加齢による変化だけが理由ではない気がするのです。だからこそ、私たちには日々、意識的に心を動かす努力や習慣が必要。ちょっとしたことに感動したり、ほんの少し高みを目指したり、一歩でいいから踏み出してみたり……。
常に心に柔らかさと弾力を養って、自分の今を一生懸命生きているエモーショナルな人の頬は、生命感で満ち満ちてピンクに染まっていることを、思い出したいと思うのです。そういう意味でも、チークは、大人程欠かせない。チークを施したことで生まれる生き生きとした表情や肌色がまた、自分自身の心にときめきとして返ってくる。くるくると生命感が巡るのだから。
『美的GRAND』2024秋号掲載
撮影/シバサキフミト(DONNA) スタイリング/高橋尚美 構成/松本千登世、三井三奈子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。